文献情報
文献番号
200000696A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の光毒性に係る評価方法に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
小野 宏
研究分担者(所属機関)
- 小野 宏((財)食品薬品安全センター秦野研究所)
- 田中 憲穂(財)食品薬品安全センター秦野研究所)
- 渋谷 徹((財)食品薬品安全センター秦野研究所)
- 大原 直樹((財)食品薬品安全センター秦野研究所)
- 原 巧((財)食品薬品安全センター秦野研究所)
- 長野 哲雄(東京大学大学院薬学系研究科)
- 林 真(国立医薬品食品衛生研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
化学物質の中には、光照射により、その毒性や遺伝毒性が増強されるものがある。近年、これらの光毒性・光遺伝毒性物質の人体に対する影響が注目されるようになり、OECDやEMEA(The European Agency for the Evaluation of Medical products)で安全性試験ガイドラインの整備が進められつつある。しかしながら、現在までのところ、試験系としての本格的評価はなされていない。また、光毒性・光遺伝毒性物質がいかなる機構によって毒性を発現するのか明確にされていない部分が多い。これらの問題を明らかにするため本研究では、
a. 主に既知の光毒性物質を用いて、化学物質の構造とその活性相関を検討した上で、
b. 光毒性発現の様式とその条件について調べ、各種のin vitroの試験系を用いてそれぞれの化学物質の毒性作用を評価する。その上で、これらの化学物質を検出する簡便な実験系を確立する。
c. 皮膚細胞での紫外線特異的突然変異や小核誘発をマーカーとして、実験動物を用いて実際の生体への影響を解明し、この現象の発現機構を明らかすると同時に、最適な評価系を作出する。
d. 確立した評価系を応用し、光毒性・光遺伝毒性物質の作用機序や、遺伝子レベルでの影響について検討を行う。
これらの結果から、光発がんを含むヒトの健康への影響を評価するための基礎データーを得ること、更に光毒性物質検出系の開発を目的とする。
a. 主に既知の光毒性物質を用いて、化学物質の構造とその活性相関を検討した上で、
b. 光毒性発現の様式とその条件について調べ、各種のin vitroの試験系を用いてそれぞれの化学物質の毒性作用を評価する。その上で、これらの化学物質を検出する簡便な実験系を確立する。
c. 皮膚細胞での紫外線特異的突然変異や小核誘発をマーカーとして、実験動物を用いて実際の生体への影響を解明し、この現象の発現機構を明らかすると同時に、最適な評価系を作出する。
d. 確立した評価系を応用し、光毒性・光遺伝毒性物質の作用機序や、遺伝子レベルでの影響について検討を行う。
これらの結果から、光発がんを含むヒトの健康への影響を評価するための基礎データーを得ること、更に光毒性物質検出系の開発を目的とする。
研究方法
(1)化学物質の光毒性試験法に関する調査研究 (小野)
光照射によって化学物質の毒性が修飾されることの試験法に関する国際的動向の調査のため、OECD試験法ガイドライン計画と関係する諸会議に出席して、この方面の情報を確実に得ることに努めた。
(2)培養細胞を用いる各種試験法における光毒性の検討 (田中)
a)チャイニーズ・ハムスター培養細胞株CHL/IUを用いた光in vitro小核試験を用いて、溶解度が異なるC60およびC60-シクロデキストラン包摂体の光遺伝毒性の比較し、溶液中の分子状態が化学物質の光遺伝毒性誘発性に与える影響を検討した。
b)林 真 博士(国立医薬品食品衛生研究所)との共同実験により、光照射条件下でリボフラビンを処理した培養細胞について、変異原性試験を行い、同時にDNAアレイを用いて発現が変化する遺伝子を検索し、遺伝子レベルでの光遺伝毒性の作用機序を検討した。
c) げっ歯類を用いた皮膚小核試験について、感度向上を目的とし、処理後の皮膚細胞を培養系に移す方法を検討した。
(3) 哺乳動物を用いる変異原性試験に対する光照射の影響に関する研究 (澁谷)
a)前年度、ラットを用いて可能であることを確認した、皮膚小核試験による光遺伝毒性物質検査法について、多数の変異体やトランスジェニック動物が開発され、より有用であると考えられるマウスの系に応用する事を試みた。
