震災時水道施設復旧支援システム開発研究

文献情報

文献番号
200000752A
報告書区分
総括
研究課題名
震災時水道施設復旧支援システム開発研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
藤原 正弘(財団法人水道技術研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
24,250,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本における水道の普及率は96%を超え、生活用水のほとんどを水道に頼っており、衛生的な生活の確保のために欠くことのできない社会基盤施設となっている。このような状況で地震が発生し、水道施設が被災した場合、水道事業体は迅速な応急復旧・応急給水の実施を迫られることになるが、最も効率的かつ効果的な方策の検討手法に関する研究がなされていないのが実情である。このようなことから、本研究では被害予測結果をもとにして、合理的に断水人口を予測し、最も効率的な応急復旧・応急給水の実施計画策定を可能とするシステムの構築を図ると共に、被害探査装置及び被害探査手法の研究を行い、これを統合した復旧支援システムの構築を目的とする。
研究方法
本研究は産学官の共同プロジェクトとして実施し、その実施に当たっては学識者、水道事業体及び民間企業からなる「震災時水道施設復旧支援システム開発研究検討委員会」とそのもとに「幹事会」、「幹事会作業プロジェクト」、「影響度予測システム研究WG」及び「被害探査技術研究WG」」を設置し、種々の審議、検討を重ねながら研究開発を推進しているところである。本研究は平成11年度から平成13年度までの3か年で行い、2年目に当たる本年度は、影響度予測システムの検証、仕様書の作成と、被害を受けた水道管路の効率的な探査・復旧手法について検討し、取りまとめを行った。
結果と考察
1.影響度予測システム研究
1) 管路被害データの収集
兵庫県南部地震の際の神戸市東灘区第2低層地区のデータを収集し、影響度予測システムのパラメータ設定や検証に必要なデータについて分類、整理を行った。
2) 各シミュレーション手法の検証
兵庫県南部地震における被害データの内、神戸市のデータをもとにその背景や素性について分析を行い、影響度予測システムを構成する「断水人口シミュレーション」、「応急復旧シミュレーション」、「応急復旧シミュレーション」の各パラメータを設定し、各手法の検証を行った結果、今回提案した影響度予測システムの活用が可能なことが確認された。
3) 総合指標の検討
影響度予測システムの指標(案)である「断水人口・断水率」、「復旧日数・復旧過程(配水管復旧率)」、「応急給水量」と水需給バランスについて検証を行った。その結果、指標(案)については実績データと概ね整合していることから、システムからの出力は妥当であることが確認された。
4) システム詳細仕様書の作成
検証した影響度予測システムをもとにプロトタイプシステム開発のための仕様書を作成した。具体的には「システム仕様書」、「データベース仕様書」、「画面遷移仕様書」、「計算処理仕様書」を作成し、これをもとに「モジュール関連図」と影響度予測システムの動作概要を明示するための「画面遷移」を作成した。
5)考察
「断水人口シミュレーション」、「応急復旧シミュレーション」、「応急給水シミュレーション」からなる影響度予測システムに関して、その出力やシミュレーション結果について兵庫県南部地震の実績値を用いて比較検証を行った。全般的にはシステムからの出力結果と実績値は概ね整合しており、実績値の傾向はこのシステムの中で表現されていると考えられる。影響度予測システムは水道事業体において震災施策の検討などに利用することを想定しており、結果が正確に出力されることよりもむしろ水道施設や住民が受ける影響を総合的に判断できるための情報が得られるシステムであることが重要である。次年度は施設や住民が受ける影響を総合的に判断するための影響度指標についてさらに検討を進めると共に、システム利用者が整備すべきデータについても検討する。
2.被害探査技術研究
1) 効率的被害探査技術の検討
