ヒト破骨細胞と骨芽細胞培養系を用いた薬物の有効性と安全性に関する検討

文献情報

文献番号
200001033A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト破骨細胞と骨芽細胞培養系を用いた薬物の有効性と安全性に関する検討
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
和田 誠基
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年急激に進む高齢化によりquality of lifeを障害する骨粗鬆症が社会問題化し、治療法と予防法の確立が社会的要請の極めて高い医学的課題となっている。ごく最近血液幹細胞から破骨細胞への分化誘導には破骨細胞分化誘導因子(RANKL)とマクロファージ・コロニー刺激因子(M-CSF)が必須であることが示され、これら因子を利用して健常者末梢血単核球からヒト破骨細胞をin vitroで樹立でき種々の薬剤の効果をヒトの標的細胞で直接検討できるようになった。種々の薬剤が骨作用を期待され臨床応用されている。中でもカルシトニン(CT)製剤は高Ca血症、骨粗鬆症に用いられるが、連続使用では不応性が出現し効果が持続しない。本研究では、この機構にCT受容体のde novo合成の調節機構が関与していることを考え検討した。
研究方法
昭和大学松崎らの方法に則り、健常ヒト末梢血からHISTOPAQUEを用いたDensity gradient法によってヒト単核球を調整し、破骨細胞分化誘導因子(RANKL: 50ng/ml)、M-CSF (200ng/ml)の存在下に培養し成熟破骨細胞様細胞が主体となった培養第7日目の細胞を用いた。CT特異的結合能は[125I]サケCTを用いbinding assayとautoradiographyを用いて解析し、CTRのmRNAの発現はRT-PCR法により特異的プライマーを用いて増幅し発現量を比較した。同一RNAでのinternal controlとしてはGAPDHを用いた。象牙切片上における骨吸収活性およびアクチンリング形成を評価した。
結果と考察
ヒト健常者末梢血単核球をRANKLとM-CSF存在下に培養して得た破骨細胞を、CTで1時間刺激すると用量依存的にCT受容体数、mRNA発現レベルが低下しde novoの合成阻害によることが示された。一方デキサメサゾンによる処置はCT受容体数、mRNA発現レベル、CT反応性cAMP産生を増加させた。この効果は性ホルモンやミネラルコルチコイドでは再現されず、RU486で阻害されたことからグルココルチコイドに特異的な作用と考えられた。Autoradiographyでは多核の破骨細胞における銀粒子の数が個々の破骨細胞で増加していた。興味深いことにグルココルチコイドの効果はCTと共存させると一定時間の後に抑制されることが判明し、CTによるCT受容体数の抑制効果とグルココルチコイドによるCT受容体数の増加効果は作用点が異なるのではないかと推察された。グルココルチコイドとCTの併用がある種の病態でヒト破骨細胞を標的とし有益であることが考えられた。その分子メカニズムに関しては今後解明すべき課題と思われた。
結論
ヒト健常者末梢血単核球から破骨細胞への分化誘導をRANKLとM-CSFを利用してin vitroで行い薬剤の効果をヒトの標的細胞で直接検討した。本実験系は薬物の細胞への作用機構の詳細も観察可能とし、至適な投与量・投与方法等を含めてより適切な薬物療法を提案できるものと考えられた。

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研究報告書(紙媒体)

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