医薬品製剤原料の品質確保に関する研究

文献情報

文献番号
200000835A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品製剤原料の品質確保に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 敏史(国立医薬品食品衛生研究所大阪支所)
研究分担者(所属機関)
  • 小嶋茂雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 谷本剛(国立医薬品食品衛生研究所大阪支所)
  • 木嶋敬二(日本医薬品添加剤協会)
  • 綱川延孝(日本医薬品添加剤協会)
  • 武田豊彦(新潟鉄工所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
以下、各分担研究報告につき、研究要旨への記述順に述べる。
1)ICH/原薬GMPガイドライン作成の準備が進められている。このガイドラインは新薬を含め、すべての原薬及び中間体に適用されることから、国内的なGMP規則との整合を図るなど、国内的対応への準備を進める。
2)ICH/原薬GMPガイドラインでは、原薬の製造及び品質管理において不純物プロファイルの確立とそれによる製造管理を求めているが、基準プロファイルとの同等性を何を以てどのように判断するかが重要となる。基準プロファイル作成にあたっての基本的考え方を定め、同等性評価基準(案)及びその判定手順を作成する。
3)分担研究 2)と同様に、既存薬の製造管理等への不純物プロファイルの適用にあたり、基準プロファイルとの同等性判定基準をどう考えるべきかにつき、ICH/Q3Aの新薬における不純物ガイドライン及び米国FDAの「原薬の承認後変更に関するガイダンス」(BACPAC)の考え方を参考に考察する。
4)医薬品添加剤GMP自主基準の周知徹底及び活用を図るために、自主基準への適合状況評価のための点検項目及び評価基準を定め、「医薬品添加剤GMP自主基準―適合状況評価のためのガイドブック―」を作成する。
5)「原薬・医薬品添加剤工場のGMPハード対応に関する指針」を作成し、医薬品GMPハード及び医薬品添加剤GMP自主基準の製造現場(工場)での実践又は定着を図る。
研究方法
1)ICH/原薬GMPガイドラインの昨年2月(Q7A/EWG、東京)以降の動きについて総括し、国内的運用へ向けての対応について考察する。
2)原薬の不純物プロファイルに関する製薬業界の考え方及び取組の実態につき、アンケート調査を行い、不純物プロファイルに基づく製造工程管理のあり方について考察するとともに、具体的運用のための同等性評価基準(案)及びその判定手順(案)を作成する。
3)ICH/Q3Aの新薬における不純物ガイドライン及び米国FDAの「原薬の承認後変更に関するガイダンスI:原薬製造中間体(BACPAC I)」に記載されている不純物プロファイルの同等性評価に関する考え方を踏まえ、我が国での実際的な運用について考察し、同等性判定基準(案)を作成する。
4)IPEC-Americas により作成されたGood Manufacturing Practice Audit Guiーdeline for Bulk Pharmaceutical Excipiーents (Audit Guidline)を参考に、自主基準への適合性評価のための点検項目を定め、評価基準を作成する。
5)「原薬・医薬品添加剤工場のGMPハード対応に関する指針」(指針)を作成するために「空調」及び「製造用水」システムに関するアンケート調査結果(H11年度)を整理、解析、図表化し、冊子にまとめる。また、ISPE(International Society for Pharmaceutical Engineering)が米国FDA及び製薬企業と協力して、GMPハード対応の指針、BASELINE(全12巻)の刊行が始まっており、これを参考に、わが国における指針作成作業を開始する。
結果と考察
研究結果=1)ICH/原薬GMPガイドライン(GMP for Active Pharmaceutical Ingredients)の昨年4月以降の進展につき総括し、国内的運用に際しての問題点を探った。本ガイドラインは昨年中にステップ2からステップ4へと進み、2001年4月、実施ということで合意された。ステップ2ドラフトへのコメント約300件は、いずれもICH-5/EWG(サンジェゴ、2000年11月)の場で対応可能なものであり、ステップ2ドラフトの大きな変更はなく、ステップ4への進展、5ヶ月後からの実施と急展開したものである。本ガイドラインのICH-5/EWG(2000年11月)における主な変更点を整理し、分担研究報告書に記載した。
