畜水産食品中の化学物質残留防止対策に関する研究

文献情報

文献番号
200000712A
報告書区分
総括
研究課題名
畜水産食品中の化学物質残留防止対策に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
三森 国敏(東京農工大学)
研究分担者(所属機関)
  • 豊田正武(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
12,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
α2アドレナリン受容体刺激剤キシラジン(XZ)の甲状腺発癌プロモーション作用における閾値およびN-bis(2-hydroxypropyl)nitrosamine(DHPN)でイニシエーション処置後DMA投与により誘発される鼻腔腫瘍が全てボウマン腺に由来するか否かをを明らかにすることを目的として2つの実験を行った。
遺伝毒性発癌物質の検出に非常に感受性が高いことが示されているp53癌抑制遺伝子の片側のアレルが欠損したC57BLマウス(p53KOマウス)を用いてこのマウスがDMAに対して発癌感受性を示すか否かを検討した。
抗生物質のチルミコシン、寄生虫用剤のエプリノメクチン及びレバミゾールについて残留検査法を検討した。
研究方法
実験Ⅰ:雄F344ラットの半数に2400 mg/kgのジイソプロパノールニトロソアミン(DHPN)を単回皮下投与し、残りの動物には生理食塩水を同様に投与した。投与1週目にこれらの動物をさらに4群に分け、XZ1000、500、250ないし0ppm 混餌飼料を26週間自由に摂取させた。実験Ⅱ:DHPN処置後ジメチルアニリン(DMA)投与により誘発される鼻腔増殖性病変の病理発生を明らかにするため、雄F344ラット50匹に2400 mg/kgのDHPNを単回皮下投与し、1週目にこれらの動物を2群に分け、一方にDMA 3000ppm 混餌飼料、他方に基礎飼料を52週間自由に摂取させた。実験Ⅲ:癌抑制遺伝子のp53をノックアウト(KO)したp53KOあるいはwildマウスをそれぞれ3群に分け、DMA 3000、1500 あるいは0ppm 混餌飼料を26週間自由に摂取させた。
エプリノメクチンの検査法は、イベルメクチン及びモキシデクチン試験法に準じて、高速液体クロマトグラフィーによる検査法を検討した。チルミコシンの検査法は、スピラマイシン試験法に準じて、高速液体クロマトグラフィーによる検査法を検討した。レバミゾールの検査法は、塩基性条件下抽出、陽イオン交換体ミニカラムによる精製後、高速液体クロマトグラフィーによる検査法を検討した。
結果と考察
実験Ⅰ: 500ppm以上のXZ投与群で甲状腺濾胞上皮細胞の肥大が認められ、DHPN+XZ 500群では発生率において、DHPN+XZ 1000群では発生率ならびに発生個数において濾胞上皮の過形成が有意に増加すると共に、これらの群では腺腫も誘発され、XZの甲状腺発癌プロモーション作用における閾値は250ppm(14.6±6.2mg/kg/day)と推察された。実験Ⅱ: DMA投与により誘発されたボウマン腺の増殖巣あるいは腺様過形成、嗅上皮粘膜下に認められた異形成巣、また、腺腫を構成する細胞はサイトケラチン抗体に対し陽性を示し、超微形態学的には、腫瘍細胞質内にボウマン腺細胞質内に観察される分泌顆粒に類似した構造物が認められたことから、DMAにより誘発される増殖性病変は嗅上皮粘膜を構成するボウマン腺に由来する可能性が強く示唆された。実験Ⅲ: p53KOマウスにDMAを26週間混餌投与したが、何等発癌性は認められなかった。
エプリノメクチンの定量下限は0.005ppmであった。添加回収試験の結果は平均回収率92%以上、相対標準偏差はいずれの試料も5%以内であった。チルミコシンの定量下限は、肉、脂肪、肝臓でそれぞれ0.05ppm、乳で0.02ppmであった。添加回収試験の結果は平均回収率90%以上、相対標準偏差はいずれの試料も5%以内であった。レバミゾールの定量下限は0.01ppmであった。添加回収試験の結果は平均回収率78%以上、相対標準偏差はいずれの試料も6%以内であった。本研究で確立した残留検査法は、5試験研究機関による標準化の結果、畜水産食品中の残留動物用医薬品の検査法として実用に適すると評価された。
結論
XZの甲状腺発癌プロモーション作用における閾値およびその代謝物であるDMAの鼻腔発癌の病理発生ならびに短期発癌試験動物モデルとしてp53KOマウスを用いてDMAの鼻腔腫瘍誘発の有無の検討を行った。その結果、XZの甲状腺発癌プロモーション作用における閾値は250ppm(14.6±6.2mg/kg/day)と推測され、DMAにより誘発される多くの増殖性病変はボウマン腺に由来する可能性が強く示唆された。一方、p53KOマウスにおいてDMA投与による腫瘍の誘発は認められなかった。
エプリノメクチン、チルミコシン、レバミゾールの残留検査法を確立した。今回確立した各方法の精度は、コーデックス委員会の検査法評価基準に適合している。また、操作、設備等の面でも、現在の各種検査機関において容易に実施、導入が可能であり、残留検査法として有用であると考えられる。

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