循環器疾患の発症と危険因子との時間的関連および至適予防対策時期に関する研究

文献情報

文献番号
200000917A
報告書区分
総括
研究課題名
循環器疾患の発症と危険因子との時間的関連および至適予防対策時期に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
川村 孝(京都大学保健管理センター)
研究分担者(所属機関)
  • 平井真理(名古屋大学医学部第一内科)
  • 吉田 勉(藤田保健衛生大学医学部公衆衛生学)
  • 土田哲男(エスエル診療所)
  • 岡本 登(愛知三の丸病院)
  • 池田信男(中日病院)
  • 稲垣春夫(トヨタ記念病院)
  • 松原達昭(名古屋大学医学部第三内科)
  • 大杉茂樹((株)デンソー健康管理部)
  • 寺澤哲郎(東海銀行健康管理センター)
  • 安藤晃禎(三菱電機名古屋製作所診療所)
  • 玉腰暁子(名古屋大学大学院医学研究科医学推計・判断学)
  • 近藤博美(名古屋大学医学部第一内科)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
心筋梗塞、脳血管疾患は死亡や長期臥床に至ることが多く、働き盛りでは特に社会的損失が大きい。従来、これらの病態は疾患単位で疫学的な検討がなされてきたが、各疾患の部位や亜病型によって危険因子の種類や程度、経過が異なることが予想される。病態と危険因子との関係をさらに詳細に検討することにより、循環器疾患の予防対策の充実を図ることを目的とする。
研究方法
(1)愛知県内の10事業所で合計20万人の従業員を包含するコホートを構築する。(2)死亡や長期病欠者を疾患、性、年齢、職種などに分けて発生頻度を検討する。なお長期病欠者の定義は、「外傷を含む健康上の理由による30日以上の休業者」とした。死亡者は死亡までにさまざまな期間で休業しているので、長期病欠者に含めて集計する。 (3)急性心筋梗塞、脳血管疾患(脳出血、脳梗塞、くも膜下出血)について、部位あるいは亜病型(急性心筋梗塞では塊状壊死型、散在壊死型、脳梗塞ではラクナ型、アテローム血栓性)、発症時の状況、および発症前6年間の身体状況について詳細なデータを収集する。 (4)症例に事業所、職種、性、年齢をマッチさせた対照を1対2の割合で設定する。両者の過去5~6年間の定期健診成績、飲酒・喫煙、および治療状況を収集し、その経年変化を比較する。
結果と考察
予定された10事業所のうち7事業所(従業員総数101112人)において1999年度に新たに発生した死亡および長期病欠者が把握できた。事業所の業種は、製造業(3カ所、74501人)、金融・サービス業(4カ所、26611人)であった。従業員の性別人口は男性が89642人、女性が11470人、年齢別人口は29歳以下が23875人、30~39歳が29246人、40~49歳が22204人、50歳以上が25787人であった。(1)死亡について 死亡者は120人で、男性112人、女性8人であった。死亡率は人口10万当り年間118.7人であった。年齢別では、29歳以下が14人(死亡率、人口10万当り58.6人)、30~39歳が14人(同47.9人)、40~49歳が32人(同144.1人)、50歳以上が60人(同232.7人)であった。臓器別では、消化器系が38人(同37.6人)、心血管系、自殺が各々17人(同16.8人)、外傷・事故が13人(同12.9人)、呼吸器系が10人(同9.9人)、脳血管系が8人(同7.9人)、造血器系が5人(同4.9人)、その他が5人(同4.9人)であった。(2)長期病欠について 死亡者を含む1か月以上の長期病欠者は1093人であった。男性が1011人、女性が82人で、その発生率はそれそれ人口10万当り年間1127.8人、714.9人であった。年齢別では29歳以下が204人(発生率、人口10万当り854.5人)、30~39歳が228人(同779.6人)、40~49歳が226人(同1017.8人)、50歳以上が435人(同1686.9人)であった。臓器別では、消化器系が189人(同186.9人)、外傷・事故が165人(同162.2人)、運動器系が141人(同139.4人)、精神が134人(同132.5人)、神経系が67人(同66.3人)、心血管系が59人(同58.4人)、脳血管系が48人(同47.5人)、呼吸器系が44人(同43.5人)、泌尿・生殖器系が34人(同33.6人)、その他116人(同114.7人)であった。(3)循環器疾患の病型、亜病型、部位について 長期病欠者数は脳血管系の3病態は42人、急性心筋梗塞は24人であった。脳血管系3病態のうち11人が脳出血、18人が脳梗塞、1
3人がくも膜下出血であった。脳出血の部位はテント上、テント下が各々1人、他は不明であった。脳梗塞の部位はテント上が4人、テント1下が人、他は不明であった。また亜病型はアテローム血栓性が5人、他は不明であった。急性心筋梗塞の部位は、前壁が6人、下壁が4人、側壁、後壁が各々1人、他は不明であった。冠動脈造影検査所見は、局在性狭窄が9人、他は不明であった。(4)循環器疾患の発症時の状況について 発症時刻が同定できる循環器疾患の発症時の状況は、勤務・通勤時間中が11人、勤務時間外が22人であった。(5)自殺について 自殺は死因の第2位で、29歳以下が3人、30~39歳が2人、40~49歳が7人、50歳以上が5人であった。(6)循環器疾患発症までの危険因子の経年変化について 症例-対照研究のためにデータを集積中で、今年度の報告にあたり6事業所(従業員総数99097人)のデータで予備的な解析を行った。急性心筋梗塞においては、収縮期血圧は対照では徐々に上昇するのに対して症例では高値が持続した。脳出血と脳梗塞、くも膜下出血のいずれにおいても、症例で収縮期血圧と拡長期血圧の高値が続いた。また脳出血と脳梗塞では症例と対照に総コレステロールの差はなかったが、くも膜下出血では症例で総コレステロールがやや高かった。またHDLコレステロールは脳血管疾患3疾患とも(特にくも膜下出血において)症例で高値の傾向を示した。
結論
従業員数が10万人に達するコホートで死亡と長期病欠の発症状況の実態を検討した。まだ予備的検討の段階ではあるが、勤労者における疾病発症の実態ともに、それぞれの循環器疾患発症までの危険因子の特徴ある経過が示されつつある。

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