諸外国におけるHACCP等に関する調査研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000707A
報告書区分
総括
研究課題名
諸外国におけるHACCP等に関する調査研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
山崎 省二(国立公衆衛生院)
研究分担者(所属機関)
  • 宮城島一明(京都大学大学院)
  • 佐藤勝也(日本輸入食品安全推進協会)
  • 藤原真一郎(国立公衆衛生院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
11,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1995年の世界貿易機関(WTO)発足により、FAO/WHO合同食品規格委員会(コーデックス)において審議勧告される食品衛生関連の各種規格等が各国の食品衛生規制に実質的な影響を与えることとなった。食品の安全性確保に関連する各国の規制は、法規制の基本的考え方、生活文化を背景として、それぞれ独自の体系を持ち、各種コーデックス規格を自国の食品衛生規制に取り入れていくには困難が予想される。また、既存の食品衛生規制とコーデックス規格の差異が、食品の安全性や貿易上の問題として、具体的にどのような影響があるのか明確にされていない。特に我が国は、多種大量の食品を輸入しており、国際的に流通する食品に対して有効な食品衛生規制を講じる方策を検討する必要がある。本研究においては、HACCPシステムと食品衛生規制に関連する事項、食品表示、遺伝子組換え食品、行政組織等を対象とし、国際機関、諸外国における現状を調査して我が国における望ましい食品衛生規制の方向性を明らかにすることを目的とする。
研究方法
諸外国におけるHACCP関連事項については、第4回国際食品安全及びHACCP会議において、民間企業、消費者、第三者機関及び政府機関相互に関連するHACCP適用の現状と課題について諸外国の情報を収集し、我が国における今後の方向性について検討した。
遺伝子組換え食品に関する諸外国及び国際的な食品保健規制の動向について、主要なトピックを中心に調査し、問題点と今後の課題を整理した。
諸外国における食品規制方法に関しては、英国、韓国、シンガポールにおける食品の輸入手続と関連事項及び米国における水産・食肉製品の安全性確保対策について調査した。
さらに、食品衛生規制手法としてのHACCP適用に関しては、食品企業における今後の自主衛生管理の方向性について考察するとともに、行政機関による監視指導のあり方を踏まえながら、中小事業者の支援方策、教育訓練、民間認証等について検討した。
結果と考察
諸外国におけるHACCP関連する以下の事項についてとりまとめた。食品安全に関する動向と今後の課題として、消費者、民間企業、国際機関、第三者機関それぞれの立場から、食品の生産から消費まで一貫した衛生管理と食品安全規制の統一化と国際調和の必要性が主張されており、そのための施策として、食品安全に関する単一行政庁の創設とそれに対応した科学的な知見の統合が欧州において考慮されている。このためには、食用家畜の飼料を含む生産から消費までのフードチェーン全般における安全確保と衛生管理が必須である。しかしながら、HACCPの適用と実行の現場では、HACCPに関する知識と理解の不足による多くの問題があり、それらを克服するために継続的なHACCPトレーニングが重要である。このトレーニング内容に関しても国際的な訓練基準策定の必要性が指摘されている。
遺伝子組換え食品の安全性審査をめぐる国際動向については、その食品表示の義務化と事前審査制度を中心にとりまとめた。また、遺伝子組換え食品の安全性評価に関する技術的側面と既存食品との異同に関する問題点を整理してとりまとめた。英国、韓国、シンガポールにおける食品規制方法について、その制度、組織、輸入手続について明らかにするとともに、水産物、食肉・食肉加工品において既にHACCP適用が義務化された米国の食品規制の現状についてとりまとめた。さらに、我が国の総合衛生管理製造過程の承認を取得した施設における衛生管理の実情を踏まえ、衛生規制と自主衛生管理の今後の方向性と行政機関による監視指導のあり方、中小事業者の支援方策、教育訓練、民間認証の必要性を明らかにした。
結論
国際機関、諸外国等における食品の安全性確保の現状について把握し、我が国における今後の食品衛生規制の方向性を明らかにすることを目的として、HACCP関連の国際会議の動向、諸外国における食品の表示制度、規制制度、輸入手続き、遺伝子組換え食品の取扱い等についてとりまとめた。この結果、食品流通の国際化を背景として、食品安全確保のために必要な施策も生産から消費までの各段階でのグローバルな整合化が必須であり、食品とそれに関連する衛生規制の制度改革、科学的根拠の集積と評価、現場での衛生管理の確実な実行と検証が要求されている。我が国において、HACCP適用を軸とした様々な側面における再構築が今後必要と考えられる。

公開日・更新日

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更新日
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研究報告書(紙媒体)