新一般用医薬品の使用実態治験の実施に関するパイロット的研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000837A
報告書区分
総括
研究課題名
新一般用医薬品の使用実態治験の実施に関するパイロット的研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
清水 直容(帝京大学医学部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新一般用医薬品(スイッチ及びダイレクトOTC)について、その適正な開発と評価のために必要なデータを収集する目的の試験方法が平成10、11年度の厚生科学研究として施行され、その成績は新一般用医薬品開発と評価のためのガイダンスとして報告されている。今回の研究は、そのガイダンスで提案された使用実態試験:Actual Use Trial(以下AUTと略記)の実施可能性と実施上の問題点を明らかにするためのパイロット的研究である。
研究方法
AUTは、使用者母集団を代表し得る標本について薬局が中心となって行う試験であるが、今回AUTパイロット試験(以下試験と略記)に当たっては、既承認の一般用医薬品を用いて、承認されている効能効果の範囲を指標に、試験的に実施した。その実施の基本は医薬品の承認申請に必要とされる臨床試験、すなわち「治験」に準じるべきで、GCP適合が前提である。従ってAUT試験をGCPに準じた試験とするため、まず研究班として倫理委員会を開き、班員外の弁護士、消費者代表を加え、試験デザイン及び実施要領について審議後、承認を受け、全ての参加組織における手順書(SOP)の確認を行い、以下に述べる3地域計15薬局において試験を実施した。試験の中での検討課題は試験審査委員会設置、薬局及び被験者の選定とその要件、試験デザイン(試験薬選定と適応症、試験実施期間、盲検化・無作為割付、対照群、標本の大きさ、エンドポイント、投薬遵守の調査、評価方法)及び被験者よりの同意取得などである。更に日本薬剤師会、日本医師会の協力を得て安全性確保の体制を確立した。次いで選定された岩手県花巻市、東京都城東・深川地区、静岡県沼津市の3地域において本研究班員を主体に、行政及び大衆薬工業協会の協力を得て説明会を行い、また各地域試験審査委員会ではオブザーバーとしても出席、質疑に応答した。提案の試験が試験審査委員会で承認された後に試験が平成13年2月21日-25日に上述の3地域で開始され、3月13日に予定60症例の試験を無事終了し、3月26日コントローラー委員会により開票と試験のまとめが行われた。
結果と考察
得られた成績は、「新一般用医薬品」開発と評価のためのガイダンスで提案された使用者母集団を代表し得る標本について薬局を中心とした試験の実施は慎重な手順を踏めば実施可能であるという結果である。試験のデザイン、内容によるが今回の試験では、約80%で10分以内で同意が得られている。薬剤説明書の理解度は97%と良好で適応以外の使用はなく、用法・用量の遵守も98%、評価のための日誌記載も92%が普通以上で良好である。有効性、安全性、患者の満足度についても試験に用いたプラセボを含む2薬剤で集計解析したが、軽微な有害事象は約8%で試験前の推定と大きく異なるものでなく、また有効性も両製剤併せて効いた以上19/60例、満足以上19/60例、やや効いた以上は40/60例、やや満足以上で36/60例であり、従来の経験から外れるものでなく、この成績よりみて評価そのものは妥当と判定されたが、今回の試験の目的ではないため、薬剤間の比較成績についてはこれ以上の解析は行わなかった。試験審査委員会における質疑において班としての見解及び同意取得に際しての薬剤師の具体的見解の記載も今後の計画で非常に参考となるものである。この研究により得られた成果の今後の活用として、使用者母集団を代表し得る標本について、一般用医薬品の購入場所である薬局において使用実態試験(AUT)の実施が可能であることが示されたので、今後「新一般用医薬品」開発と評価のために必要な科学的で信頼性があり、かつ倫理的な使用実態試験の要望があれば実施上問題点がないことが明らかになり、日本の薬局において、薬剤師により実
施可能な体制が確立し、GCPに適用できるよう運用等の整備がなされれば、有用な試験であると考えられる。さらに、本研究成果は、今後研究者主導型の臨床試験においても応用され得ると期待される。
結論
一般用医薬品の使用者母集団を代表し得る標本について、その購入場所である薬局においてGCP適合の使用実態試験:AUTの実施が可能であることが示され、今後GCPの運用等の整備がなされれば、AUTの実施に問題がないことが明確となった。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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研究報告書(紙媒体)