b) 光遺伝毒性物質のターゲットとなると考えられる網膜細胞における遺伝毒性試験法を開発すべく、Punマウスの系で、色素網膜上皮のメラニンの有無で遺伝毒性を検出する方法の導入を試みた。
(4) ショウジョウバエを用いる光遺伝毒性試験の研究 (原)
これまで、8-メトキシソラレン(8-MOP)をモデル物質として、翅毛スポットテストによる光遺伝毒性物質検出法を開発した。本年度は、光感作性物質としても知られるクロルプロマジン(CPZ)について光遺伝毒性試験を実施し、試験系の汎用性について検討した。
(5)モルモットおよびラットにおける急性光毒性試験法 (大原)
昨年度までに、急性皮膚光刺激性試験についてOECD化学物質試験法のガイドライン案をもとに多くの化学物質に対応できるような条件を検討し、媒体の選択方法および皮膚への投与方法をまとめた。今回は、光毒性物質の全身暴露を視野に入れた試験条件を設定するため、モルモットおよびラットの単回経口投与による、モデル物質8-MOPの急性光毒性試験法の検討を行った。
(6)新規一重項酸素検出プローブの開発 (長野)
一重項酸素は活性酸素種であり、その特徴ある反応性から生理機能が注目されている活性種である。本研究では、一重項酸素ををバイオイメージングとして捉える生細胞蛍光プローブの開発研究を行っており、すでに一重項酸素を特異的に捉える蛍光プローブとしては世界で初めてのものであるDPAX類を報告している。しかしながら、生細胞中から一重項酸素を捉えるには更に1桁高い感度が求められていた。今年度この点を重点的に検討し、新たなプローブの開発と有用性の検討を行った。
(7)光照射による皮膚細胞突然変異の検出 (林)
紫外線特異的変異であるCCからTTへの変化を、マウス癌抑制遺伝子p53遺伝子を指標として検出するための変異アレル特異的PCR法の確立を行った。一方,新しい試みとして、最近利用可能となったDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析技術を用い、約1000個の遺伝子についてヒト培養細胞株TK6におけるリボフラビンの光毒性発現時に発現の変化を解析した。
光照射によって化学物質の毒性が修飾されることの試験法に関する国際的動向の調査のため、OECD試験法ガイドライン計画と関係する諸会議に出席して、この方面の情報を確実に得ることに努めた。
(2)培養細胞を用いる各種試験法における光毒性の検討 (田中)
a)チャイニーズ・ハムスター培養細胞株CHL/IUを用いた光in vitro小核試験を用いて、溶解度が異なるC60およびC60-シクロデキストラン包摂体の光遺伝毒性の比較し、溶液中の分子状態が化学物質の光遺伝毒性誘発性に与える影響を検討した。
b)林 真 博士(国立医薬品食品衛生研究所)との共同実験により、光照射条件下でリボフラビンを処理した培養細胞について、変異原性試験を行い、同時にDNAアレイを用いて発現が変化する遺伝子を検索し、遺伝子レベルでの光遺伝毒性の作用機序を検討した。
c) げっ歯類を用いた皮膚小核試験について、感度向上を目的とし、処理後の皮膚細胞を培養系に移す方法を検討した。
(3) 哺乳動物を用いる変異原性試験に対する光照射の影響に関する研究 (澁谷)
a)前年度、ラットを用いて可能であることを確認した、皮膚小核試験による光遺伝毒性物質検査法について、多数の変異体やトランスジェニック動物が開発され、より有用であると考えられるマウスの系に応用する事を試みた。
b) 光遺伝毒性物質のターゲットとなると考えられる網膜細胞における遺伝毒性試験法を開発すべく、Punマウスの系で、色素網膜上皮のメラニンの有無で遺伝毒性を検出する方法の導入を試みた。
(4) ショウジョウバエを用いる光遺伝毒性試験の研究 (原)
これまで、8-メトキシソラレン(8-MOP)をモデル物質として、翅毛スポットテストによる光遺伝毒性物質検出法を開発した。本年度は、光感作性物質としても知られるクロルプロマジン(CPZ)について光遺伝毒性試験を実施し、試験系の汎用性について検討した。
(5)モルモットおよびラットにおける急性光毒性試験法 (大原)
昨年度までに、急性皮膚光刺激性試験についてOECD化学物質試験法のガイドライン案をもとに多くの化学物質に対応できるような条件を検討し、媒体の選択方法および皮膚への投与方法をまとめた。今回は、光毒性物質の全身暴露を視野に入れた試験条件を設定するため、モルモットおよびラットの単回経口投与による、モデル物質8-MOPの急性光毒性試験法の検討を行った。
