二次医療圏での保健所を中心とした保健医療福祉の連携推進システム構築の方法論と評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000891A
報告書区分
総括
研究課題名
二次医療圏での保健所を中心とした保健医療福祉の連携推進システム構築の方法論と評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
信川 益明(杏林大学医学部総合医療学教室)
研究分担者(所属機関)
  • 百濟 さち(東京都府中小金井保健所)
  • 佐々木昭子(東京都三鷹武蔵野保健所)
  • 大槻 博(東京都狛江調布保健所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
保健所と医療施設や社会福祉施設との連携システムシステムに基づく各種の連携サービスが、実際に日常の保健医療福祉の現場の関係者、利用者、患者等に互いに理解され、受け入れられる環境を整備し、活用されることが重要である。そのためには住民並びに保健関係者、医療関係者、福祉関係者に対する、保健医療福祉の連携の内容等に関する普及活動の推進が不可欠であり、保健所がその中心的な役割を地域において、将来的にも担っていくことが期待されている。
本研究では、大都市の二次医療圏における保健医療福祉の連携システムを実際に機能させる上で重要である保健所を中心とした連携普及のためのシステム構築の方法論と評価のあり方について検討する。
研究方法
東京都の2次医療圏の中から北多摩南部医療圏(武蔵野市、三鷹市、調布市、府中市、小金井市、狛江市)を取り上げ、「保健・医療・福祉連携システムに関する調査」を平成12年3月に実施した。調査対象は、北多摩南部医圏内の保健所、福祉事務所、市の担当部署、社会福祉施設、訪問看護ステーション、老人保健施設、社会福祉協議会等の188ヶ所、(708名)である。調査項目は、施設種別、職種、保健所の役割、保健所と医療福祉施設の取り組み、保健所の連携の取り組み、保健所と医療福祉施設との連携を図るための工夫・努力、住民サービス向上のために求められるもの、保健医療福祉の連携による住民のメリット等である。平成12年5月31日現在の回収率は35.6%(252名:保健所70名、保健所以外の福祉関連施設等182名)でありこれらについて集計分析した。
北多摩南部医療圏における市役所、保健所、医療機関、社会福祉施設に対する「住民からの問合せ・相談等の実態調査」を、平成12年11月~平成13年1月に実施した。調査対象は、北多摩南部医療圏内の保健所、市の担当部署、社会福祉施設、医療機関である。調査項目は相談者、受付所属課、受付者所属、受理方法、本来の窓口、問合せ・相談内容、対応方法などである。住民からの問合せ・相談の件数は、272件であり、これらについて集計分析した。
結果と考察
保健所と保健所以外の施設での調査結果より、保健所の関係者は保健所が現在果たしている役割をほぼ把握していることが明らかとなった。保健所以外の施設の関係者は、概ね保健所が現在果たしている役割をほぼ把握していたが、「情報ネットワークの充実」、「介護保険に関すること」、「虐待等相談体制の整備とネットワーク化」に関して知っている方は半分以下であった。今後はこれらの項目についての広報活動を進めていくことが必要である。保健所が今後も果たさなければならない役割に関しては、保健所以外の施設の関係者は、「地域保医療計画推進のための関係機関との連携及び調整」、「精神等複雑困難な事例の対応」、「精神障害者の緊急時の入院等の対応」、「食中毒防止対策・環境衛生に関する相談」、「健康問題に関するタイムリーな情報発信」、「虐待等相談体制の整備とネットワーク化」を挙げている。このうち「虐待等相談体制の整備とネットワーク化」については、現在、保健所が果たしている役割の1つであることを知っている割合が少ないことも影響していると考えられる。「地域保医療計画推進のための関係機関との連携及び調整」、「食中毒防止対策・環境衛生に関する相談」については、保健所の関係者も重要と認識していることがわかる。保健所と医療福祉組織とが取り組んだことのある項目に関しては、保健所および保健所以外の関係者ともに、同様な項目が多くを占めており、認識の差は少ないと考えられる。保健所が今後も二次医療圏の医療福祉のコーディネートを図るために連携に取り組むことに関しては、保健所および保健所以外の関係者ともに、「新たな課題が発生するので、積極的に取り組む必要がある」、「公平・中立の立場で連携に取り組む必要がある」の順で必要であるとなっており意識の差はないといえる。保健所が関係機関との連携を図るために取り組まなければならないことに関しては、保健所および保健所以外の関係者がともに多く挙げていたことは、「健康情報の提供」、「地域の社会資源情報の収集と提供」、「健康危機管理に関すること」、「感染症に関すること」、「食中毒に関すること」であった。住民サービスの向上を図るために求められるものに関しては、保健所および保健所以外の関係者が、「総合相談窓口」、「保健医療福祉それぞれの具体的なサービス内容が分かるパンフレット」を多く求めていることが明らかとなった。これらの整備を進めていくことが、住民サービスの向上を図るために急務である。
相談者の割合は95%が市民が占めていた。相談内容は医療に関することが31%と最も多く、福祉に関することが24%、保健に関することが11%であった。受付者の所属別に見ると、医療に関する内容の割合は、医療機関が72%と最も多く、市役所29%、保健所29%、福祉施設は2%に過ぎなかった。福祉に関する内容の割合は福祉施設が45%と最も多く、市役所22%、保健所20%、医療機関14%であった。保健に関する内容の割合は保健所が24.5%と最も多く、市役所13%であり、福祉施設と医療機関では0%であった。保健・医療・福祉の2つ以上に関連した相談である複合の割合は福祉施設25%、市役所13%、医療機関3%、保健所2%であった。保健・医療・福祉の何れにも該当しない相談である「その他」の割合は福祉施設28%、保健所24.5%、市役所23%、医療機関11%であった。武蔵野市、府中市、調布市は医療に関する相談が多く、狛江市、小金井市は福祉に関する相談が多かった。キーワード別の相談内容の割合は医療機関に関することが14%、介護に関することが13%、福祉に関することが10%と多くを占めていた。
結論
市民よりの医療、福祉、保健に関連する相談は、医療機関、福祉施設、保健所、市役所に寄せられていることが明らかとなった。保健所と保健所以外の施設における関係者の双方から、保健・医療・福祉各々の具体的なサービス内容が分かるマニュアルが求められていることが明らかとなったこととも合わせて考えると、保健所、医療施設、社会福祉施設等の関係者が住民、患者、利用者に対して、相談内容について適切に説明できるためのマニュアルの作成が重要である。今後、マニュアルの作成を推進し、市民からの問合せ・相談内容に関係者がより迅速、的確に対応できるようにしていくことが必要である。保健・医療・福祉の連携を展開する上での問題を検討する保健所、市役所、医療施設、社会福祉施設等からなる組織を整備し、各分野の担当者の相互理解を踏まえて、実態調査、問題点の把握、問題を具体的に解決する方策を検討し、保健所、市役所、医療施設、社会福祉施設などの現場において解決策を実施、評価できる体制づくりが急務である。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-