文献情報
文献番号
200000844A
報告書区分
総括
研究課題名
地域保健活動の類型化と展開方法の適用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
岩永 俊博(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
- 山根洋右(島根医科大学)
- 兵井伸行(国立公衆衛生院)
- 鳩野洋子(国立公衆衛生院)
- 尾崎米厚(国立公衆衛生院)
- 中俣和幸(鹿児島県徳之島保健所)
- 橋本栄里子(医療科学研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 健康科学総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は公衆衛生活動の展開方法として提示されているいくつかの方法論について、保健所、市町村で行われる保健事業への適応という視点からそれぞれの特徴や有効な適応場面、あるいは限界などを整理することである。その方法論とは、プロジェクト・サイクル・マネージメント(PCM)、地域づくり型保健活動(SOJO-Model)、疫学アプローチ、プリシード・プロシード・モデル(PRECEDE-PROCEED Model)、ソーシャル・マーケティングなどである。
研究方法
研究の手順は、まず、各モデルについて、特徴づけし整理を試みるために、どのような視点でモデルを検討すべきかという、その視点に関する検討を行った。
具体的には、1)研究班内にワーキンググループを設定し、特徴づけのための視点の原案を作成した、2)作成した原案を、学識経験者およびモデル担当の分担研究者に郵送し、意見を求めた、3)返送された調査票をさらに学識経験者に郵送し、意見をもらった。次に、その意見を採り入れ、特徴づけのための視点を検討し、その検討結果をもとに調査票を作成し、各分担研究者にそれぞれの担当するモデルについて記入を依頼した。その結果を特徴づけの視点作成段階での研究協力者である学識経験者に郵送して意見をもらい、他のモデルの調査結果と意見を分担研究者に再度送付し、最終的な検討をお願いした。また、これまでの検討を踏まえてモデリングという視点からの分析を行った。
具体的には、1)研究班内にワーキンググループを設定し、特徴づけのための視点の原案を作成した、2)作成した原案を、学識経験者およびモデル担当の分担研究者に郵送し、意見を求めた、3)返送された調査票をさらに学識経験者に郵送し、意見をもらった。次に、その意見を採り入れ、特徴づけのための視点を検討し、その検討結果をもとに調査票を作成し、各分担研究者にそれぞれの担当するモデルについて記入を依頼した。その結果を特徴づけの視点作成段階での研究協力者である学識経験者に郵送して意見をもらい、他のモデルの調査結果と意見を分担研究者に再度送付し、最終的な検討をお願いした。また、これまでの検討を踏まえてモデリングという視点からの分析を行った。
結果と考察
①特徴づけのための視点はいくつかの側面に分けることができた。それは、準備、計画、実施、評価という時間的経過において考慮すべきことや適用の地域的広がりの限界、モデルに基づいた展開に必要な時間や費用など、また住民や行政内部に対する説明のしやすさやモデル修得に必要な時間や経費などであった。
②複数の学識経験者から、モデルを適用することが目的ではなく、モデルはツールであること、概念枠組みまで含んだモデルやツールに近いモデルが混在していること、相互比較は優劣の判断ではなく、特徴を浮き彫りにすることが目的であることなどが指摘された。
③住民と行政、専門職の関係性という視点では、いずれのモデルも住民と行政、専門家との共働が指向されており、達成目的や実施方法、評価方法の決定や実施、評価のすべての過程に住民が参加しすることが想定されたモデルと、標準的な手順では、参加がそれほど重視されていないが、モディファイされた形として住民の参加が工夫されているモデルとがあった。
④ヘルスプロモーションでの参加者のエンパワーメントは、人々が自分たちの健康に影響を及ぼす意思決定や行動をより強くコントロールできるようになるプロセスといる。いずれのモデルでも参加者のエンパワーメントが可能示あるとされたが、各モデルによってその内容は違っていた。また、モデル自身がエンパワーメントのための道具としても位置づけることができるものもあった。
