未成年者の喫煙・飲酒を取り巻く環境に関する研究

文献情報

文献番号
200000875A
報告書区分
総括
研究課題名
未成年者の喫煙・飲酒を取り巻く環境に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
尾崎 米厚(鳥取大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 曽根智史(国立公衆衛生院)
  • 谷畑健生(国立公衆衛生院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
未成年者の喫煙および飲酒行動を取り巻く環境要因のうち広告に焦点をあて、それらの特徴と動向を明らかにし、未成年者への影響について考察し,それに基づいた対策を提言するために,たばこと酒の広告について調査を実施した.たばこについては交通広告,街頭広告を酒にについては雑誌広告,交通広告,街頭広告について分析した。たばこの雑誌広告および新聞広告を調査した。
研究方法
酒の雑誌広告調査の調査対象雑誌は,青少年に良く読まれている雑誌とわが国の雑誌売上ベスト30の中から選んだ。小学生、中学生、高校生の男女別によく読まれている雑誌とわが国で売り上げ数が多い雑誌から上位10雑誌を毎年の調査対象雑誌とした。調査内容は,雑誌の発行年月日,総ページ,酒広告の量、酒の種類、タレント登場の有無,懸賞広告の有無,広告の雑誌における位置であった。調査した雑誌の発行時期は1996年1月~1998年12月までであった。
交通広告調査では、首都圏を走るJR線、大手私鉄線、地下鉄線のうち、12路線を任意に抽出し、毎月1回車両内のたばこ及び酒の広告を全て調査した。調査内容は、広告数、酒の種類、銘柄名、広告の大きさ、枚数、タレント登場の有無、タレント名、懸賞・プレゼントの有無等であった。たばこ広告の調査は1998年3月から2001年1月、酒広告の調査は,2000年7月より2001年1月までであった。
街頭広告は東京の山手線周辺地域で、若者が集まることが多い6地域の繁華街の数ブロックを固定地域として定点観測を実施した。調査対象は屋外にあるあらゆる大きさのたばこ及び酒の看板広告である。調査内容は、広告数、銘柄名、酒の種類、タレント登場の有無であった。毎月1回各定点地域を調べみつかったすべての広告を写真にとって記録した。たばこ広告の調査は1998年3月から2001年1月、酒広告の調査は,2000年7月より2001年1月までであった。
結果と考察
酒の雑誌広告の量をみると、たばこ広告の量よりかなり少く、しかも減少傾向にあった。これは、同時期のたばこの広告のそれぞれ55%,47%,24%に相当し,たばことの比較でも酒広告の相対的量は減少してきている。季節別にみると春と冬に多い傾向にあったが,だんだん季節変動がはっきりしないようになってきている。酒の広告を酒の種類別にみると、1998年ではビールが最も多く,次いで甘い果物味のお酒、日本酒,サワー類、発泡酒の順であった.最近増加傾向にあるのは、甘い果物味のお酒で、青少年が好んで飲むビールと甘い果物味のお酒の広告の割合が高いのが問題である。
また、総広告量に占める懸賞広告の割合は年々増加してきた.1998年には44%が懸賞広告であった。
酒の交通広告調査によると、2000年7月の広告数は12路線合計で39枚であった。その後、25枚、30枚、42枚、27枚、34枚と続くが、2001年1月には71枚に急増した。この動向を確認するために、今後継続的なモニタリングが必要である。路線毎にみると、2000年のうちから広告数が多い路線(2001年になって広告数が増加した路線と一致)と2000年の内から広告が少なく2001年になっても増加しなかった路線に分かれていた。酒の種類別にみると6割近くがビールで次いで、発泡酒、ウイスキーであった。ビールは季節に関係なく広告量が多かった。
たばこの交通広告調査によると、12路線の年間合計広告数は1998年(3月から調査)で317、1999年で360とほぼ同レベルであったのが、2000年には511と急増した。広告数が増加した路線とほとんど変わらない路線に分かれており、JR線あるいは公的路線で増加していた。電車広告のおよそ3分の1がアメリカたばこを中心とした外国銘柄であった。たばこ広告は夏休み中、年末年始、春先に多い傾向が認められた。総広告数のおよそ6分の1が懸賞広告であった。懸賞広告数は1998年に33、1999年に67、2000年に98と年々増加傾向にあった。懸賞広告の2/3が外国銘柄でその数は2000年に急増していた。「20歳になるまでたばこは吸わない」というメッセージを伝えるキャンペーン広告数は3年間でわずかに21であった。1998年には19あった広告数が1999年は0,2000年は2と激減した。たばこ広告の広告数の増加、懸賞広告の増加、子どもの休み中に公庫楠が増加すること、20歳になるまでたばこを吸わないというメッセージが減少していることなど問題点は多かった。
酒の街頭広告調査によると、2000年7月の調査地域内にある酒の広告数は6地域合計で12であった。その後、12枚、12枚、14枚、14枚、15枚と続き、2001年1月には16枚へと、徐々に増加した。増加した広告はほとんどがビールの広告であった。
たばこの街頭広告調査によると、街頭広告数は1998年から2001年1月にかけてほぼ一定であった。地域別にみてもほとんど変化はなかった。街頭広告の約8割は外国銘柄のものであった。特に六本木のたばこ広告はほとんど外国銘柄のものであった。
結論
未成年者の目に触れる機会が多いと考えられる雑誌広告および交通広告と青少年が集まる地域における街頭広告における酒広告とたばこ広告の実態と動向を明らかにした。
酒の雑誌広告は、たばこ広告より少なく減少しているものの、青少年が好む酒の種類の広告が多いこと、懸賞広告の割合が増加していることが問題として挙げられた。酒の交通広告もたばこに比べて数は少なかったが、その差はわずかであった。また、2001年になって急増したため、今後の動向を観察する必要がある。
たばこの場合、交通広告と青少年が集まる地域における街頭広告におけるたばこ広告の実態と動向を明らかにした。電車広告の増加、懸賞広告の増加といった問題点が明らかになった。また、交通広告、街頭広告ともに利用者の特長にあわせたマーケティング戦略を思わせる地域や路線による使い分けがみられた。
3年間で明らかになった未成年者に影響を与えるかもしれない、たばこ及び酒の雑誌広告、交通広告、街頭広告の存在は、今後業界の自主規制のみにまかせるだけで大丈夫かどうか政策的判断が必要になってくるであろう。

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