電子診療録における医療情報交換技術の標準化とその仕様拡張に関する研究

文献情報

文献番号
200001069A
報告書区分
総括
研究課題名
電子診療録における医療情報交換技術の標準化とその仕様拡張に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
吉原 博幸(熊本大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大櫛陽一(東海大学医学部)
  • 荒木賢二(宮崎医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
-
研究終了予定年度
-
研究費
-円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
電子カルテシステムと医事会計システム(いわゆるレセコン)との電子的データ交換を標準化、粗結合化(オープン化)することのメリットとして、電子カルテシステム開発促進が挙げられる。現在、多くのメーカーが電子カルテ事業に新規参入を図っているが、医事会計システムを独自に持たないベンダーが電子カルテ事業に参入しようとする際に、これらのベンダーは既存の医事会計システムごとにインターフェイスを開発する必要がある。本研究は、この交換手順を標準化し、XML技術を用いた規格(CLAIM)を作成し、実証実験を行うことにある。CLAIMを策定しておけば、電子カルテベンダーはCLAIMに対する一種類のインターフェイスを開発するだけで済み、開発効率の向上とコスト削減につながる。また、医事会計システムベンダーにとっても、ユーザから電子カルテ導入を依頼された際に、独自に新たな開発を行う必要がなくなる。また、紙カルテから得ていた情報の一部を、電子カルテから自動的に抽出することが可能となり、大きなメリットが生じると考えられる。
研究方法
今年度の研究趣旨を公表し、本研究への参加を広く呼びかけた。3回の班会議を開催し、過去2年間にわたって検討してきた電子カルテと医事会システムとの通信プロトコルについて、実用化フィールド実験という立場から再検討を加えた。まずオフライン実験として、2種類の電子カルテ及び2種類の医事会計システムからそれぞれデータを抽出して、他の医事会システム及び電子カルテに渡して実験をした。次に、2ケ所の診療所で新しい標準通信プロトコル(CLAIM)を使った電子カルテと医事会システムを実診療で使って実験を行った。
結果と考察
今年度は過去2年間の検討を踏まえて、電子カルテと医事会計システムをCLAIMプロトコルにより実際に接続して評価することができた。この結果、3年間にわたり研究をしてきたプロトコルは実用に耐えるものであることが実証された。以下に、その詳細を述べる。この接続実験に対する参加を呼びかけたところ、我々、主任1人及び分担研究者2人に加えて、6人の研究協力者と3人のオブザーバが研究に参加してくれた。6人の研究者の内訳は、電子カルテ及び医事会計システム開発者2人、電子カルテ開発者1人、医事会計関連システム開発者1人、診療所長2人であった。オブザーバも、電子カルテ又は医事会計システムを開発中又は予定であるが、CLAIMの装備が今回の実験には間に合わない方々であった。現実に接続実験をするに当たって再度プロトコルの検討を行った結果、実用化のためには、次のような機能追加が必要であることが判明した。電子カルテから診療データを医事会計システムに伝えるだけではなく、医事会計から電子カルテに患者基本情報、保険情報、受付情報などを送ることが望まれた。電子カルテから医事会計システムには、医事会計で院外処方箋を印字する必要性から、会計には必要がないが、「用法」データも送ることとした。また、両者で厳密にコード体系を合わせておく必要から、レセ電算マスターコードと従来からのCLAIMテーブルに加えて、標準用法コードを作成した。接続実験は、メディアを介したオフラインでの実験としては、二つの電子カルテと二つの医事会計システムの4つの組み合わせで双方向に行われた。オンラインでの接続実験は、実際の診療に使われて行われた。いづれも変換プログラム不良やハード機能不足などの初期的なトラブルはあったものの、すべて解決して稼働した。この研究の途中で、日本医師会総医研が医事会計システムのフリーソフト化及びCLAIM対応を発表した。この衝撃は大きく、従来一社の閉じたシステムを押しつけてきたメーカもCLAIM対応の検討を始めた。
結論
電子カルテの実用化に向けて進みつつあるが、医事会計システムと連動することにより、相互の効率が増す。電子
カルテ側では基本情報、保険情報、受付情報を受けることにより、入力の減少や診察準備の効率化が図れる。医事会計側では、診療行為が伝達されるため会計入力が不要となる。 特に、異機種間、異なるメーカ間の電子カルテと医事会計がつながれば、ユーザにとっての選択が広がる。また、開発者やメーカに取っても得意な分野のシステムのみの開発に特化できる。さらに最近の動きでは、フリーソフトとしての医事会計システムや電子カルテの発表が相次いでおり、これらの導入にあたり、標準プロトコルによる接続性は必須となる。 電子カルテの導入時に、医事会計システムの持つデータを使って初期設定できれば、導入が容易となる。CLAIMはこのような応用も可能である。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-