脱臭機、空気清浄機、コピー機からのオゾン発生機構に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000767A
報告書区分
総括
研究課題名
脱臭機、空気清浄機、コピー機からのオゾン発生機構に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
野﨑 淳夫(東北文化学園大学)
研究分担者(所属機関)
  • 無し
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
6,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
近年、建材や接着剤、室内に持ち込まれた日用品や生活用品(家具、開放型燃焼器具等)、生理現象(排泄臭、体臭、呼気)から室内に放出されるホルムアルデヒド、揮発性有機化合物(VOC)、炭化水素(HC)、アンモニアなどの室内ガス状物質汚染が社会的に注目されている。特に、病院、老人ホーム等においては、屎尿処理に起因した臭気汚染がクローズアップされている。
この様な社会的背景により、脱臭を目的としたオゾン発生装置、静電型空気清浄機などの設備機器が普及段階にあり、結果的に室内へオゾンを放出している。
事務室では、汚染発生源となりうる事務機器(コピー機、レーザープリンタ等)が用いられており、既にオゾンガス汚染が指摘されている。住宅、医療、社会福祉施設内では、消臭・殺菌装置が使用されている。このうち、高電圧や紫外線を利用したものは、有害なオゾンガスを発生しうる。また、オゾンガスは、執務者、居住者、要介護者等に軽視できぬ健康影響を与えるとの報告もある。
医学的には、オゾンの人体曝露により、呼吸器の機能低下、めまい、頭痛、倦怠感等の諸症状の発生が明らかにされている。
室内では、光化学反応を生じさせるほどの紫外線量は無く、オゾンが発生することは、稀である。オゾンを発生しうる室内発生源は、コロナ放電を利用した静電型空気清浄機やコピー機、プリンター、脱臭装置などである。20年ほど前に、Allen、Sutton、Selwayらは、空気清浄機とコピー機の発生量を求めている、国内では、野﨑らが社会福祉施設におけるオゾン濃度の実測を行っている。対象施設には、オゾン脱臭機器やオゾン発生設備があり、測定した室内濃度は外気濃度を上回る事を報告している。また、房家らは、静電式家庭用空気清浄機の発生量を求めている。
しかしながら、これらの報告を用いて、室内濃度を正しく予測し、効果的な室内汚染防止対策を講ずることは極めて困難な状況にある。特に、コピー機に関しては、近年の機種におけるオゾン発生量に関する報告が無く、脱臭装置に関する報告も見当たらない。また、温度、湿度、気流などの室内環境条件が、器具のオゾン発生量・特性に与える影響も不明である。さらに、脱臭性能が表記されている器具に対しては、その具体的な室内における脱臭効果とその限界が不明である。
そこで、本研究では、1)各種オゾン発生源の発生量を定量的に把握し、次に、2)脱臭装置における室内臭気物質の濃度低減効果とその限界を実験的に明らかにし、3)建築環境工学、建築衛生学的観点から室内オゾン汚染の防止対策を講ずることを目的とする。
結果として、・適確なオゾンの室内濃度予測法が実現され、・個人曝露量の推定が可能となる。
具体的には、
1)各種発生源の発生量・発生特性の解明が行われる。
2)最後に、本研究により実験的に得られた発生量や発生特性と、室内濃度構成メカニズムを解明することにより、正確な室内濃度予測法が実現する。そして、正しい濃度予測値に基づいた工学的汚染防止対策(例えば、換気システムの構築、必要換気量の決定、適切な器具使用法、器具排出量の許容量等)が提案できる。
研究方法
a.オゾン発生実験
オゾン発生量を求める実験は、換気回数が制御でき、オゾンや臭気物質の吸収・吸着の抑制された実験室で行う必要がある。そこで、本実験においては、この様な条件を満たしたステンレス製のチャンバーを用いた実験システムを構築した。本チャンバーは、任意の換気量が得られる機械換気装置を有したもので、4.977m3(1.8m×1.8m×1.6m)の気積を有している。チャンバーには試料ガスを採取するため、サンプリング孔が設けられており、これを用いて試料ガスの採取を行った。また、発生源であるコピー機は、チャンバー内に設置されており、一定の換気量のもとに実験が行われた。
