in vitro試験法を用いた化粧品の安全性評価法及びその国際的ハーモナイゼーションに関する研究

文献情報

文献番号
200000792A
報告書区分
総括
研究課題名
in vitro試験法を用いた化粧品の安全性評価法及びその国際的ハーモナイゼーションに関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
大野 泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 高松 翼(日本化粧品工業連合会)
  • 田中憲穂(食品薬品安全センター)
  • 森本雍憲(城西大学薬学部)
  • 安藤正典(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
欧米の代替法の行政的受け入れに関する情報の収集およびOECDやEUで検討の進んでいる動物実験代替法について調査するとともに、文献的、実験的に検討することにより,その妥当性や問題点について検討する。具体的には皮膚光毒性試験及び皮膚吸収性試験のOECD案について実験的に検討した。
研究方法
情報収集はいくつかのホームページを定期的に監視することで行うと同時にEUおよび米国の化粧品工業会(COLIPAおよびCTFA)との連繋を通じて実施した。OECDの動物実験代替法に関係するガイドライン案については、日本トキシコロジー学会、日本化粧品工業会、日本化学工業協会、日本製薬工業協会等に意見を求め、得られたコメントについて検討し、まとめてOECDに送った。代替法についての実験的検討においては、in vitro皮膚吸収試験は96年のOECDガイドライン案に従って、モデル物質について試験を実施し、問題点を検討した。in vitro光毒性試験についてもOECDガイドライン案に従い、BALB 3T3 A31-1-1 (BALB 3T3)、VERO、V79、およびCHL細胞を用いた。光照射は太陽光の波長に近いメタルハライドランプのSOL500(Dr. H_nle 社)に UVB をカットする H1 フィルターを装着して行った。
結果と考察
EUでは皮膚腐食性試験のEPISKIN法及びRAT SKIN TRANSCUTANEOUS ELECTRICAL RESISTANCE (TER) 法、また光毒性試験の3T3 NRU PT 法がECVAMのScientific Advisory Committee (ESAC)によって科学的に確立された代替試験法として認められ、近々当局から通知される予定である。一方、化粧品の動物実験を全面禁止するとする規制がCommission Directive 2000/41/ECで2002年6月30日まで再度延期された。また、EU化粧品指令第7次改正(案)が平成12年10月31日公布された。米国では改良up and down法に関するpeer review会合が開催され、その議事録によればLD50値の推定においてOECD TG401法より優れているとの結論を出している。
2001年4月1日より施行される化粧品規制緩和に向けて「化粧品安全性評価指針」を発行した。OECDの皮膚腐食性試験、in vitro光毒性試験、及び皮膚吸収性試験ガイドライン案について検討し、コメントをまとめてOECDに送付した。
OECDのin vitro経皮吸収試験法ガイドライン(案)で提示すべきデータとされている皮膚integrity及び物質収支に関して、防腐剤の一種であるパラベン類、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノンを用いて評価し、皮膚integrityを確認する上で経皮的水分損失量(TEWL)の測定が有用であることが示唆された。物質収支に関しては皮膚中で代謝される物質は代謝物を含めた物質収支の評価が必要であることが示された。また、OECDガイドライン案に基づきレゾルシンおよび4-クロロ-m-クレゾールの経皮吸収試験を実施した。レゾルシンの場合化粧水や乳液に添加したとき透過速度は増加したが、4-クロロ-m-クレゾールの場合は半分以下に低下し、乳液に添加した場合、24時間後でもreceptor側に透過しないことがあることが観察された。細胞を用いる光毒性試験において試験結果へ及ぼす光源から照射面までの距離、照射位置の差、ウェル間の差など、光源の照射ムラに起因する問題、また、細胞種や細胞毒性試験法による感度の差、等について検討し、OECDガイドライン案に示すプロトコールでもほぼ安定な結果が得られる事を確認した。