(6)新規一重項酸素検出プローブの開発 (長野)
一重項酸素は活性酸素種であり、その特徴ある反応性から生理機能が注目されている活性種である。本研究では、一重項酸素ををバイオイメージングとして捉える生細胞蛍光プローブの開発研究を行っており、すでに一重項酸素を特異的に捉える蛍光プローブとしては世界で初めてのものであるDPAX類を報告している。しかしながら、生細胞中から一重項酸素を捉えるには更に1桁高い感度が求められていた。今年度この点を重点的に検討し、新たなプローブの開発と有用性の検討を行った。
(7)光照射による皮膚細胞突然変異の検出 (林)
紫外線特異的変異であるCCからTTへの変化を、マウス癌抑制遺伝子p53遺伝子を指標として検出するための変異アレル特異的PCR法の確立を行った。一方,新しい試みとして、最近利用可能となったDNAマイクロアレイによる網羅的遺伝子発現解析技術を用い、約1000個の遺伝子についてヒト培養細胞株TK6におけるリボフラビンの光毒性発現時に発現の変化を解析した。
結果と考察
(1)化学物質の光毒性試験法に関する調査研究 (小野)
毒性試験法は,科学の進歩に基づいて、また、動物愛護運動への対応の必要もあって、改良・開発が盛んに試みられており、急性毒性試験については、動物の数と苦痛を最小とするような代替法が従来の試験法に置き替わろうとしている。動物を用いる試験の代替法として in vitro 試験法の開発が進められている。In vitro試験法が毒性試験代替法として採用されるまでには、厳しい論理に基づいた有用性の確認 (Validation) が必要であり、光毒性検査法についても,有用性確認試験が重ねられ、有用性の検討が行われている.そのため相当の時日の経過があったが、ようやく in vitro 光毒性試験法の提案がOECDになされた状況となっている。
(2)培養細胞を用いる各種試験法における光毒性の検討 (田中)
a)C60およびC60-シクロデキストラン包摂体の光小核誘発性を比較したところ後者で明らかな誘発性増強が認められ、化学物質の光遺伝毒性誘発性は、溶液中の分子状態によって変化しうることを明らかにした。
b)リボフラビンは、非照射条件では遺伝毒性を示さないのに対し、照射条件下では、強い小核誘発性を示した。その濃度では、細胞周期やDNA修復に関連する遺伝子などに発現変化が認められた。
c) マイトマイシンCで皮膚を処理後、プロモータを含む培養系に移すことにより、約5倍の大幅な感度向上が認められた。
(3)哺乳動物を用いる変異原性試験に対する光照射の影響に関する研究 (澁谷)
a)C57/BLマウスを用いて、8-MOPおよびクロルプロマジンの光皮膚小核試験を実施したところ、8-MOPにおいては光照射によって皮膚小核の誘発に明らかな増強作用が認められた。しかしCPZでは低用量において増強作用が認められたが、高用量では認められなかった。
b)Punマウス網膜より標本を作製する方法を開発し、実際に観察を行ったところ、一眼あたり約10個の変異スポットが観察されたことから、網膜細胞においても変異原の検出が可能であると示唆された。
(4) ショウジョウバエを用いる光遺伝毒性試験の研究 (原)
翅毛スポットテストによるCPZの光遺伝毒性試験を実施した。その結果、8-MOPと異なり、用いた最高濃度でも陽性の反応は得られなかった。
(5)モルモットおよびラットにおける急性光毒性試験法 (大原)
モルモットおよびラットのいずれでも、皮膚塗布法と同様に陽性の反応を得ることができ、陽性対照としての適切な条件を設定することができた。ラットにおいては、皮膚だけでなく、耳介にも皮膚反応が観察されたが、この場合は、若干の条件変更により、良好な結果を得られることが示された。
(6)新規一重項酸素検出プローブの開発 (長野)
新規一重項酸素検出プローブを開発するにあたり、photo-induced electron transfer (PET)機構に基づく発光原理を応用して、超高感度一重項酸素検出プローブDMAXの開発に成功した。DMAXを好中球などの細胞系に適応し、生理的条件下での一重項酸素の検出を行った。好中球ではPMA刺激によりMediumの蛍光強度の増加が観察され、生理的条件下での一重項酸素の検出の検出に初めて成功した。
(7)光照射による皮膚細胞突然変異の検出 (林)
p53遺伝子のコドン238にCCからTTの変異を持つマウス皮膚癌細胞株を入手し,変異DNAサンプルを一定濃度で含むサンプルを作成してアリル特異的PCR法の条件検討を行った結果,CC to TT変異を10^-6 という高感度で検出する試験系が確立できた。