尚、チャンバー内には一様拡状態を得るために拡散ファンを設置し、オゾン濃度が均一になるようにした。この状態でトレーサーガスを用いて、換気率を測定したところ、目的値と同等の値が得られた。
b.オゾン利用機器の汚染物質の除去実験 
生成するオゾンによるVOC等の汚染物質除去に関する実験を行った。実験チャンバーは、任意の換気量が得られる機械換気装置を有したもので、0.528m3(1.1m×0.8m×0.6m)の気積を有している。試料ガスの採取は、発生量を求める実験と同様である。汚染ガスの発生は、チャンバー内にボンベに充填られた汚染ガスをマスフローコントローラを用いて導入し、一定の換気量のもとに実験が行われた。
尚、チャンバー内には一様拡散のためのファンを設置し、オゾン及び汚染物質濃度が均一になるようにした。この状態でトレーサーガスを使用して換気率を測定したところ、目的値と同等の値が得られた。
結果と考察
コピー機の使用に伴う室内オゾン濃度上昇特性を求める実験では、モノクロコピー機4台とカラーコピー機1台を測定対象とした。機器の使用に伴い、オゾン濃度の明らかな上昇が認められた。また、コピー機の印字密度が大きいほど、初期発生が大きいことが観察された。
同様にレーザープリンタの実験では、モノクロのレーザープリンタ3台とカラーのレーザープリンタ1台を測定対象とした。コピー機の場合と同様に、機器の使用に伴い室内濃度の上昇が認められた。ただし、コピー機の濃度上昇に比較して、上昇値の巾は小さかった。
既往の研究例との比較検討を行った。例えば、コピー機については、Allen、selwayらは、1コピー(5枚)当たり0.021mlのオゾンが発生したことを報告している。本研究による実測例では、5枚の印刷で、0.002mlのオゾン発生が認められた。これはAllenらの値の約1/10であり、コピー機からのオゾン発生を抑制技術の進歩に伴い、この様な低減を示したものと考えられる。
また、脱臭機の使用に伴う室内オゾン濃度上昇特性を求める実験を行った。2台の脱臭機を測定対象とした。コピー機、レーザープリンタの場合と同様に、器具(脱臭機)の使用に伴う明確な濃度上昇が観察された。また、この時の測定濃度はコピー機測定時よりも大きな換気量を与えたにもかかわらず、大きな上昇を示した。本実験で用いた脱臭機の発生量は、測定されたコピー機よりも大きい事が示された。
オゾン脱臭機におけるガス状物質除去特性の関して、本実験では、一般の室内における高い検出性から、ベンゼン、トルエン、キシレン類(m,p,o-)、及びp-ジクロロベンゼンの6種の混合ガスをマスフローコントローラを用いて、チェンバー内に導入した。その後の経時減衰について、TenaxGR充填管により試料空気を捕集し、GC/FIDにより分析した。ガスを導入してから、30分間における自然減衰の特性とオゾンを発生させてからの減衰特性には大きな差が無く、実験で対象とした機種においては、オゾンによるガス状物質の分解は認められなかった。尚、本報では、限られた機種のみで低減効果を評価した。今後、より多くのオゾン脱臭機を用いて、オゾンガスによるガス状物質分解の効果とその限界を明らかにする予定である。
結論
本研究では、1)温度、湿度、換気量の制御を行いながら、発生濃度を測定できる実験システムを作製し、2)発生源のオゾン発生方法、定格発生量(カタログ値)、実発生量(実験値)を明らかにした。また、3)各種のガス状臭気物質を実験チェンバー内に放出し、ある環境条件下における空気清浄機や各種脱臭装置の脱臭効果(汚染物質除去率)についての基礎的研究を行った。
今後の研究課題としては、(1)さらなる実験の継続、(2)雰囲気中のオゾン濃度が発生源発生量に及ぼす影響、(3)室内温度・湿度の発生源発生量や発生特性に及ぼす影響等が挙げられる。

公開日・更新日

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