診療録の様式並びに記載、コードの統一と診療情報のデータベース化に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200001072A
報告書区分
総括
研究課題名
診療録の様式並びに記載、コードの統一と診療情報のデータベース化に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
河北 博文(東京都病院協会)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
適切な診療情報の整備は質の高い医療サービスを提供するために不可欠である。また医療機関相互の比較検討を行い、医療総体としての診療標準確立のためには、診療情報について統一した方式で作成・管理されることが望ましい。本研究の目的は、(1)診療情報管理についての実態を明らかにし、未だ診療情報整備が進まない病院があるとすればその理由について検討し、改善策を立案すること、(2)医療機関の診療パーフォーマンスを評価するための実用的なシステムを作成すること(退院患者登録システム)、(3)個々の医療機関の診療情報管理を促進するための外部専門家による支援体制のあり方について検討すること、である。
研究方法
(1) 診療情報管理の実態調査 東京都病院協会の会員356病院を対象にアンケート調査を行った。質問項目は、診療情報管理及び医療安全対策についてであり、それぞれ過去に行った実態調査と質問の整合をはかり比較が可能となるようにした。113病院から回答が得られた。診療情報管理について最近2年間で全般に改善しているものの、病院種別・病床規模により、あるいは項目によっては、未だ改善が必要なものが指摘された。(2)退院患者登録システムの作成 病院の機能を簡易に測定し、診療の標準を確立するためのデータベースである退院患者登録システムの作成を行った。インターフェースはプルダウンメニューを主体として、国際疾病分類のコーデイングについて特別の知識を有さなくても入力は比較的容易に行うことが可能である。東京都内の10病院を対象として、システムの試行を行い、妥当性、有効性の検証が行われた。(3)診療情報管理支援システムの試行 東京都内1病院を対象に、専門家2人の定期的派遣により診療情報整備の試行が行われた。
結果と考察
診療情報の整備は、近代的な病院組織経営、医療のパーフォーマンスの測定と質の維持、診療情報の公開に基く適切な病院選択と、効率的な医療資源配分を行うに際して重要な要素を占める。本研究では、(1)東京都内病院の診療情報管理の実態調査により、①最近2年間で診療情報管理の状況に改善が見られるものの、特に診療管理部門の組織的位置付け、国際疾病コーデイングの使用、職員の教育研修に置いては改善の余地が大きいこと、②病院種別では中小規模、長期療養型病院において改善の余地が大きいこと、③同様に実診療情報の患者への開示の進展が最近2年間で顕著に認められることが明らかにされた。実態調査に基き、(2)各病院の医療のパーフォーマンスを容易に測定するためのデータベース「退院患者登録システム」の構築を行い、基本ソフトウエアの作成、及び同ソフトウエアを用いての2回の試行を行った。同ソフトウエアは、国際疾病コーデイングの知識がなくても短時間で入力が可能なこと、重症度による層別化が可能なこと、代表的な24疾患を対象とすることにより病院退院患者の約半数をカバーし効率的に病院機能を評価することが可能である。同システムは、今後継続的運営により、①医療の標準(予後、医療費、在院日数等の指標について)の確立、及び診療情報としてこれら情報の活用(患者への説明、病院の評価等)、②病院へ改善へのインセンティブを与え、更に改善を指標を用いて実証する、ことが期待される。(3)人員、経験等の比較的乏しい中小規模、長期療養型病院を対象とした外部専門家による支援システムの試行を行った。試行の結果は、マニュアル化し、支援システムの普及・普遍化が図られる予定である。
結論
(1)診療情報整備体制については今後も定期的に実態調査を行うことが望ましい。最近2年間の医療問題についての社会的関心の増加、診療録開示の問題、医療
事故の問題等は、病院が診療情報整備を促進するに寄与したと思われる。しかし、病院種別・病床規模により、あるいは項目によっては、未だ改善が必要なものが指摘される。改善策の立案・実施とともに、その効果を検証するためにも実態調査は継続して行われる必要がある。(2)退院患者登録システムは2回の試行により、実用性、妥当性がほぼ検証された。国際疾病コーデイングを必ずしも理解しなくてもプルダウンメニューにより容易に入力が可能であり、また国際疾病コーデイングには含まれない重症度による層別化も可能である。これは、今後広く一般にも供用されるとともに、継続運営について東京都病院協会等で検討される予定である。(3) 診療情報管理支援システムについては1病院を対象に試行が行われた。これは人員、経験等に比較的乏しい病院を対象に、外部から専門家を定期的に派遣して、診療情報管理体制を円滑に立ち上げることを目的としたものである。今後は、この知見、およびその他の専門家の経験等を踏まえてマニュアル作成を行う予定である。

公開日・更新日

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