医薬品等国際ハーモナイゼーション促進に関する研究

文献情報

文献番号
200000791A
報告書区分
総括
研究課題名
医薬品等国際ハーモナイゼーション促進に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
上田 慶二(東京都多摩老人医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 小嶋茂雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 黒川雄二(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 開原成允((財)医療情報システム開発センター)
  • 首藤紘一(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 青柳伸男(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 棚本憲一(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 吉岡澄江(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 武田寧((財)日本公定書協会)
  • 三森国敏(東京農工大学)
  • 林真(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 大野泰雄(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 藤森観之助(医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構)
  • 辻本豪三(国立小児病院)
  • 福原俊一(京都大学大学院)
  • 長澤俊彦(杏林大学)
  • 石井當男(横浜船員保険病院)
  • 高田幸一(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 高仲正(医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構)
  • 岡田美保子(川崎医療福祉大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 医薬安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
46,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新医薬品の承認申請資料の国際的ハーモナイゼーションを推進するに当たり、日、米、EU3極間の承認申請資料の相互受け入れの阻害要因となっている医薬品規制の問題点を明らかにし、それらを科学的裏付けのもとに取り除くため国内における独自の研究と国際的研究を実施した。また承認申請の様式、添付資料などをハーモナイズし、申請資料の共通化を目的として、コモン テクニカル ドキュメント(CTD)の国際的研究を実施した。
研究方法
研究班をICHに準じ、品質、安全性、有効性、ならびにCTDの4部会に区分し、それぞれの分担研究者が所属する研究協力者とともに研究課題ごとに研究体制を組織して研究を実施した。また一部の課題については一定の計画のもとに国際的共同研究が実施された。その他、データベースや文献検索、アンケート調査、提案された国際的ガイドライン案などについての検討など多くの研究方法が採用された。日、米、EC3極間の情報交換はICH運営委員会、専門家会議において、あるいは書状や電子メールなどを介して適切に行われた。
結果と考察
1)品質に関する研究 ①原薬および製剤の不純物ガイドライン この改定作業のための検討が続けられた。解決すべき問題点として、通常の数値のまとめ方(0.1%を巡る記載)の問題、その他の不純物の一般的な限度値に関する問題、試験結果の報告に関する問題などが挙げられている。②薬局方 3極の薬局方については、薬局方検討会議(PDG)を組織して討議を重ねており、含量均一性試験法、溶出試験法などの重要な5試験法について3極間で合意が得られた。③質量偏差試験の運用基準に関する研究 ICH Q6A専門家会議では質量偏差試験の適用について規定しているが、今回市販製剤を用いて本試験法の妥当性について検討した。④微生物限度試験法の国際調和 本試験法の国際調和に向けて検討を重ね、非無菌医薬品の微生物限度値とその許容範囲ならびに排除すべき特定微生物について合意に達することができた。⑤安定性試験のデータ評価における統計解析の国際調和に関する研究 今回分散分析法の有用性と限界を検討し、また新しい方法として有限期間の推定値の範囲に基づいて安定性の同等性を評価する方法を考案し、その有用性を分散分析法と比較検討してその成績を示した。⑥「ICHガイドラインと関連情報」のページの構築 本年度にはICH会議の開催に関する情報の記載、ガイドラインの策定や改定に伴うファイルの更新、追加掲載などを実施した。2)非臨床試験(安全性)に関する研究 ①遺伝子改変マウスを用いた短期発癌性試験に関する研究 遺伝子改変動物を用いた短期癌原性試験のバリデーション研究に関する最新情報を収集して解析するとともに、国立医薬品食品衛生研究所病理部において実施されたP53+/?マウスを用いたphenolphthaleinについての研究成績をまとめ、その有用性と問題点について検討した結果、短期発癌試験モデルを用いて発癌性を評価する場
合には、使用する系統や遺伝子操作などの違いを十分考慮すべきことが示唆された。②In vitro染色体異常試験の代替としてのin vitro小核試験の評価 In vitro試験系において、化学物質の染色体異常誘発性を評価するために最適の試験条件を確定するための基礎データの収集を行った。③一般/安全薬理試験ガイドラインのハーモナイゼーション推進のための研究 日本の一般薬理ガイドラインに対するICH各極の反応を基礎に国際的に受け入れうるガイドライン案を作成して討議し、安全性薬理試験ガイドライン」をstep 2よりstep 4として成立させた。④2週間の反復投与毒性試験による雄性生殖器への影響評価の可否に関する研究 雄性生殖器への毒性影響の有無を評価するための投与期間が2週間でよいとするバリデーションの結果が得られたので、この成績を論文として発表し、ICH-S5BおよびICH-M3ガイドラインの変更案を作成した。3)有効性に関する研究 本年度には以下の5項目に関する研究を行った。①小児の治験のためのガイドライン このガイドラインは2000年11月の専門家会議と運営委員会において各極の合意を得て、step 4に達しガイドラインの完成をみた。今回小児の臨床試験の枠組みについて国際調和が得られたことにより、国際的な小児の医薬品の開発促進が期待されている。②臨床試験におけるQOL指標の使用の動向について 臨床試験におけるQOL指標の使用状況を日本と欧米の文献についてMEDLINEを用いて調査した。③対照群選定のガイドラインが我が国の臨床試験に与える影響 「比較・検証試験における対照群の選定」に関するガイドラインは4年間の討議を経て、2000年7月に3極の同意に基づいてstep 4に達した。④降圧薬の国際的臨床評価ガイドライン作成の研究 3極のガイドラインに共通する降圧薬の臨床評価に関する必要事項をdocumentとしてまとめ、2000年3月にICH運営委員会においてConsensus Draft Step 2として承認された。⑤個別症例安全性報告仕様とCTDアーキテクチャ E2Bガイドラインに基づく症例安全性報告の電子的伝送についてICSRDTD Version 2.0が開発された。またCTDに対する電子的支援に関しての検討も行い、これに基づいてCTDの概念が定められた。4)コモン テクニカル ドキュメント(CTD) 本部門の研究においては、申請資料の共通部門について出来るだけ多くの部門をハーモナイズするという方針で作業が進められており、平成12年7月と平成12年11月に開催された専門家会議においての検討を経て品質に関する(Overall Summary)、安全性及び有効性に関する(Overview)、さらに安全性に関する概要(概要文 Written Summary)、概括表(Tabulated Summary)、有効性に関する概要など全ての項目について合意に達し、step 4となった。
結論
品質、安全性、有効性ならびにCTDの部門の多くの課題について研究が重ねられ、我が国における研究成果に基づき日、米、EU3極のハーモナイゼーションが得られて、国内の規制への変換が図られている。今後これらの規制の実施状況とその問題点を注意して観察し、円滑なICHガイドラインの国内導入に努力すべきであろう。

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