2) OECD皮膚腐食性試験及び光毒性試験ガイドライン案への対応
光毒性試験ガイドライン案(2000年2月)及び皮膚腐食性試験ガイドライン案(2000年2月)については各界のコメントを収集し、それらを整理・評価しコメントOECDに送付した(それぞれ2000,7,13及び2000,5,15)。12月にOECDから通知された皮膚吸収性試験ガイドライン改訂案(2000年12月)については研究班で検討し、コメントを作成し、送付した(2001,4,14)。コメントの内容は大野の分担報告書を参照されたい。
欧米では代替法開発、そしてそれらのValidationにおいて中心的役割を担う機関が確立し(ECVAM、ICCVAM)、かつOECDの検討状況も活性化してきた現状では、従来のような継続的ではあるが、断片的な情報収集、そして重要な課題への注目と対処から構成される体制にもやや限界が見えてきた。また、欧米で評価されたものを無批判に導入することはその適正な利用・評価についての情報を得る面においても好ましくない。その意味で欧米各国に見られる恒久的な代替法に関する検討母体の必要性が提起されよう。
OECDガイドライン(案)に記載された皮膚integrityを評価する上で、TEWLの測定が有用であることが示唆された。また、皮膚中で代謝される物質の物質収支については代謝物も含めて検討する必要がある。
OECDガイドライン(案)に記載された何項目かを満たさない方法での実験であるが、今回実施したin vitro経皮吸収実験で一応の傾向を掴むことができた。即ち、レゾルシン溶液では化粧水および乳液中の賦形剤がレゾルシンの皮膚透過に増強的に作用し、レゾルシンの皮膚透過が亢進することが示唆された。化粧水中の賦形剤は4-クロロ-m-クレゾールのdonor側のvehicleへの溶解性を増加し、その結果として、皮膚角質層への4-クロロ-m-クレゾールの自然拡散が減少した結果によることが示唆された。乳液の場合はcontrolの場合に比べてFluxおよびLag timeが大きく変化しており、乳液中の賦形剤が4-クロロ-m-クレゾールのvehicleへの溶解性を変化させ、更に、皮膚角質層への形態に変化を与え、その結果として、4-クロロ-m-クレゾールの皮膚透過およびLag timeが大きく変化することが示唆された。
メタルハライドランプの光源下では、照射面の部位によりかなりの照度ムラがあるが、プレート中心の4ウェルを1濃度として試験を行う場合、実用上殆ど問題にならなかった。同一の照射強度での実験では、光源から照射面までの距離は揃えた方が安定した結果が得られる事が分った。クロルプロマジンを用いて各種細胞による光毒性の比較を行ったところ、細胞間における光毒性のIC50値は大きな差が見られなかったが、光毒性の指標となる PIF 値は細胞種によって若干差が見られた。光コロニー試験では、全ての細胞において感度よく検出でき、光照射下でのIC50値はNRU PT法に比べ1/2から1/10を示した。播種細胞数が少ないため不安定な面もあったが、RRU PT 法より鋭敏に細胞毒性を感知するので、光に対して弱い反応性を示すような物質を検出するには有効な系であると考えられた。
結論
EUにおける化粧品の動物実験全面禁止が2002年6月30日まで再度延期された。また、in vitroの皮膚腐食性試験のEPISKIN法及びTER法、光毒性試験の3T3 NRU PT 法がECVAMによって科学的に確立された代替試験法として認められた。米国では改良up and down法がOECD TG401法より優れているとPeer Review会合で評価された。実験動物の福祉と代替法の国際的ハーモナイゼーションを目指した国際会議が今年の6月にカナダで開催される。OECDの光毒性試験、皮膚腐食性試験、及び皮膚吸収性試験について日本側のコメントをとりまとめOECDに送付した。現在OECDのガイドライン案としてあがっているin vitro皮膚吸収性試験及び光細胞毒性試験法は、RIの使用や光照射量のバラツキなど幾つかの問題点はあるものの簡便で精度の高い代替法と思われた。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)