食品包装関連化学物質の安全性確保に関する調査研究

文献情報

文献番号
200000711A
報告書区分
総括
研究課題名
食品包装関連化学物質の安全性確保に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 正美(神戸学院大学)
研究分担者(所属機関)
  • 小川幸男(国立医薬品食品衛生研究所)
  • 川口春馬(慶應義塾大学)
  • 小瀬達男((財)化学技術推進戦略機構)
  • 辰濃 隆((社)日本食品衛生協会)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
①多種類の食品包装材が現在使用されており、それらから食品に移行する物質についての安全性が一般消費者間で危惧されている。一方、増え続ける多種多様の食品包装材料について、行政サイドでも材質構成の詳細についての情報は不十分であり、安全性に問題が起こると、その終結に時を要することが多い。本研究では、食品包装材料、特にプラスチック材料につてそれらの構成を調査し、安全性のデータを集め行政処理において一助としたい。
初年度に食品包装材に使用されている化学物質を関連業界からアンケートによって情報を収集した結果、プラスチックの種類とそれに関連する化学物質の安全性についての情報を前年度同様調査を続行する。併せて、実際に使用している量について各業界で作られている自主規格に依って調査する。その結果とアンケート調査によって得られている情報と照合して、安全性の有無を検討する。
②「容器包装リサイクル法」が施行され、回収したペットボトルについての再生法(メカニカルリサイクル及びケミカルリサイクル)と使用用途の情報を集めたが、本年は、それらの中から実施可能な再生法を選択し、回収したペット容器を再生処理を施した後、容器を成形し食品衛生上の問題点を検討する。
研究方法
①食品包装材料関連の化学物質についての安全性はインターネットなどを用いて種々集めることとし、また、現在、関連各業界で行っている自主規準などを参考に、一般的な使用法を調査し、アンケートによって得られた情報と照合した。
②ペット容器の回収に伴い、その再生法が検討され、先年度得られた情報から3つのメカニカルリサイクルと1つのケミカルリサイクルの方法を選び、実際に再生処理を行い、それらの再生容器について食品衛生上の問題点を検討する。
まず、再生処理方法は「ビューラー社方式」と「三井ホソカワ方式」、日本独自の方式「シート方式」の3つのメカニカルリサイクルと「アイエス社方式」のケミカルリサイクルの4通りである。得られるフレークから成形容器(A,B)及びシートとする。アイエス社方式とはエチレングリコールと共にペット容器細片を高温で処理し、分別蒸留によって目的とするビスヒドロキシエチルテレフタレート(BHET)を留取し、このものを再重合して得られる樹脂を成形、容器(C)とする。
これらの容器を用いて食品衛生法のペット樹脂の個別規格及び米国FDAで示す食品容器の安全性の指標にパスするか否かを検討する。
結果と考察
①プラスチック添加剤についての安全性の情報と、各業界における自主規格による化学物質の使用実態を併せて考えるときに、現在の食品包装材料はいずれも諸外国で食品包装材料として用いられ安全性が高いと考えられる。最近、「内分泌かく乱作用」ということが提起されその問題を考えるとき、いくつかの物質につては再考を要する(フタル酸エステル、アルキルフェノール、ビスフェノールA)。
②ペット容器の再生で、メカニカルリサイクル3方法とケミカルリサイクル1方法の4方法よって再生処理したペット樹脂を食品容器として再成形した場合に、安全に使用することが出来るかを検討したところ、表1に示すような結果を得た。また、代理汚染物質に依っての再生処理試験においては、いずれの再生処理方法で得られた試験容器からも汚染物質の溶出は認められなかった。
上記の結果から次のように考察が得られた。①プラスチック構成化学物質については、各関連業界で示している自主規格に載せられているもので(自主規格は食品包装材料に世界諸国で使用されている化学物質を採用している)、安全性は高い物質と考えられる。
②ペット容器の再生については、再生処理の4方法によって試験品を作成して、再使用についての安全性を検討したところ、いずれの方法も食品衛生法の規格基準に合格し、また汚染物質についても、再生処理を施した材質中からは溶出は認められていないことから、今回検討した再生処理方法を用いれば、食品容器として再使用が出来ると判断される。
ただし、シート方式の場合、水に不溶の高沸点(不揮発性)の物質は材質中に僅かに残存し、また油性食品に長期接触するときに極くわずかであるが移行する。しかしながら、トレーの使用実態から見て食品と接触する条件によっては、その量は検出できないほど微量で、FDAで示す量「閾値」よりはるかに小さく、衛生上、安全性に何ら問題がないと考えられる。
結論
①食品包装材料に使用されている化学物質はいずれも世界各国で使用が認められているものであり、現状においては食品衛生上安全であるといえる。ただ、「内分泌かく乱作用」という問題については、現今、騒がれてはいるが確証のないことから、容器包装関連化学物質中にはビスフェノールA、フタル酸エステル類の数種など疑いが持たれているものもある。
②ペット容器の再生品について、食品衛生上、安全性で問題があるかを検討した結果、表1に示すように、代理汚染物質の食品擬似溶媒への移行は見られず、食品衛生法のペット個別規格にも十分に合格していた。
これらのことから、回収したペット容器を今回検討した方法を用いて再生処理すれば、食品衛生上安全な容器となることが結論として得られた。
表1 再生容器の溶出試験結果   A B C D
トリクロロエタン         ND ND ND ND
クロロベンゼン         ND ND ND ND
トルエン             ND ND ND ND
フェニルシクロヘキサン     ND ND ND ND
ステアリン酸メチル    ND ND ND ND
ベンゾフェノン     ND ND ND ND
アンチモン        ND ND ND ND
ゲルマニウム       ND ND ND ND
KMnO4消費量    < 2.5ppm < 2.5ppm < 2.5ppm < 2.5ppm
蒸発残留物     < 5ppm < 5ppm < 5ppm < 5ppm
重金属       <0.5ppm <0.5ppm <0.5ppm <0.5ppm
A :ビューラー社方式 B :三井ホソカワ方式 C :アイエス社方式 D:シート方式
検出限界(ND) 1PPb, ただし、ベンゾフェノンは5ppb
アンチモン 0.05ppm ゲルマニウム 0.1ppm
蒸発残留物は蒸留水、4%酢酸、20%エタノール、50%エタノールを溶媒とした。
参考資料 平成10,11年度「食品用等関連化学物質の安全性確保に関する調査研究」報告書

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-