第三者による病院機能評価活動における評価者機能の確保とその向上に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200001063A
報告書区分
総括
研究課題名
第三者による病院機能評価活動における評価者機能の確保とその向上に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
伊賀 六一(財団法人医療機能評価機構)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医療技術評価総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
14,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
第三者による病院機能評価活動をより適切に実施し、社会的制度として成熟させるためには、実際にサーベイを遂行するサーベイヤーの能力の維持・向上が必須である。そこでサーベイヤーの能力確保の手法として「能力評価」の妥当性を検討し、その成果を実用化することを目的とする。あわせてサーベイヤーの量的確保の指標を明確にし、計画的なサーベイヤー養成の根拠として活用することを目的とする
研究方法
(1)カナダCCHSAの能力評価モデルを参考に、わが国のサーベイ実務に必要な能力を検討し、それらをカテゴリー化することによって「サーベイヤー能力評価票」の原案を検討した。さらにサーベイヤーからの意見聴取も行った。質問項目は3点評価(3:優れている、2:普通、1:不足している)とした。次にこの評価票の運用方法を検討し、自己評価、リーダーからの評価、同僚評価を組み合わせ、多面的な評価となるよう設計した。(財)日本医療機能評価機構が行う病院機能評価において試行的に能力評価票の記入を依頼し、返送された能力評価票の分析および試行に参加したサーベイヤーからの質問紙法による意見聴取を行った。(2) サーベイヤーの申告する審査可能日を、一定の確率で"yes"か"no"かを返答する「二項分布」とみなし、期待値を計算するモデルを作成した。領域別サーベイヤー人数、審査可能日、審査制約期間をパラメータとしてモデルに投入した。診療・看護・事務管理のサーベイヤー各1名ずつの3名を"1ユニット"とし、ユニット数の期待値を求めた。したがって3名体制のサーベイ(予備審査、事前サーベイ含む)の場合は1ユニット消費、6名体制の場合は2ユニット消費するものとした。このようにして算出された期待値と実測値を比較し、精度を検証した。(倫理面の配慮) サーベイヤー能力評価のデータは、一種の人事考課データと考えられる。したがって個人情報の守秘など、プライバシーの保護に配慮を必要とする。
結果と考察
サーベイヤー能力評価のカテゴリーとして以下の7カテゴリーが抽出された。①知識(医療の現状、評価項目の理解)②情報収集・分析力(状況把握力、分析力、評価力)③業務遂行力(計画力、実行力)④コミュニケーション能力(傾聴力、意思疎通力、折衝調整力)⑤使命感(情熱、責任感)⑥リーダーシップ(統率力)⑦報告書作成能力(文章作成力、定型様式での作成)。サーベイヤー能力評価の実施について、サーベイヤーの96.6%から「必要である」との回答を得た。これによりサーベイヤーに期待される役割として、"自らを律し能力向上のために研鑚努力する存在"として、自らを認識していることとなり、将来的な役割認識として「専門職(Professional)としてのサーベイヤー」という方向性が示唆された。しかしながら以下のような課題も指摘された。(1)サーベイヤーの能力確保の前に、サーベイヤーの適性の判断が必要、(2)能力評価の個々のフィードバックの方法について十分な議論がされていない、(3)サーベイ方法の一層の標準化など能力評価に影響する外部要因の検討が必要、などである また、年間必要サーベイヤー延べ数は、5%程度の誤差で予測可能ということが検証された。これによってサーベイヤー必要人数について具体的なシミュレーションが可能となり、養成計画上の指標としての活用が可能となった。受審病院の増加に対応したサーベイヤーの量的確保が可能になれば、サーベイ経験の適切な蓄積がなされ、能力向上やモチベーションアップの面でも間接的に寄与するものと思われる。
結論
サーベイヤーの能力評価は、今後も第三者評価活動を継続していく上で必須のものであり、サーベイヤー自身がその必要性を強く認識してい
た。したがって、能力評価の試行結果に基づき、今後、適切に運用させることが必要となる。しかしながら以下のような課題も指摘された。(1)サーベイヤーの能力確保の前に、サーベイヤーの適性の判断が必要、(2)能力評価結果の個々のフィードバック方法について十分な議論がされていない、(3)サーベイ方法の一層の標準化など能力評価に影響する外部要因の検討が必要、などである。したがって試行結果の分析とともに以上のような課題を検討し、運用に移行していくことが必要である。 また、能力評価は教育プログラムの一環であるという認識に基づき、教育システムを再構築することが可能となる。これまではサーベイ実務研修的なカリキュラムが主であったが、必要とされるカテゴリー別にプログラムを構成するなど、よりニーズに則した教育内容とするために、今回の試行結果が非常に有用である。とくに医療機関をすでに退職したサーベイヤーにとっては、医療制度等の最新の知識を得ることに不安を感じており、教育プログラムのみならず、広報誌等のコミュニケーションプログラムを通じて随時情報を提供することが、「知識」の向上のために有用であると示唆された。
今後、第三者による病院機能評価を受審する病院数が増加することが予想されるが、サーベイヤーの質的な能力確保のみならず、同時に量的な確保も達成しなければならないことは実務的な要請であり、サーベイヤー延べ人数予測式は、直ちに応用が可能である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)