国内未承認エイズ治療薬等を用いたHIV感染症治療薬及びHIV感染症至適治療法の開発に係る応用研究

文献情報

文献番号
200001034A
報告書区分
総括
研究課題名
国内未承認エイズ治療薬等を用いたHIV感染症治療薬及びHIV感染症至適治療法の開発に係る応用研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
福武 勝幸(東京医科大学臨床病理学)
研究分担者(所属機関)
  • 青木眞(感染症コンサルタント)
  • 岡慎一(国立国際医療センターエイズ治療研究開発センター)
  • 味沢篤(東京都立駒込病院感染症科)
  • 木村哲(東京大学医学部附属病院感染制御部)
  • 白阪琢磨(国立大阪病院総合内科・ウイルス研究室)
  • 高田昇(広島大学医学部輸血部)
  • 花房秀次(荻窪病院血液科)
  • 細田順一(東京医科大学病院薬剤部)
  • 松宮輝彦(東京医科大学薬理学)
  • 三間屋純一(静岡県立こども病院血液腫瘍科)
  • 山元泰之(東京医科大学病院臨床病理科)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
116,939,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
エイズ/HIV感染者の治療は、欧米では新規の薬剤が臨床応用され優れた治療効果を発揮している。これに対して日本では患者数が少ないために治験そのものが困難であるばかりか、市販しても経済的に成り立たないため、重要な薬剤でありながら承認の見通しが全くないままの薬剤が存在している。特に小児感染者に対する抗HIV薬をはじめとする各種薬剤はさらに患者数が少なく、承認薬は極めて限られている。これらの薬剤を入手するためには、担当医師の医師個人輸入に頼る以外に方法が無く、臨床現場は多くの問題に直面してきた。本研究は厚生労働省医政局研究開発振興課と協力し、エイズ/HIV感染者の治療のために有用な薬剤を広く内外に求め、外国では承認されているがわが国において承認されていない(成分だけでなく適応効能又は効果を含む)有効なエイズ/HIV治療薬について、国内で研究組織を作り臨床試験を実施し、治療成績を収集・解析し、エイズ/HIV感染症治療薬開発の促進を図ろうとするものである。また、治療薬とその用法について、インターネットのホームページやFAX情報サービスを通じて公開し、この研究における治療薬の情報と承認薬を含む最新の治療情報を、可能な限り多くの患者とその担当医師に提供できるシステムづくりを行い、もって各エイズ/HIV感染症治療薬の開発の促進を図ることを目的とするものである。
研究方法
国内でエイズ/HIV感染者の治療実績のある施設の臨床医師10名で基本的な研究組織としてプロトコール作成委員会を構成する。また、薬剤の専門家として2名の医師と薬剤師を加えて研究班を構成した。熱帯病治療薬研究班の例を参考にして、薬剤の輸入から配布に至る流通経路を確立し、エイズ治療薬研究班の活動として一般にも公開した。抗HIV薬として、経口接種が困難な症例の治療や母子感染の予防に必要なジドブジン注射薬、ジドブジンシロップやジダノシンシロップ、エピビルシロップ、プロテアーゼインヒビターのリトナビル液、ネルフィナビルの散剤などを使用した。今年度はさらに最新の抗HIV薬であるカレトラ(リトナビル・ロピナビル)、ヴァイデックスEC(ジダノシン腸溶カプセル)、重篤な合併症であるC型慢性肝炎の治療のためのレベトール(リバビリン)などを加えて臨床研究を実施した。今年度は全体で22種類の薬剤を研究対象とした。
結果と考察
平成8年10月4日から開始したインターネットホームページの利用件数は平成13年3月末日までに110,000件を超え、この1年間の利用件数は約33,000件を超えて年々増加している。薬剤の送付は研究班の発足からこれまでの間に、110施設の393症例に対して1577件の薬剤送付を行い、このうち平成12年度だけで433件を占めており、本研究の必要性がますます高まっている。小児の治療薬の要望が増加しており、承認薬が全く増えない中で取り扱い薬剤の種類の増加が続いている。数件の副作用が報告されているが、全て予想された範囲内のものであり、重篤なものはない。多くの治療薬では症例数が少ない試験であるため治療成績の評価を始めるまでには、今後さらに数年以上の期間が必要と考えられる。今年度は、抗HIV薬の種
類が増加した中で、耐性の獲得により治療薬の選択が難しくなった症例を対象に薬剤耐性検査を行い、検査結果により選択した薬剤の有効性を評価する研究を開始した。また、重篤な合併症として問題になっているC型慢性肝炎の治療として、リバビリンとインターフェロンによる治療研究を開始した。
結論
エイズ/HIV感染症治療薬として重要であるが、日本では承認を得ておらず、また、治験開始のめどもついていない薬剤の日本における開発を促進するシステムの構築を目標として研究班の実際の運用が開始された。また、エイズ/HIV感染症治療薬についての情報をインターネットのホームページやFAX情報サービスを通じて公開し、多くのアクセスが行われてた。日本で既に承認されている薬剤だけでは治療が困難な状況の患者を救うには、これらの活動は欠くことができない。薬剤耐性の問題や重篤な合併症への対応も重要であり、今後はこの方面での臨床研究も進めなければならない。しかし、薬剤の供与自体は本来の研究が意味するものとは異なっている。薬剤供与機構としての運営には予算、人的援助、法律問題など制約が多く、特殊な稀用薬剤を取り扱うための理想的な手段とは言い難い。今後、行政当局は早期に特殊な稀用薬剤の取り扱い方法を検討し、理想的な制度を確立していただきたい。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-