災害医療における民間緊急医療ネットワークの活用のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200001083A
報告書区分
総括
研究課題名
災害医療における民間緊急医療ネットワークの活用のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
石原 哲(医療法人社団誠和会白鬚橋病院)
研究分担者(所属機関)
  • 早川 達也(市立札幌病院救命救急センタ-)
  • 菅波 茂(医療法人アスカ会社会福祉法人遊々会)
  • 鎌田裕十朗(日本医療救援機構 代表)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大災害発生時、行政が行っている広域災害情報システムへのアクセスや、地域防災センターや災害拠点病院との連携が重要となるが、一方、災害医療において民間活力は必須であり日ごろから防災の意識を高め、組織的で効率のよい体制が求められる。本研究は、全国をカバーする民間病院団体である全日病会員病院とAMDAさらに過去2年間の研究で幅広く医療ボランティアとの連携してきた日本医療救援機構(MeRU)において「民間緊急医療ネットワークの活用」を検討し、訓練を通じその成果を検証し、また実災害においてもその成果を検証し、その成果を広く普及させることにある。まず個々の病院において、防災対策をより現実に則し確立するしておくことが必要であり、より実践的な対応マニュアルを作成し、訓練を繰り返す事を目的とした。一方、院外においては、被災病院をはじめとし応急救護所等における他組織との連携を重視し、全国各地区における総合防災訓練に民間医療団体として参加し、防災対策がより実用的であるよう提案すること、さらに、より強固なネットワークづくりを行い、これを実行できる組織づくりを行う事を目的とする。
研究方法
3年間の研究方法として、阪神淡路大震災を契機として、会員病院の支援が不十分であった反省に基づき、全日本病院協会(全日病)ではAMDAと協力し、日本医師会と共催で「地域防災民間緊急医療ネットワーク」を発足させ、民間病院防災訓練を全国に展開する方法により、訓練のあり方、その方向性を検討する事とした。民間といえ、多数傷病者管理システム(Mass Casualty Management System)が必要であり、システムの目的は災害により発生した大量の傷病者に対し、その生命及び損傷を最小限にするための標準化と、救助に関わるすべてのグループが限られた要員と資材を有効に使うための、共同作業と相互運用の標準化と考えてきた。この研究手法として、全日病は民間緊急医療ネットワーク拠点となるべく病院の選定を行い、病院総合防災訓練を行なった。東京都・北海道・茨城県・埼玉県と各支部単位で毎年開催してきた。訓練の方法は全日病本部から常任理事を召集し、また都道府県医師会にも参加依頼をした。ボランティアの参加として医療NPO(日本医療救援機構)を中心に、AMDAをはじめ、多数の他地区の医師看護婦等が集合し訓練を行い、共同作業性、相互運用性などシュミレーションし、特にトリアージのあり方、院内体制のあり方など大きな成果が得られた。一方、当初は自然災害を想定した訓練であったが、多様化する災害に対応すべく、人為災害をも視野に入れた、訓練がなされた。トリアージ訓練においては、災害時、各救護所(病院を含む)が統一した認識の基でトリアージが可能となるよう、同一傷病名による複数病院での訓練を行う手法をもちいた。さらに模擬患者については、我々企画者が十分打ち合わせを行い、同じ演技指導を行い、同メイクを行いより現実的な訓練を行う方法を用いた。公私すべての医療機関で連携については、静岡県・茨城県・東京都の総合防災訓練に参加する方法で、効率のよい組織づくりを企画してきた。公私病院との連携等、病院協会の中でも災害医療に専門性を持った組織づくりの検討、ボランティアの有効な展開方法として空路・二輪車さらに水路利用も行った。また、民間医療防災フォーラムを開催し、訓練の一手法として床上シュミレーションを行う方法を導入した。
結果と考察
過去3年間の研究により蓄積されたノウハウを集約し全日病として「病院防災ガイドブック」とし
てまた「病院防災訓練の進め方」としてビデオ化が行われた。防災訓練を繰り返し実践することが重要であることは周知されているもの、現実的にはその対策が十分とはいえない。全日本病院協会が主催する病院防災訓練においては、全日病本部から常任理事を召集し、防災訓練の重要性や、災害時、病院の理事長・院長のリーダーシップの必要性を理解していただいた。各都道府県で拠点(フロント病院)として活動できるよう訓練を行い、共同作業性、相互運用性などシュミレーションし、特にトリアージのあり方、院内体制のあり方など大きな成果が得られた。医療援助の鍵となるのは、各医療チームの医療における共同作業性(Cooperatively)と相互運用性(Interoperability)であると考えている。一方、トリアージ訓練においては、統一したトリアージが可能となるよう、同一傷病名による複数病院での訓練を企画し、参加医師等が相互の結果について十分検討できる様になった。さらに模擬患者については、同じメイクを行い演技指導を行う事により、現実的な訓練ができ、訓練における模擬患者の重要性が指摘された。