⑤今回はワークショップを参加者相互の意見交換によって、なんらかの成果物を作り上げる集まりと定義して、それぞれのモデルでの位置づけや特徴を検討した。その結果、ソーシャルマーケティングを除いて重要な意義を持つとされた。PRECEDE-PROCEED Modelの標準的なモデルではワークショップ事態は重視されていないが、今回の検討での分担研究者らによってモディファイされた進め方では、住民参加を重視するため重点が置かれていた。
⑥各モデルのマネージメントにおける専門家の役割としては、モデルによって違いがあり、PCMでは計画策定から、実施、評価の各段階で専門家の経験・知識・判断が期待され、SOJO model では、ノーマライゼーションやヘルスプロモーション、地方自治などの概念的基盤をもったスーパーバイズが期待される。疫学アプローチは専門性の高い手順であり、調査活動では専門家のリードや方向付が必要である。PRECEDE-PROCEED Modelでは、ワークショップにおいてグループインタビュー等の専門的知識・技術が必要とされる。社会調査法や統計処理能力も専門家が有すべき前提条件として求められている。ソーシャルマーケティングでは、全体のマーケティング活動を支えるマーケター、マーケティング担当者の存在、もしくは能力にある専門家のアドバイスが必要と思われる。
⑥各モデルとも参加的を指向しているため、ニーズと直結した問題認識や目標設定が可能であることや実施段階での役割分担が容易であることなどが利点としてあげられた。
⑦各モデルの適応が適さないのは次のようなケースである。PCMは、問題が解決された望ましい状況が設定しにくい場合や、現存する問題が存在しない状況での立案には適しない。SOJO modelは活用する目的が参加者のエンパワーメントと合致しない場合、災害の発生時等の緊急事態への対応、食中毒の発生などのように因果関係が明確な健康問題への対応、あらかじめ課題や内容が定められている事業の展開方法を検討する場合などは適さない。疫学アプローチはいずれのモデルにおいても特に課題設定や評価の段階で利用される方法である。PRECEDE-PROCEED Modelは、QOL、健康課題、生活習慣や保健行動,知識や態度、技術等の修得、賞罰や本人の満足等の各要因間の関連が明らかでないものがテーマとなる場合は、理論上できないことになる。要因間の関連が明らかな場合でも『モデルを使う人の手に負えない環境要因』が健康状態に大きな影響を与える場合には、このモデルを使うことはできない。ソーシャルマーケティングは顧客ニーズがない保健サービスには対応できず、社会的政策的にその地域保健活動に取り組むべきか否かについての政策的検討や緊急性を必要とされる対応には向かない。
⑧地域保健におけるモデリング研究の方向は、複雑系としてのコミュニティ・ダイナミクスや生物的・心理的・社会的・文化的複合体としての人間とその生活現象がもたらす事象への全体的戦略的アプローチであると考えられる。従来のいくつかのモデル的方法論も、目的、状況、環境、主体的条件などを勘案して用いられる必要があり、モデル相互の補完性や特性、限界性と発展性の研究も必要であり、その結果、人為的社会的介入効果の統合的評価やあらたな包括的モデルの開発、異なる発展段階の国や社会状況に適応して用いられる多様なモデル適用戦略も発達していくものと考えられる。
②複数の学識経験者から、モデルを適用することが目的ではなく、モデルはツールであること、概念枠組みまで含んだモデルやツールに近いモデルが混在していること、相互比較は優劣の判断ではなく、特徴を浮き彫りにすることが目的であることなどが指摘された。
③住民と行政、専門職の関係性という視点では、いずれのモデルも住民と行政、専門家との共働が指向されており、達成目的や実施方法、評価方法の決定や実施、評価のすべての過程に住民が参加しすることが想定されたモデルと、標準的な手順では、参加がそれほど重視されていないが、モディファイされた形として住民の参加が工夫されているモデルとがあった。
