保健所が支援する地域の全高齢者を対象とした指標型目標設定による包括的保健予防活動効果に関する対照群を含む長期介入追跡研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000866A
報告書区分
総括
研究課題名
保健所が支援する地域の全高齢者を対象とした指標型目標設定による包括的保健予防活動効果に関する対照群を含む長期介入追跡研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
星 旦二(東京都立大学・大学院都市科学研究科・教授)
研究分担者(所属機関)
  • 福永一郎(香川医科大学・助教授)
  • 徳留修身(鹿児島県伊集院保健所・所長)
  • 中村安秀(大阪大学・教授)
  • 山崎秀夫(東京都立大学・助教授)
  • 田沢光正(岩手県保健環境部保健衛生課・課長補佐)
  • 揚松龍治(栃木県環境保健部・部長)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
最終的な調査のねらいは、寝たきりを予防・遅延させる実践方法論を構築することである。そのための基盤となる全国調査として、16市町村の高齢者約三万人を調査対象に、最終評価追跡指標(Final goal)を生存維持に設定した。生存だけでなく健康寿命を維持させるための実証疫学追跡研究を科学的に推進させるための実践方法論を構築することも三年間の調査目的とした。
研究方法
調査研究方法は疫学を用いた。調査対象市町村は、保健所の支援を得て協力が得られた全国16市町村である。最終的な追跡評価指標は、追跡期間二年間の生存維持とした。生存と健康度を規定することが先行研究で明確にされた手段的評価指標として、「主観的健康感」「社会的ネットワ-ク」「日常生活習慣」「健康志向行動」「生活満足度」それに「年間所得額」を調査項目とした。
最終年度である三年度目に、約二年間の追跡活動効果として生存の有無を調査した。生存を規定するとして仮説的に設定した各説明要因と生存との関連性を、断面調査による分析と共に、カプランマイヤー生存分析を各項目別に実施し、最後にCox生存モデルによって総合的に解析した。
結果と考察
次の研究課題となる長期介入効果を明確にする実践方法論を明確にする予備的調査を約千人に実施した。予備調査結果を検討し、住民の主体性と個人の目標設定を重視し、健康寿命を維持させるための支援的環境を整備し、調査用紙を部分的に改訂すれば、時間依存型のCox生存分析が追跡調査できる可能性が示された。
約二年間の死亡状況を追跡調査し、2000年6月までに死亡した506人を確認した。生存を規定する説明要因として当初仮定した、「主観的健康感」「生活活動能力」「社会的ネットワ-ク」「日常生活習慣」「健康志向行動」「生活満足度」「年間所得額」と、「体の痛み」「治療中の病気」「家族が痴呆と認識していること」が、統計学上有意に生存を規定していた。その後、Cox生存モデルを用いて、生存規定要因を総合的に解析した。生存率を従属変数とした時、属性項目である性と年齢の項目以外に統計学上有意に関連していた要因は、主観的健康感と社会ネットワーク、日常生活習慣、IADLと、治療中の疾病数が多いことであった。カプランマイヤー生存分析によって生存と統計学上有意な関連が示されていた、身体の痛みや年間所得額、それに家族が痴呆として認識していることは、総合分析では、統計学上弱い有意差となった。
結論
高齢者の生存を維持するためには、体の痛みや所得の大小に拘泥せず、主観的な健康感を高め、社会的ネットワークを強化し、外出を含めたIADLレベルを維持し、健康にとって好ましい日常生活習慣を身につけて、結果的に治療対象となる疾病を予防する科学的事実が明確になった。
しかしながら、今回の三年間の追跡研究によって健康寿命の向上が介入効果として示されたわけではない。今後、健康寿命の維持と向上を目標とする実証疫学追跡研究を市町村レベルで実践していくためには、①学校区などの地区レベルで、住民の主体性と個々人の健康目標が設定出来るような支援的環境を整備し、②地区の健康づくり計画を策定し、同時に③行政が推進組織体制と評価計画を事前に整えていくことが出来れば、実行可能性と実現可能性が高まることが考察された。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)