効率的な探査手法や新しい探査技術の効果を試算するためには、現状の漏水探査装置と新しい探査装置を震災時に使った場合にどの程度、時間や労力に差が出るのか比較するための基礎データが必要となる。また、震災時の水道施設の復旧の基本は、上流から下流に向けた復旧計画にあるが、まだ通水が完了していない空管状態の下流部の管路の復旧作業と、上流部の管路の復旧作業が同時並行して進められれば、水道施設全体としての復旧作業の効率化が期待できる。前年度に実施した平常時・異常時の漏水探査技術の調査研究結果をふまえて、今年度から金沢市の水道施設データをモデルとし、被害を受けた水道管路の効率的な探査・復旧手法に関するケーススタディについて検討を開始した。今年度はケーススタディの基礎データを整備するため、金沢市の水道施設概要図及び配水管路図から配水本管の管網解析モデルを作成し、さらに地震時の被害予測データから被害想定図を作成した。また、効率的な幹線の探査復旧手順について、その計画の検討を行い、ケーススタディの基本条件を設定した。
2) 音響法による新探査技術の研究
前年度に実施した水中音響特性確認の基礎実験、及び破断反射波確認シミュレーションの成果をふまえて、音響法による通水状態での被害探査アルゴリズムの検討、フィールドでの適用実験を実施した。実験結果をふまえて、周波数領域での漏水反射音波の伝播時間算出、漏水位置特定の検証を完了した。また性能向上に関する検討も合わせて行い、プロトタイプ開発の基本となる、アルゴリズムの開発を完了した。
3)音圧法による新探査技術の研究
前年度の音圧・水圧圧力波による漏水監視手法の検討をふまえて、音圧法による漏水判定の基礎実験、漏水判定基準の検討、漏水位置検知実験を行った。漏水の判定方法としては測定器を常時設置する常時監視と震災後に探査する2つの場合が考えられるが、今年度は常時監視については検討を行わず、震災後(漏水発生後)の探査における漏水判定方法として音圧値及び音圧分布幅を用いた手法について検討を行った。また、実験結果に基づいた試作機器の検討と設計を完了した。
4)考察
被害探査については従来技術、新技術両方の探査技術を用いた効率的な探査・復旧手法について検討を進めるため、今年度は金沢市の水道施設を例にケーススタディを行うための基本条件の設定を行った。次年度はこれまでの探査技術や上流側から下流側へ向けた手法で震後施設を復旧した場合と新しい探査技術を利用して上流下流の両方から復旧を進めた場合の効率を定量的に評価する。また、音響法及び音圧法を用いた新探査技術の研究については、今年度までに実験確認した結果をもとに試作機を製作し、実際のフィールドで機能確認を行い、問題点の抽出及び改良を行う。
結論
影響度予測システムについては兵庫県南部地震における被害データの内、神戸市のデータをもとにシステムの検証を行った結果、このシステムの活用が可能であることが確認された。また、検証した影響度予測システムをもとにプロトタイプシステムの仕様書を作成すると共に各モジュールの関連についても整理を完了した。被害探査技術研究については、金沢市の水道施設データをモデルとした効率的な被害探査手法に関するケーススタディについて検討を開始した。今年度はケーススタディの基礎データを整備するため、管網解析モデルと被害想定図を作成した。また、効率的な幹線の探査復旧手順について検討を行い、ケーススタディの基本条件を設定した。音響法については通水状態での被害探査アルゴリズムの検討とフィールドでの適用実験を実施し、周波数領域での漏水反射音波の伝播時間算出、漏水位置特定の検証、プロトタイプ開発の基本となるアルゴリズムの開発を完了した。音圧法については漏水判定のための基礎実験を実施し、音圧値及び音圧分布幅を用いた手法について検討を行い、この結果に基づいた試作機の設計を完了した。次年度はこれらの成果をもとに影響度予測システムについてプロトタイプシステムを作成し、システム全体の評価を行うと共に、探査技術についてはリアルタイム情報に基づいた探査・復旧手法の確立と音響法、音圧法を用いた新探査技術の確立に向け、研究を進める。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-