本研究により訓練資機材、メイク資機材の検討ができたことは大きな成果であった。この手法はAMDA・日本医療救援機構等にも普及啓蒙を願い、特にトリアージ・治療・後方搬送訓練においては、地元町会との応援協定・他医療機関連携に役立った。今年度参加した東京都・茨城県の総合防災訓練においてもこの手法が用いられ、全国への発信となった。病院防災訓練においては、より専門性を高める訓練が行われ、ライフライン途絶時の対応訓練として、応急給水訓練、夜間停電の訓練、列車事故想定訓練、核災害対応訓練、生物毒災害対応訓練等、NBC災害への対応訓練が行われた。特にNBC災害対応を行うことは、地震災害を含め全ての災害に適応できる訓練となると考えられ、一方、原子力関係者、感染症関係者などとの密接な連携が可能となり、民間緊急医療ネットワークのより強固な体制作りになると考えられた。また、3年間の研究結果を活用し、平成8年に作成した防災マニュアルの改訂作業が必要であり、より現状に即したマニュアルの作成を行なった。さらに、民間緊急医療ネットワークをより発展させるため、全日病各支部より選出された委員の専門性を高める組織作りが必要であり、今年度起きた有珠山噴火に伴う周辺会員病院調査を北海道支部と合同出行い、三宅島医療救護班出動準備をネットワークを通じ行い、愛知県名古屋北部水害実態調査は愛知県支部と連携して行うことが出来た。また、鳥取西部地震に本研究班よりアセスメントチーム派遣し広島県防災委員と連携体制を行った。本研究の目的であるのネットワークの実効性が検証された。しかし超早期対応特に医療救護班の行動については、まだ検討の余地が多く残された。さらに本研究を続け、全日病会員病院や医療ボランティア組織の意識向上に向け、またネットワークへ参加スタイル等のアンケート調査を行う必要があると考えられた。全国からの医療ボランティアの有効展開は陸路・二輪車の有効性を認めたものの被災地外での医療班編成なでの時間短縮が求められた。空路については全日病独自のヘリ(民間ヘリ)搬送訓練を展開した。一方、自衛隊による医療ボランティアの空輸訓練、広域患者搬送訓練など行い、行政との連携として現実のモデルケースになるものと考えられた。また、民間医療防災フォーラムを開催し、平成10年度11年度と床上シュミレーションを引き続き行い、各組織間連携の強化さらには被災地内医療機関連携や具体的な受け入れ態勢の確立が必要と考えら、病院の体制等に新たな対策が必要なことやロジスティクスの必要性が確認された。提言により、民間緊急医療ネットワークをより発展させるため、他団体医療機関や関係機関を含め、多くの一般市民参加も必要と考えられ、日本医療救援機構が平成11年4月に新たなNPO法人の設立を行った。野外医療機器や輸送、通信等の整備、その専門スタッフの育成並びにロジスティクス組織の運営方法確立に向け、また災害時医療救護活動の専門性を高めるトレーニング
システムの検討などを行った結果、日本医療救援機構(MeRU)においては、実災害出動の原動力となった。他NGOとの連携、初動時のあり方、後方支援の重要性等が実証された。今後、災害医療においては、医療に限らず他職種の組織との連携が重要であり、他職種とは、被災地の行政機関、警察、消防、NGO、輸送組織、メディアである。今後、訓練のリピーターとなることで顔の見える関係を構築することは、災害時の救援活動を円滑に進める上で無用な過大評価や誤解を生じないためにも有意義であり必要なことであると考えられた。
結論
民間緊急医療ネットワークをより発展させるためには、全日病、AMDA、日本医療救援機構のみならず、他団体医療機関や関係機関を含め、多くの一般市民参加も必要と考えられた。野外医療機器や輸送、通信等の整備、その専門スタッフの育成並びにロジスティクス組織の運営方法確立に向け、また災害時医療救護活動の専門性を高めるトレーニングシステムの検討など行い、訓練を行ってきたことが実災害への出動の原動力となった。またそこでの活動を通じ、新たな問題点も抽出できた。3年間の検討結果を活用し、平成8年に作成した防災マニュアルの改訂を行い、より現状に即した「病院防災ガイドブック」の作成と「病院防災訓練の進め方」としてビデオ化が行われた。民間緊急医療ネットワークをより発展させ、全日病各支部より選出された委員の専門性を高めるべく、これらを活用して訓練を行う事としている。机上シュミレーションについては、研究結果を生かし、さらに成熟させ、各地区で開催されるようそのノウハウを提供する。以上、日本においても、各医療チームの相互の医療における共同作業性(Cooperatively)と相互運用性(Interoperability)こそ、国内外における災害緊急医療援助の鍵となるのである。その上で、多数傷病者管理システム(Mass Casualty Management System)が必要となるのである。システムの目的は災害により発生した大量の傷病者に対し、その生命及び損傷を最小限にするための標準化であり、救助に関わるすべてのグループが限られた要員と資材を有効に使うための、共同作業と相互運用の標準化であるが、これらは、実災害でしか経験できない為、日々、防災訓練等で体験しておくことが重要であり、今後もその啓蒙活動及び訓練活動が必要であると考えられた。

公開日・更新日

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研究報告書(紙媒体)