保健所における母子保健活動のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
200000847A
報告書区分
総括
研究課題名
保健所における母子保健活動のあり方に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
宮里 和子(北里大学)
研究分担者(所属機関)
  • 福島富士子(国立公衆衛生院)
  • 尾崎米厚(鳥取大学)
  • 藤内修二(佐伯保健所)
  • 守田孝恵(国立公衆衛生院)
  • 柴田真理子(東京都立保健科学大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域保健法の施行に伴い身近な保健サービスの提供主体が市町村へと移行し、母子保健については市町村が中心となって地域住民のニーズを把握しながら効果的で効率的な母子保健活動を展開していくことが望まれている。地域保健法によると保健所の役割は一応示されてはいるが、母子保健において取るべき役割として明確にはされておらず、それぞれの保健所で模索している現状であると思われる。本研究では全国の保健所の平成9年度からどのような母子保健活動が実際に行われているのかを実態調査を行い、21世紀の保健所における母子保健のあり方についての調査研究を行った。
今後の保健所における母子保健活動のあり方及び活動の類型を整理することにより保健所の立地条件、その他の地域特性に合った保健所の役割を考察する。
研究方法
昨年度の都道府県型保健所に対する郵送調査に回答した271の保健所の管内の全市町村の1、793市町村を対象に、郵送調査を実施した。調査内容は、1999年度実施の都道府県型保健所に対する母子保健活動の実態に関する全国調査に対応した内容とした。具体的には母子保健活動の実態として、母性保健、乳幼児保健、地域活動等について、保健所のみで実施か、市町村のみで実施か、保健所の援助により市町村で実施かを尋ねた。また、母子保健活動の機能に注目して市町村から見た保健所の支援の実態も尋ねた。企画の支援、事業実施のためのマンパワー支援、評価の支援、情報・データ提供、システム作り支援について保健所の支援があるかどうかを尋ねた。さらに保健所と市町村の協働についての課題に関する担当者の認識、様々な先駆的な取り組みについてニーズがあるかどうか、実施希望があるかどうか、実施可能かどうか、保健所の支援を希望するかどうかについて尋ねた。回答数は982(回答率54.7%)であった。
結果と考察
市町村の母子保健事業への都道府県型保健所の支援実態について、母性保健では保健所の支援で実施している割合はいずれの事業も極めて少なかった。乳幼児保健活動においても、保健所の支援で実施と回答する市町村の割合は低かった。地域活動等でも保健所が市町村支援している割合が高い項目は、認められなかった。
市町村からみた保健所の支援状況は保健所が企画を支援している割合が高い項目は、研修、市町村母子保健計画の策定、市町村母子保健連絡協議会であった。市町村から見た保健所と市町村の協働についての問題点の認識状況をみると、問題点及び保健所への要望は「保健所は関係機関との連携を推進してほしい」、「保健所は市町村事業の企画に関われていない」、「保健所の母子保健活動のマンパワーが足りない」等であり、逆にそう思わないと回答した者の割合が高かったのは、「保健所は専門的技術・知識が足りない」、「保健所は市町村の母子保健の実情を知らない」等であった。今後、母子保健事業のニーズが大いにあると回答した割合が高い項目は、活動の評価、小児期からの生活習慣病予防、こころの問題、市町村母子保健計画・エンゼルプランの支援等であった。
結論
 保健所の母子保健活動あるいは保健所の市町村支援について、管内市町村側の認識は過小評価されている事態が明らかになった。しかし一方で、保健所の支援を今後の活動に望む声も多くいことが明らかになった。今後の課題としては、計画づくり、活動の評価、システムづくりといった保健所の得意分野の活動で保健所と市町村が顔を合わせて協働する機会をつくりながら、それぞれのおかれている事情、具体的な活動内容や支援の可能性についての相互理解をもたらすような努力を行うことが重要であるといえる。

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