潰瘍性大腸炎およびクローン病緩解維持に対するアザチオプリンの有効性に関する臨床研究

文献情報

文献番号
200000986A
報告書区分
総括
研究課題名
潰瘍性大腸炎およびクローン病緩解維持に対するアザチオプリンの有効性に関する臨床研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
日比 紀文(慶應義塾大学医学部内科学)
研究分担者(所属機関)
  • 下山 孝(兵庫医科大学第4内科)
  • 金城福則(琉球大学第一内科)
  • 北洞哲二(国立大蔵病院消化器内科)
  • 小尾伸之(グラクソ・スミスクライン株式会社 医薬研究開発本部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)は原因不明の難治性疾患であり、本邦においても増加の一途をたどっている。両疾患に対しては5アミノサリチル酸製剤や副腎皮質ステロイドが有効とされている。しかし現在の治療法のみでは完全に緩解を維持するのは困難であり、再燃緩解を繰り返す例が多く存在するため新しい治療法の導入は急務である。アザチオプリンは欧米を中心に複数のcontrolled trialにより有効性、安全性が確認され、また難治性潰瘍性大腸炎の長期緩解維持での有効性も報告されている。一方本邦では炎症性腸疾患に対する免疫抑制剤の使用例は少なく、臨床効果、副作用などについて詳細に報告された例はない。今回の研究は炎症性腸疾患に対するアザチオプリン少量投与(50mg/日)の有効性、特に緩解維持・ステロイド離脱困難例に対する効果について検討した。またTPMT遺伝子多型性について検討することにより、TPMT遺伝子多型の測定が骨髄抑制発生の予測因子として有用であるかを検討した。さらに炎症性腸疾患における再燃予測の有効なパラメーターの開発および病因・病態解明を目的として、大腸粘膜、マクロファージのサイトカイン(TNF-a, IL-7, IL-18等)産生能などの免疫学的パラメーターについて検討を行った。
研究方法
1)潰瘍性大腸炎・クローン病に対するアザチオプリン(イムラン錠)の緩解維持効果の検討としてアザチオプリン(イムラン)50mg/日の経口投与を6ヶ月行なった。評価方法として潰瘍性大腸炎群、クローン病群それぞれ6ヶ月後の緩解維持率、疾患活動性の推移およびステロイド使用量の変化を検討した。また安全性の評価として有害事象(自他覚症状、臨床検査値の異常変動)の発現頻度、程度、重症度、処置、転帰について検討を行った。2)炎症性腸疾患に対する6-MP・アザチオプリン投与症例のTPMT遺伝子多型性と副作用との関係の検討をおこなった。3)炎症性腸疾患における再燃予測の有効なパラメーターの開発および病因・病態解明を目的として、潰瘍性大腸炎については血中および大腸粘膜におけるIL-7、IL-7receptor、クローン病についてはTNFα、IL-12、IL-18を測定し、治療前後の活動度と各サイトカインの濃度との関係を検討した。また治療前のサイトカイン濃度と治療効果(再燃群、非再燃群)との関係についても検討を行った。
結果と考察
今回の研究によりアザチオプリン50mg/日投与6ヶ月後の緩解維持率は潰瘍性大腸炎81%、クローン病100%と高率であることが示され、また経口ステロイド量はアザチオプリン投与により有意に減少が認められた。すでに欧米ではアザチオプリンの炎症性腸疾患に対する有用性は報告されているが、本邦では同様の研究はこれまでになく、今回の検討によって日本においても炎症性腸疾患に対するアザチオプリンの緩解維持効果が確認された。また4例で副作用が認められたものの治療中止により軽快し、可逆性であることより安全性についても確認された。さらにretrospectiveな検討であるが、TPMT遺伝子の変異と6-MP・アザチオプリンによる骨髄抑制は密接な関係があることが示された。また緩解期の症例でアザチオプリン投与前に大腸粘膜におけるILー7が低下していた症例で再燃が認められ、ILー18とCDAIは相関関係があることが示されたことより、これらサイトカインが治療効果の予測に有用である可能性が示唆された。
結論
潰瘍性大腸炎およびクローン病におけるアザチオプリンの緩解維持効果および安全性が確認され、またTPMTの遺伝子多
型を検討することによりアザチオプリン投与による骨髄抑制の予測が可能であることが示された。さらに種々のサイトカインは本剤の治療効果を反映する可能性が示唆された。

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研究報告書(紙媒体)

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