本ガイドラインは、「ガイダンスであり、レギュレーションではない」(第1章第1節: Objective)ことから、実施段階を迎えたからといって右往左往する必要はないが、輸出入の対象となる原薬及び中間体には、本年4月より本ガイドが適用される状況にあることを周知徹底させる必要がある。また、原薬の製造管理において「不純物プロファイル」を確立し、原料、製造条件又は製造工程に変更のあったときは、その同一性を確認する必要がある。このような製造管理が、既存の原薬及び中間体のすべてに適用されることになることから、これに対処するための国内的な対応策を早期に確立する必要がある。
2)新薬を含む原薬での不純物プロファイルに対する考え方及び実際の対処の仕方につき、二つの業界団体(東西技術(研究)委員会常任会社28社、日本医薬品原薬工業会99社)を対象にアンケート調査を行った。東西技術(研究)委員会28社のすべてと原薬工30社より回答が得られた。既存薬の不純物プロファイルに対する考え方は、両業界団体とも同一傾向がみられ。詳細は分担研究報告書に示した。
別に、東西技術(研究)委員会の協力を得て、各社で製造する原薬48品目について、過去10ロット以上の不純物解析データを収集し、不純物プロファイルによる原薬の製造管理に関する実態調査を行った。この結果、分析法としてはHPLC法の採用が圧倒的であり、大部分の原薬(44/48)で不純物規格に基づく製造管理がなされていること、個々の不純物量のみ(19/48)又は総量と合わせて(18/48)不純物管理しているケースが多いが、不純物総量のみ(7/48)での管理もあり、各社の対応に差異がみられた。これらの調査結果を基に不純物プロファイルの同等性を判定するための「同等性評価基準(案)」を作成した。新規の不純物が検出された場合、ICH/不純物ガイドラインに準拠した対処をすることとし、既知の不純物については検出レベル(0.1%)により、異なる考え方を採用する必要があるとの考え方が示された。また、この考え方に基づく判定手順の流れをフローチャートで示した(分担研究報告書参照)。
3)不純物プロファイルの同等性を如何に判断するかにつき、昨年度の分担研究報告「新薬における不純物プロファイルに基づく品質管理の考え方」、ICH/原薬の不純物ガイドライン(Q3A)及び米国FDAの「原薬の承認後変更に関するガイダンスI:原薬製造中間体(BACPAC I: Intermediates in Drug Substances Synthesis)」 を基に考察した。この結果、新規不純物に対しては、安全性が未確認であることから、ICH/Q3Aの新薬に対すると同様の考え方を適用する必要がある。それ以外の既知不純物に関しては、個々の不純物含量と不純物総量に関してはBACPACに準拠して「代表的10バッチの統計的上限(平均値+3σ)以下」と考えることができるが、規格が設定されている場合「規格限度内」との考え方は我が国では採用できないとした。また、同等性判定手順を明確にするために、①ICH/Q3Aが適用された医薬品か?、②作用が強い医薬品か?、③過去に安全性について懸念をもたれたことがあるか?、の三種の基本的設問を設定し、これによりどのようなレベルの同等性判定基準を適用すべきか、デシジョンツリー(案)の形で示した。
4)全17条より構成される「医薬品添加剤GMP自主基準」に対する適合状況評価をするために、各条項ごとに「設問」、「点検項目」及び「評価基準」を定め、添加剤メーカーがその適合状況につき、自己評価が可能となるよう「適合状況評価ガイドブック」を作成した。評価ランクは、A:適合、B:一部改善を要する、C:内容が不十分、D:不適合、の4段階評価とした(別添資料参照)。また、品目別適合状況の総合的評価が可能となるよう、「品目別評価項目と評価対象条項」を別に定めた(分担研究報告参照)。
5)「原薬・医薬品添加剤工場のGMPハード対応に関する指針」(指針)を作成するために、「空調」及び「製造用水」に関するアンケート調査結果について、データ整理、解析、図表化等を行い、この結果を『原薬・医薬品添加剤工場の「空調」、「製造用水」システムのGMPハード対応のアンケート調査結果』として冊子にまとめた。また、上記の指針作成の具体化に着手し、「目次」、「はじめに」、「総論」、「製造工程における汚染防止対策」、「建築」等の各章につき、原案の作成を行った。
結論
1)~3)ICH/原薬GMPガイドラインが2001年4月より実施段階へと進展してきたことから、不純物プロファイルに基づく原薬及び中間体の製造管理のための基準的な考え方を早期に提示し、各製造メーカーが製造者責任の下で、円滑に対応できるようにする必要がある。
4)「医薬品添加剤GMP自主基準―適合状況評価のためのガイドブック―」を作成し、添加剤メーカーがGMPによる製造及び品質管理を行いやすい環境づくりを更に進める。
5)「原薬・医薬品添加剤工場のGMPハード対応に関する具体的な指針」を作成するために、「空調」及び「製造用水」に関して行ったアンケート調査結果を整理、解析、図表化等を行い、冊子にまとめた。また、同指針作成のための作業に着手し、「製造工程における汚染防止対策」等、一部の原案づくりを開始した。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-