顔面神経再生に際して発現制御を受ける遺伝子データベースの構築

文献情報

文献番号
200001017A
報告書区分
総括
研究課題名
顔面神経再生に際して発現制御を受ける遺伝子データベースの構築
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
赤澤 智宏(国立精神・神経センター神経研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
神経繊維が損傷された場合、末梢神経系では局所の修復機構が働き、高い再生能力を示すのに対し、中枢神経系では再生しないか、あるいは異所性に神経回路が形成される。これらの中枢神経系と末梢神経系の修復機構の違いについてはまだ明らかでない。末梢神経系の持つ柔軟な再生能力の分子基盤を明らかにし、中枢神経系の修復機構の促進につながる技術開発を行うことが本研究の目的である。
研究方法
顔面神経は橋に起始する非交差性の運動神経である。成体ラットを用いて、片側の顔面神経を切断し、コントロール(非切断)側の顔面神経核との間で、サブトラクションcDNAライブラリーを作成した。片側の顔面神経切断してから、6時間後、12時間後、24時間後と経時的にライブラリーを作成した。得られたライブラリーをランダムにシークエンスすると同時に、cDNAアレイ法を組み合わせることによって、顔面神経切断によって発現変化する遺伝子群を同定し、データベースを作成した。発現変化する遺伝子群について、in situハイブリダイゼーションによって顔面神経核のどの細胞が変化するかを同定した。
結果と考察
作成したサブトラクションcDNAライブラリーについて、シークエンスおよびcDNAアレイ法を組み合わせて、発現変化する遺伝子を同定した。この中には、GAP-43、GDNF受容体GFRα-1などのように、神経繊維の損傷によって上昇することが既に報告されている遺伝子が含まれていた。さらに、データベース上に未登録の遺伝子も数多く存在した。また、既知の遺伝子の中でも、成体における機能が明らかになっていない分子も含まれていた。その一例として、神経系の発生過程で重要な役割を果たしていることが知られていながら、成熟ニューロンでの機能についてほとんど明らかになっていないSonic Hedgehogが、顔面神経切断後に運動ニューロンで一過性に上昇する事を見いだした。
作成したサブトラクション・ライブラリーとcDNAアレイを組み合わせることによって、効率よく、系統的に発現変化を受ける分子群を同定できることが明らかになった。これらの遺伝子群を、中枢神経損傷に際して強制発現させることなどによって、中枢神経系の修復機能を促進させる技術開発を進めていく事が期待される。
結論
顔面神経切断によって発現変化する遺伝子群を、サブトラクションcDNAライブラリーとcDNAアレイを組み合わせることによって、効率よく系統的に同定する方法を開発した。この方法により、今回Sonic Hedgehogが運動ニューロンで発現上昇するという興味深い事実を明らかにした。

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