血液製剤の需要動向の地域間及び医療機関間格差に関する研究

文献情報

文献番号
200000812A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤の需要動向の地域間及び医療機関間格差に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
高野 正義(財団法人血液製剤調査機構専務理事)
研究分担者(所属機関)
  • 船本剛朗(財団法人血液製剤調査機構)
  • 七川博一(同)
  • 鴨 愼一(同)
  • 沼田 芳彰(日本赤十字社)
  • 木村和弘(同)
  • 郡司篤晃(聖学院大学)
  • 三浦宜彦(埼玉県立大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤の国内自給を達成し、その安全性を確保するためには、血液製剤の適正使用を推進するとともに、適切な需要予測を行い、献血によって効率的に血液を確保するための対策が必要である。
従来の研究から、わが国における血液製剤の需要には大きな地域間格差が存在することが明らかにされている。しかし、その原因については解明されておらず、血液製剤の需要予測や適正使用を推進する上で大きな障害となっている。この地域間格差を生む直接的要因は各地域にある医療機関の血液製剤使用量の差異であると考えられる。しかし従来、全国的な規模において医療機関レベルの使用量を明確にして比較検討した研究はない。
そこで本研究では、日本赤十字社の協力を得て、全国の各医療機関毎の輸血用血液製剤の供給状況を精査し、その病床数や診療科目等を考慮した上で血液製剤使用量の医療機関間格差の実態を明らかにすることを目的とした。また、国民健康保険(国保)における全国都道府県の診療報酬明細書(レセプト)データを情報源したデータベースを用い、血液製剤の使用と原疾患との関連を検討することによって、こうした地域間格差・医療機関間格差の背景としての医療側要因を解明することを試みた。
研究方法
1.データベースの構築
今年度は、前年度に構築した平成8~10年の医療機関別輸血用血液製剤(全血製剤、赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤)の供給量データベースに新たに平成11,12年の供給量を収集し、追加した。
2.都道府県別血液製剤供給量地図の作成
1.のデータベースを使用して、年次別輸血用血液製剤(全血製剤、赤血球製剤、血漿製剤、血小板製剤)供給量を都道府県別に集計し、厚生省の医療施設調査(平成8~12年)の都道府県別一般病床数を用いて病床1,000当たり供給量を算出し、地域差を検討するため地図を作成した。
(2)階級区分と色分け
地図を作製するための階級区分は、供給量および比をいずれも5階級に区分した。区分の方法は地図上に各色相がほぼ同数表現されるように、多いものから順に、各階級が20%の地域になるように区分した。すなわち、 47都道府県を使用量の多い方から9または10ずつに分けて区分した。色相は多いものから、赤、橙、黄、緑、青で表した。
また、全国の国民健康保険の各県ごとの入院約5,000件、合計約224,000件の診療報酬明細書のデータベースを用いて、血液製剤がどのような疾患に多用されているかを明らかにする。また、血液製剤が多用されている疾患に注目して、その使用量の地域差を求め、製剤ごとの地域差の大きさを比較する。また、地域差の大きな製剤と小さな製剤で、その地域差が何によって説明されるかを比較検討する。本年度は、特定の疾患、一件あたり医療費の地域差を、血液製剤の使用がどれだけ説明するかを検討した。
結果と考察
前回作成した平成8~10年の医療機関別輸血用製剤供給量データベースに平成11,12年分を追加して、年次・都道府県別にみた輸血用製剤の供給量を検討した結果、平成10年には照射血への移行が認められた.これは,平成10年6月に照射人全血液CPD「日赤」,照射赤血球M・A・P「日赤」,照射濃厚血小板「日赤」および照射濃厚血小板HLA「日赤」が,同年12月に照射洗浄赤血球「日赤」,照射白血球除去赤血球「日赤」,照射解凍赤血球濃厚液「日赤」および照射合成血「日赤」が,それぞれ供給開始されたことによるのであるが,安全性の点で好ましい傾向と考える。
全血製剤,赤血球製剤,血漿製剤,血小板製剤の供給量を都道府県別にみると,地域格差が認められ,赤血球製剤,血漿製剤および血小板製剤間には人口1,000当たりないし病床1,000当たり供給量とも約0.5の相関が認められたことから,輸血用血液製剤を多く使用するところではいずれの製剤も多いことが推察される。
輸血用血液製剤と患者調査の傷病大分類別入院受療率との相関分析では,全血製剤を除いて概ね正の相関関係を示したことから,入院患者の多い都道府県で輸血用血液製剤が多く使用されているものと考えられる。
民力指標との関係の検討からは,輸血用血液製剤の病床1,000当り供給量は,全血製剤を除くと,国税,地方税,教育費,新聞,テレビ,電話などと正の関係が認められた。
国民健康保険の診療報酬明細書のデータベースより血液製剤の種類及び疾患を調べた結果、血液製剤使用例は、使用していない例に比べて、医療費は極めて高く、その高額である医療費には、例えば胃がんの場合では県間で1.8倍の差があった。胃癌に対するアルブミンの使用量を例に取ると、最低の岩手県と比較して、三重、愛媛、北海道では数十倍の開きがあった。
結論
日本赤十字の協力を得て作成した平成8年~12年の輸血用血液製剤供給量データベースによって,輸血用製剤別人口1,000対供給量を都道府県別に算出し,その分布を検討して地域差を明らかにした。さらにその要因について,傷病受療率,民力指標との関係を検討し,傷病種類によって輸血用血液製剤の使用量が異なること,および患者当りの使用量は民力指標で示される「民度」によって異なることが明らかとなった。
国民健康保険の診療報酬明細書のデータベースより血液製剤の種類及び疾患を調べた結果、疾患の請求金額の県間格差は、血液製剤の使用量の差で、かなりの部分が説明される。つまり、血液製剤の使用量が多いと、医療費が高額となっている。

公開日・更新日

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