保健サービスの効果測定等の評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000855A
報告書区分
総括
研究課題名
保健サービスの効果測定等の評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
上村 隆元(慶應義塾大学医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 森口尚史(東京大学先端科学技術研究センター)
  • 佐藤千史(東京医科歯科大学医学部)
  • 大前和幸(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
医療行為の包括的エンドポイント指標としてQOL(Quality of Life)が議論されている昨今の事情に鑑み、その定量的評価方法(健康効用値およびQALY Quality Adjusted Life Years)を用いて保健サービスの効果測定等評価を行える環境を提供することを目的とする。
研究方法
多属性効用原理に基づく健康効用値測定用具として英語圏では定着しているマクマスターHUI(Health Utilities Index)の邦訳版を開発し、異文化圏適合などの妥当性検証の過程を経て、使用環境の整備を整えていく。
わが国でも予防領域および介入治療領域ともに保健サービスの効果測定等の評価に関する、QOLを視軸とした健康寿命等、健康量の近似値の測定環境基盤整備が求められている。このような厚生施策や医療環境をふまえ、わが国で健康効用値が測定され、評価に供することが可能な環境を整え、実際の患者調査や地域人口の健康調査に提供することが最終的到達点である。
結果と考察
3年計画の初年度および2年目研究成果として、
1、疾病集団425名(Known People Survey=Health status が臨床指標により把握できる集団 ; 大動脈瘤疾患の術後患者群
2、地域健康集団3752名(General Population Survey)
を対象にHUI邦訳版による自記式調査を行った。 Known People Surveyでは各症例ごとの臨床データを専門医から得て説明変数とし、General Population Surveyでは年齢、性別、BMI、職業、学歴、結婚歴、罹患している慢性疾患など20種類のバックグラウンドに関する情報を得て説明変数とした。3年目の研究成果として
3、地域高齢者集団433名に対する健康効用値調査(都内在住の65歳以上の集団)
4、地域の慢性疾患による外来通院患者2000名に対する健康効用値調査と臨床指標を中心にした個人属性との関係解析
を行った。効用換算は多属性効用値(Multiattribute utility score), Single Score(8寄与領域ごとの効用値)をカナダ版Scoring function(多属性効用原理に基づく健康効用値の換算式)を用いて求め、2年目の調査方法を踏襲して、VAS-QOLを目的変数に加えた。またVAS-QOLとHUI効用値との相関を解析した。
結果、言語妥当性、異文化適合性は良好だった。 HUI各領域(Attributes)ごとに算出したシングルスコアは、個人属性の特性を反映する機能を示し判別妥当性およびConstruct Validity(構成領域妥当性)が検証された。高齢者群では健康水準に対する要求水準の低下から効用値とVAS-QOLとの乖離が見られるなど特徴ある所見が得られた。臨床的に効果測定で使用する場合、疾病毎の病態生理や症状の経過など、疾病特異性を加味して結果解釈する必要がある点が示唆された。地域健康集団調査の結果、HUI各説明変数との相関において効用値は多属性、シングルスコアとも良好な内的整合性、判別妥当性、評価妥当性を示した。
理想的には、わが国独自のScoring functionの確立が求められるが、カナダ版の代用によって充分にQALYS算出などの実用環境が整うものと考えられる。
結論

公開日・更新日

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