栄養所要量策定のための基礎代謝基準値作成に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000898A
報告書区分
総括
研究課題名
栄養所要量策定のための基礎代謝基準値作成に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
澤 宏紀(国立健康・栄養研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 吉武裕(鹿屋体育大学)
  • 西牟田守(国立健康・栄養研究所)
  • 樋口満(国立健康・栄養研究所)
  • 廣田晃一(国立健康・栄養研究所)
  • 池本真二(国立健康・栄養研究所)
  • 岡純(国立健康・栄養研究所)
  • 杉山みち子(国立健康・栄養研究所)
  • 松村康弘(国立健康・栄養研究所)
  • 瀧本秀美(国立健康・栄養研究所)
  • 石川和子(国立健康・栄養研究所)
  • 笠岡宜代(国立健康・栄養研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
16,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
生活習慣病の中でも糖尿病や肥満は、その他の生活習慣病の危険因子にもなることから、その発生予防対策が急がれている。わが国において、国民栄養調査や栄養所要量は健康づくり、特に肥満や糖尿病等の生活習慣病予防や治療において必須のものとなっている。しかし、1日の総エネルギー消費量の60%~70%を占める安静時代謝量(基礎代謝量を含む)については、正確な測定に基づいた最近のデータがほとんどないのが現状である。本研究では、平成11年度本研究所に設置されたヒューマン・カロリメータ、およびダグラスバッグ法と質量分析式の呼気ガス分析装置を用い、年齢、性別の基礎代謝量と安静時代謝量を測定し、基礎データ蓄積を図ることを目的とした。
研究方法
今年度は、3年計画の1年目であるので、文献検索による基礎代謝量および安静時代謝量測定条件の再検討および実際の測定を開始した。実施経過を項目別に整理すると次のようである。1)文献検索による検討:今後の基礎代謝量基準値作成に関する方向性を検討する意味で、昭和44年の日本人のエネルギー所要量算定に用いられた基礎代謝量の資料について再検討した。2)基礎代謝量および安静時代謝量の測定:次のような測定条件を基本とし、基礎代謝量おとび安静時代謝量の測定を行った。I) 基礎代謝量測定:被験者は国立健康・栄養研究所の被験者室に一泊し、翌朝12時間絶食後のエネルギー消費量を30分間測定する。II) 安静時代謝量測定:安静時代謝量は基礎代謝量測定後、椅座位安静時のエネルギー消費量を30分間測定する。III) 環境条件:ダグラスバッグ法とヒューマンカロリメータのいずれにおいても、室温が約25℃に調節された条件下で行う。3) マーストリヒト大学で開催された、ヒューマン・カロリーメータに関する専門的国際会議に分担研究者が参加した。基礎代謝基準値作成に重要な基礎代謝の測定法に関して極めて効率的に情報交換ができた。
結果と考察
1)文献検索による検討:1951-1966年の日本のエネルギー代謝研究は、綿密な計画のもとに多数の測定を行った。このような資料のどの部分を今後改めて研究していくべきかを検討する際、現在まで約50年間の日本人の身体的特徴・変化として、①活動量の低下、②筋肉量の低下(体脂肪量の増加)、それによるエネルギー代謝の低下を考慮する必要がある。過去の基礎代謝量は実際よりも10%ほど高く見積もられていた可能性も考えられる。2)基礎代謝量および安静時代謝量の測定:測定条件を検討するために7人の男子大学生に、前泊から安静を続けた条件、30分の歩行後、歩行と電車による60分の移動後の3条件で消費エネルギーを測定し、ダグラスバッグ法とキャノピー法による測定の比較を行った。キャノピー法では再現性がダグラスバッグ法に比べて高かったが、測定値はダグラスバッグ法に比べ有意に低く、使用にあたってはさらにシステム及びソフトに改善を加える必要があると思われた。閉経後の中高年女性の基礎代謝を日常の身体活動レベルや身体組成との関連、および若年女性との対比で検討した結果、ウォーキングを低頻度で行っているグループと高頻度で行っている中高年女性のBMI、体脂肪率には差がなく、基礎代謝(kcal/day、kcal/kg BW/day、kcal/kg LBM/day)にも差はみられなかった。また、運動習慣のない若年女性と
比べて、閉経後中高年女性の基礎代謝量(kcal/day、kcal/kg BW/day)はやや低かったが、LBM当たりの基礎代謝量(kcal/kg LBM/day)には差がみられなかった。3) マーストリヒト大学で開催された、ヒューマン・カロリーメータに関する専門的国際会議に分担研究者が参加し、基礎代謝基準値作成に重要な基礎代謝の測定法に関して極めて効率的に情報交換ができた。
結論
これらの検討と今後得られる情報は、わが国における、基礎代謝基準値の見直し、エネルギー所要量策定の基盤となる測定条件、データの信頼性、精度の向上につながることが期待できる。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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