地域における医薬品試験等のネットワーク化に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000807A
報告書区分
総括
研究課題名
地域における医薬品試験等のネットワーク化に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
石橋 無味雄(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 中田琴子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 中野道晴(北海道立衛生研究所)
  • 谷本剛(国立医薬品食品衛生研究所大阪支所)
  • 鹿庭なほ子(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 沢辺善之(大阪府立公衆衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国立医薬品食品衛生研究所(国立衛研)をキーステーションとし、医薬品の試験検査の情報等に関する双方向性情報交換ネットワークを薬事に関連する国立研究機関(国)と地方衛生研究所等(地域)、また地域と地域との間に構築するための研究を行い、「衛研薬事ネットワーク」を構築する。 この構築されたネットワークを利用することにより不正不良医薬品の市場からの迅速な排除、また医薬品の品質確保をより適切に実施することを可能にし、国民の福祉を向上させることを目的に研究を行う。
研究方法
医薬品の品質に関する情報伝達は、現在、厚生省中心に「縦割りの情報伝達」で行われる。これに「衛研薬事ネットワーク」による「横の情報伝達ネットワーク」を構築し、付加する。次に構築したネットワークの薬事行政等に対する有効的な運用方法を検討するための研究をハード面及びソフト面の両面から分担して研究を行い、薬事行政関連の情報の流れを迅速化し、医薬品の安全性の確保をより確実・迅速に実施できるように検討する。
結果と考察
「衛研薬事ネットワーク」への参加機関及び参加者数は、66機関(大阪支所、感染研村山を含む)、214名となり、地衛研等のうち薬事に関わる仕事を行っている全機関が「衛研薬事ネットワーク」に参加した。 初年度の参加機関が、39機関、参加者が 153名であったことを考えると薬事関係を担当する全機関が参加しているネットワークを構築できた意義は極めて大きく、不正不良医薬品の流通防止に迅速かつ有効に寄与することができる。 この成果は、本ネットワーク及び全国衛生化学協議会年会の薬事部門において「衛研薬事ネットワーク」に関する討議と普及のための啓蒙活動を行い、理解が得られたことによるところが大きい。 また本研究の終了後、本「衛研薬事ネットワーク」は、その重要性と有効性から国立医薬品食品衛生研究所薬品部(小嶋茂雄部長)を中心に運営が継続され、今後も不正不良医薬品の流通防止や医薬品の品質確保に寄与することになっている。
以下に各分担研究者の行った本年度の研究結果を示す。
中田は、ネットワークの構築と運用に関する研究(ハード,ソフト)行い、試験検査結果等の共有化、内部的情報に関する情報交換の機密保持に関する研究を行い、情報交換の活発化、試験情報の充実化、提供情報の編集・整理等に関する有意義な結果を得た。
石橋は、ネットワークの構築について検討を行い薬事関連機関の全てを含む 66機関、214名の「衛研薬事ネットワーク」の構築に成功した。 また「衛研薬事ネットワーク」の有用性について総合的な評価を行った。 その結果、医薬品の試験に関わる情報交換のみではなく、GMP査察に関する技術情報の交換等にも活発に使用され当初予想した以上に「衛研薬事ネットワーク」が広く活用できることが認められた。
中野は、医薬品の試験検査を担当する参加会員間の情報発信を円滑で活発なものとするため、メールパスワードの管理を中心に、セキュリティ保持を目的に研究を行った。 今年度は、北海道衛研と保健所の衛生担当者間にメーリングリストを設定し、電子掲示板等に関するパスワードの変更を例に利用者のセキュリティに対する意識調査を行った。 その結果、交信の活発化、ログイン・パスワードの変更等、セキュリティ管理に関する知見を得ることができ、これを「衛研薬事ネットワーク」運営に反映させた。
谷本らは、ネットワークに提供すべき三つの基本的情報を昨年度研究で提案したが、本年度は、医薬品分析用標準物質に関する情報について、その有効利用について検討し、双方向性情報ネットワークによる情報の有効利用には、当該情報に関する基本的背景認識を情報の発信側と受け手側が共有している状況が必要であり、このための方策を構築する必要性、また発信側は両者間で共有されている背景認識の程度を考慮して情報の加工をすることの必要性を指摘した。
鹿庭は、「衛研薬事ネットワーク」について、その利用のされ方からネットワークの有用度に関する評価を行った。 その結果、メーリングリストは主としてGMP査察や試験法に関する相談、医薬品関連の情報の掲載に関する通知、会員間の連絡に用いられていることが判明した。 このうち、GMP査察や試験法に関する相談に対する回答率が 80%にとどまっている点を指摘しているが、GMP査察等に「衛研薬事ネットワーク」が有効に機能していると報告した。 また会員相互間の意見交換に電子会議室が有意義に機能しているとも指摘している。 これを結果を「衛研薬事ネットワーク」運営に反映させ、よりよい「衛研薬事ネットワーク」を立ち上げることができた。
沢辺は、昨年と同様に薬事法違反の事例をより高い精度で検出する目的へのネットワークの有用性を検討した。 行政試験の迅速化、効率化、正確性をより増加させるため、「薬局方製剤」の不適事例を試験情報ページに公開することにより研究を行い、その結果としてネットワークの有用性を再度確認した。 また「衛研薬事」において取り扱う情報の質及び量の重要性について再度指摘し、このため参加機関の積極的な協力と情報提供が不可欠であると結論した。
結論
「衛研薬事ネットワーク」の有用性について評価した結果、GMP査察に関する技術情報の交換、医薬品試験等に関する情報の共有化、国研から薬局方に収載されている試験方法やその他の公定試験法に関する指導とアドバイス、取締試験に使用する標準品及び標準チャート等の提供、不正不良医薬品の試験の方法に関する情報提供、ネットワークの利用方法等に関するアドバイス及び案内並びに全国衛生化学技術協議会の薬事部門自由集会の延長として利用。 地衛研側から過去の医薬等の試験情報の提供、試験に関する技術情報の提供、保持する試験情報等の提供依頼並びに全国衛生化学技術協議会の薬事部門自由集会の延長として利用。 その他種々の研究情報の入手手段として利用されているとの結果を得た。 また、メイリングリストの有用性を確認し、掲示板の補助的効果を確認した。 これらの結果から国立衛研をキーステーションとし、医薬品の試験検査情報等に関する双方向性情報交換ネットワークを国研(国)と地方衛研等(地域)、また地域と地域との間に構築したことは、不正不良医薬品の市場からの迅速な排除、また医薬品の品質確保と向上をより適切に実施することを可能にし、国民の福祉を向上させることに資することができた。 またGMP査察等に関する情報交換もネットワーク上で行われ、医薬品の製造工程の向上にも寄与できることが認められた。 これらの結果から「衛研薬事ネットワーク」は、研究の終了後も国立医薬品食品衛生研究所薬品部(小嶋茂雄部長)を中心に運営が継続され、不正不良医薬品の流通防止や医薬品の品質確保に寄与することとなった。

公開日・更新日

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