医薬品の適正使用推進に資する薬剤師業務の在り方に関する研究(総括報告書)

文献情報

文献番号
200000817A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品の適正使用推進に資する薬剤師業務の在り方に関する研究(総括報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
高橋 隆一(国立病院東京医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 久保鈴子(日本薬剤師研修センター)
  • 永田泰造(練馬区薬剤師会)
  • 加賀谷肇(済生会横浜市南部病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
6,156,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成11年度に行った代表的6疾患のフォーマットの試用についてのアンケート調査成績を踏まえてフォーマットの内容を改善し、更に日常遭遇することの多い臨床所見や他の疾患にも範囲を拡げて、臨床の場において役立つような具体的フォーマットを作成することを目的とした。
研究方法
平成10年度に班会議において選択、作成した6疾患(抗凝固療法、高血圧症、消化性潰瘍、心筋梗塞、喘息、糖尿病)についての薬剤師研修用フォーマットを試用して、それについてのアンケート調査成績を平成11年度に集計した。そのアンケート調査の結果、症例についての具体的検討に役立つ内容が望まれていることが明らかになったので、班会議においてその具体的改善策が検討された。
更に疾患の範囲を日常遭遇することの多い他の疾患にも拡大することによって多忙な臨床の場において直ぐに役立つ研修フォーマットを作成するために、要望の高い疾患を関東と関西の病院、薬局勤務薬剤師を対象に調査し、疾患の拡大を図った。一方、薬局においては、薬歴管理簿の改良を進めた。エッセンシャルドラッグに関しては、薬学的管理事項チェックリストの大幅な改良を図った。
(倫理面への配慮)
本研究では特に倫理面での配慮の必要性はないと考える。
結果と考察
最初に試作した6疾患に追加して欲しいとされた疾患は、慢性腎不全、慢性心不全、不整脈、狭心症、てんかん、肺炎、肺結核、悪性腫瘍(乳癌)、ウイルス性肝炎、慢性関節リウマチ、パーキンソン病、高脂血症、上気道炎、甲状腺機能障害、排尿障害(前立腺肥大)の15疾患であった。そこで、日常遭遇することの多いこと、疾患の特殊性も考え併せて、慢性腎不全、慢性心不全、不整脈、狭心症、てんかん、肺炎、肺結核、悪性腫瘍(乳癌)、ウイルス性肝炎について薬学的管理事項を充実する疾患として研修用フォーマットを作成することとした。
これらの疾患に対応するエッセンシャルドラッグは22品目を選んだ。これより、全部で15疾患の研修用フォーマットは使用可能となった。
薬局薬剤師用の標準的な薬歴管理簿は、患者基本用紙、薬剤服用歴記録用紙、患者情報用紙、服薬指導内容用紙、エッセンシャルドラッグ毎の確認事項用紙から構成されていたが、アンケート結果を踏まえ患者基本用紙と薬剤服用歴管理指導用紙の2つとした。
エッセンシャルドラッグチェックシートは、薬剤毎に作成することは、使用上繁雑さが増すことを考え、全ての疾患に対応可能な検査値、副作用や相互作用モニタリング項目、禁忌薬の有無、服薬指導項目など重要と思われる薬学的管理チェックシートに改めた。
今年度は、11年度の研究結果を第60回国際薬学年会(2000年8月25日~9月1日:ウィーン)で発表する機会を得た。薬局薬剤師と病院薬剤師の連携を図る研修用教材開発は必要であり、その意味からも提示した研修用フォーマットは薬剤師の資質向上に役立つものであると、各国薬剤師から高い評価が得られた。
肺結核や乳癌など特殊性の高い疾患も加えた9疾患を増やしたことで、研修用としてのバリエーションが見られるようになった。これにより、実務に従事している薬剤師のみならず、薬学生の教育教材としても使用できると考える。
薬局用の薬歴管理簿の標準化は、日本薬剤師会でも検討されていると聞くが、本研究班で考案した薬歴管理簿が有用との評価を受けたことは、薬歴管理の一元化に向けて良い提案が出来たと考える。
本研究では、全15疾患についての研修用フォーマットを作成したが、疾患数はまだ不足している。
薬剤師が必要とした疾患のうち残っている、慢性関節リウマチ、パーキンソン病、高脂血症、上気道炎、甲状腺機能障害、排尿障害(前立腺肥大)についても今後、今回研究班で作成した研修用フォーマットを基盤とした研修教材が開発されること願うものである。
結論
薬剤管理、服薬指導などを通しての医薬品適正使用に必要な薬剤師の知識についての研修上必要なフォーマットを作成した。病院薬剤師と薬局薬剤師が一貫性のある服薬指導を行えることになり、患者は安全性の高い薬物治療を受けられるようになると確信する。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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