文献情報
文献番号
200000942A
報告書区分
総括
研究課題名
細菌感染に関与する病原因子の発現機構の解明とその制御法の開発
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 治雄(国立感染症研究所細菌部)
研究分担者(所属機関)
- 田中隆一郎(株式会社ヤクルト 中央研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
3,145,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
SalmonellaとShigellaの腸管上皮細胞への侵入性機構には類似点が多い。Shigellaの場合、ipaBCD遺伝子産物は菌の上皮細胞への侵入能を直接担う。また、このipaBCD遺伝子はvirF,invEという2つの制御遺伝子によって正に調節されるいる。さらに、virFの発現はpHによる制御を受け、それには染色体上にコードされる2成分制御系遺伝子cpxR-cpxAが関与している。Salmonellaにおいての侵入性遺伝子群は染色体上のいわゆるSPI1にクラスターを形成している。SPI1にはipaBCDに相同性を示すsspBCD(sipBCD),これらの発現制御遺伝子hilA,invFが存在し、invFはShigellaのvirFと相同性を示すこと、また、hilA,invF発現はpHによる制御を受けることが明らかにされている。本研究ではSalmonella におけるcpxR-cpxA 相同遺伝子の探索、同定及びその遺伝子のhilA,invFやsspBCD 遺伝子発現、ひいては総体的な病原性への関与を検討、解明することを主たる目的とした。
研究方法
SalmonellaおよびYersiniaのなかに,Shigellaに存在するcpxR-cpxA と相同な遺伝子群が存在するのかをサザ-ンブロッティング法を用いて確認し,SalmonellaのcpxR,cpxAそれぞれの遺伝子破壊株を作製した。これら破壊株のINT407細胞へ感染能,侵入性のeffector分子であるSipCタンパク質の発現量を分泌型SipCの量としてを測定した。侵入性の遺伝子群の発現を, hilA-β-galactosidase融合遺伝子を作成し,β-ガラクトシダーゼ活性により推量した。
結果と考察
研究成果=(1)Salmonella cpxR,cpxA のhilA遺伝子の発現への影響:
SalmonellaのcpxR,cpxA 各の変異株のhilA遺伝子の発現を測定した結果,pH6.0での培養後、cpxA変異株では野生株の100分の1に低下していた。 PH8の条件においても5分の1に低下していた。一方,cpxR変異株においては,どの条件においてもhilA遺伝子の発現に影響が見られなかった。
(2)野生株、及びcpxR,cpxA 破壊株での分泌SipC産物の検出:
SipCに対するウエスターンブロチィングを行なったところ、pH6.0でSipCが検出限界以下まで減少していた。cpxR変異はSipC産物量に影響していなかった。
(3)野生株、及びcpxR,cpxA 破壊株の細胞侵入能の検定:
培養細胞INT407を用いたMOI=10のアッセイ系で、pH6.0での培養後のcpxA変異株の細胞侵入能は野生株やcpxR変異株の約10分の1まで低下した。
考察=Shigella, Salmonella両菌による実際の病態にはかなりの違いがあるが、感染の第一段階である宿主腸管上皮細胞への侵入にフォーカスを置くと、そこには極めて多くの類似性、共通性が見られる。ShigellaのvirF 自身の発現調節については、2成分制御系の1つ、cpxR-cpxA 遺伝子が関与している。SalmonellaにもcpxR-cpxA に相同な遺伝子が存在し、それがhilA 遺伝子の発現をpH依存的に調節し、Salmonellaの侵入性全体のmaster regulator であるという可能性を提出した。今回、これらのSalmonellaの遺伝子を破壊した株を作製し、hilA発現、SipC産物量、細胞侵入能の検定を行った。今回用いたアッセイ条件では、cpxA破壊株でpH6.0培養後、いずれの項目も野生株に比較して低下することが判った。従って、cpxAは、少なくとも、pH6.0条件下でhilA発現を通して細胞侵入能を正に調節していることが結論された。
SalmonellaのcpxR,cpxA 各の変異株のhilA遺伝子の発現を測定した結果,pH6.0での培養後、cpxA変異株では野生株の100分の1に低下していた。 PH8の条件においても5分の1に低下していた。一方,cpxR変異株においては,どの条件においてもhilA遺伝子の発現に影響が見られなかった。
(2)野生株、及びcpxR,cpxA 破壊株での分泌SipC産物の検出:
SipCに対するウエスターンブロチィングを行なったところ、pH6.0でSipCが検出限界以下まで減少していた。cpxR変異はSipC産物量に影響していなかった。
(3)野生株、及びcpxR,cpxA 破壊株の細胞侵入能の検定:
培養細胞INT407を用いたMOI=10のアッセイ系で、pH6.0での培養後のcpxA変異株の細胞侵入能は野生株やcpxR変異株の約10分の1まで低下した。
考察=Shigella, Salmonella両菌による実際の病態にはかなりの違いがあるが、感染の第一段階である宿主腸管上皮細胞への侵入にフォーカスを置くと、そこには極めて多くの類似性、共通性が見られる。ShigellaのvirF 自身の発現調節については、2成分制御系の1つ、cpxR-cpxA 遺伝子が関与している。SalmonellaにもcpxR-cpxA に相同な遺伝子が存在し、それがhilA 遺伝子の発現をpH依存的に調節し、Salmonellaの侵入性全体のmaster regulator であるという可能性を提出した。今回、これらのSalmonellaの遺伝子を破壊した株を作製し、hilA発現、SipC産物量、細胞侵入能の検定を行った。今回用いたアッセイ条件では、cpxA破壊株でpH6.0培養後、いずれの項目も野生株に比較して低下することが判った。従って、cpxAは、少なくとも、pH6.0条件下でhilA発現を通して細胞侵入能を正に調節していることが結論された。
結論
Shigella, Salmonella両菌の細胞侵入に関わる遺伝子産物の相同性、遺伝子発現の様式の共通性等から、cpxR-cpxA遺伝子がSalmonellaにおいてもこれらの遺伝子発現を環境依存的に制御していることを示した。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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