④ヘルスプロモーションでの参加者のエンパワーメントは、人々が自分たちの健康に影響を及ぼす意思決定や行動をより強くコントロールできるようになるプロセスといる。いずれのモデルでも参加者のエンパワーメントが可能示あるとされたが、各モデルによってその内容は違っていた。また、モデル自身がエンパワーメントのための道具としても位置づけることができるものもあった。
⑤今回はワークショップを参加者相互の意見交換によって、なんらかの成果物を作り上げる集まりと定義して、それぞれのモデルでの位置づけや特徴を検討した。その結果、ソーシャルマーケティングを除いて重要な意義を持つとされた。PRECEDE-PROCEED Modelの標準的なモデルではワークショップ事態は重視されていないが、今回の検討での分担研究者らによってモディファイされた進め方では、住民参加を重視するため重点が置かれていた。
⑥各モデルのマネージメントにおける専門家の役割としては、モデルによって違いがあり、PCMでは計画策定から、実施、評価の各段階で専門家の経験・知識・判断が期待され、SOJO model では、ノーマライゼーションやヘルスプロモーション、地方自治などの概念的基盤をもったスーパーバイズが期待される。疫学アプローチは専門性の高い手順であり、調査活動では専門家のリードや方向付が必要である。PRECEDE-PROCEED Modelでは、ワークショップにおいてグループインタビュー等の専門的知識・技術が必要とされる。社会調査法や統計処理能力も専門家が有すべき前提条件として求められている。ソーシャルマーケティングでは、全体のマーケティング活動を支えるマーケター、マーケティング担当者の存在、もしくは能力にある専門家のアドバイスが必要と思われる。
⑥各モデルとも参加的を指向しているため、ニーズと直結した問題認識や目標設定が可能であることや実施段階での役割分担が容易であることなどが利点としてあげられた。
⑦各モデルの適応が適さないのは次のようなケースである。PCMは、問題が解決された望ましい状況が設定しにくい場合や、現存する問題が存在しない状況での立案には適しない。SOJO modelは活用する目的が参加者のエンパワーメントと合致しない場合、災害の発生時等の緊急事態への対応、食中毒の発生などのように因果関係が明確な健康問題への対応、あらかじめ課題や内容が定められている事業の展開方法を検討する場合などは適さない。疫学アプローチはいずれのモデルにおいても特に課題設定や評価の段階で利用される方法である。PRECEDE-PROCEED Modelは、QOL、健康課題、生活習慣や保健行動,知識や態度、技術等の修得、賞罰や本人の満足等の各要因間の関連が明らかでないものがテーマとなる場合は、理論上できないことになる。要因間の関連が明らかな場合でも『モデルを使う人の手に負えない環境要因』が健康状態に大きな影響を与える場合には、このモデルを使うことはできない。ソーシャルマーケティングは顧客ニーズがない保健サービスには対応できず、社会的政策的にその地域保健活動に取り組むべきか否かについての政策的検討や緊急性を必要とされる対応には向かない。
⑧地域保健におけるモデリング研究の方向は、複雑系としてのコミュニティ・ダイナミクスや生物的・心理的・社会的・文化的複合体としての人間とその生活現象がもたらす事象への全体的戦略的アプローチであると考えられる。従来のいくつかのモデル的方法論も、目的、状況、環境、主体的条件などを勘案して用いられる必要があり、モデル相互の補完性や特性、限界性と発展性の研究も必要であり、その結果、人為的社会的介入効果の統合的評価やあらたな包括的モデルの開発、異なる発展段階の国や社会状況に適応して用いられる多様なモデル適用戦略も発達していくものと考えられる。
結論
今回の研究では、各モデルの特徴を明確にし、日常業務において容易に区別して活用できるようにすることを試みた。その結果、概略的な特徴づけはできたが、言明できるほど明確な特徴付けや区別は困難であった。今後、このような分野で使われる用語の概念を整理し、共通認識を持った上で、さらに各モデルの実践的検討を積み重ね、その上でさらに客観的に特徴づける研究の必要性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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