一方、リボフラビンの光毒性発現時に発現が変化した遺伝子を検索したところ,細胞周期関連遺伝子,ミトコンドリア関連遺伝子,Gタンパク関連遺伝子、ユビキチン関連遺伝子、DNA修復酵素などの数種の遺伝子について2倍以上の発現変化が認められた。
毒性試験法は,科学の進歩に基づいて、また、動物愛護運動への対応の必要もあって、改良・開発が盛んに試みられており、急性毒性試験については、動物の数と苦痛を最小とするような代替法が従来の試験法に置き替わろうとしている。動物を用いる試験の代替法として in vitro 試験法の開発が進められている。In vitro試験法が毒性試験代替法として採用されるまでには、厳しい論理に基づいた有用性の確認 (Validation) が必要であり、光毒性検査法についても,有用性確認試験が重ねられ、有用性の検討が行われている.そのため相当の時日の経過があったが、ようやく in vitro 光毒性試験法の提案がOECDになされた状況となっている。
(2)培養細胞を用いる各種試験法における光毒性の検討 (田中)
a)C60およびC60-シクロデキストラン包摂体の光小核誘発性を比較したところ後者で明らかな誘発性増強が認められ、化学物質の光遺伝毒性誘発性は、溶液中の分子状態によって変化しうることを明らかにした。
b)リボフラビンは、非照射条件では遺伝毒性を示さないのに対し、照射条件下では、強い小核誘発性を示した。その濃度では、細胞周期やDNA修復に関連する遺伝子などに発現変化が認められた。
c) マイトマイシンCで皮膚を処理後、プロモータを含む培養系に移すことにより、約5倍の大幅な感度向上が認められた。
(3)哺乳動物を用いる変異原性試験に対する光照射の影響に関する研究 (澁谷)
a)C57/BLマウスを用いて、8-MOPおよびクロルプロマジンの光皮膚小核試験を実施したところ、8-MOPにおいては光照射によって皮膚小核の誘発に明らかな増強作用が認められた。しかしCPZでは低用量において増強作用が認められたが、高用量では認められなかった。
b)Punマウス網膜より標本を作製する方法を開発し、実際に観察を行ったところ、一眼あたり約10個の変異スポットが観察されたことから、網膜細胞においても変異原の検出が可能であると示唆された。
(4) ショウジョウバエを用いる光遺伝毒性試験の研究 (原)
翅毛スポットテストによるCPZの光遺伝毒性試験を実施した。その結果、8-MOPと異なり、用いた最高濃度でも陽性の反応は得られなかった。
(5)モルモットおよびラットにおける急性光毒性試験法 (大原)
モルモットおよびラットのいずれでも、皮膚塗布法と同様に陽性の反応を得ることができ、陽性対照としての適切な条件を設定することができた。ラットにおいては、皮膚だけでなく、耳介にも皮膚反応が観察されたが、この場合は、若干の条件変更により、良好な結果を得られることが示された。
(6)新規一重項酸素検出プローブの開発 (長野)
新規一重項酸素検出プローブを開発するにあたり、photo-induced electron transfer (PET)機構に基づく発光原理を応用して、超高感度一重項酸素検出プローブDMAXの開発に成功した。DMAXを好中球などの細胞系に適応し、生理的条件下での一重項酸素の検出を行った。好中球ではPMA刺激によりMediumの蛍光強度の増加が観察され、生理的条件下での一重項酸素の検出の検出に初めて成功した。
(7)光照射による皮膚細胞突然変異の検出 (林)
p53遺伝子のコドン238にCCからTTの変異を持つマウス皮膚癌細胞株を入手し,変異DNAサンプルを一定濃度で含むサンプルを作成してアリル特異的PCR法の条件検討を行った結果,CC to TT変異を10^-6 という高感度で検出する試験系が確立できた。
一方、リボフラビンの光毒性発現時に発現が変化した遺伝子を検索したところ,細胞周期関連遺伝子,ミトコンドリア関連遺伝子,Gタンパク関連遺伝子、ユビキチン関連遺伝子、DNA修復酵素などの数種の遺伝子について2倍以上の発現変化が認められた。
結論
田中は、これまでに確立したin vitro光遺伝毒性試験法を用いて、光遺伝毒性物質の溶液中での分子状態が光遺伝毒性誘発性に与える影響について検討を行い、周囲の水分子や酸素分子と相互作用しやすい状態では、より強い光遺伝毒性を示すことを明らかにした。シクロデキストラン包摂法は、C60以外の化学物質にも適用できることから、光遺伝毒性物質以外にも、水に溶けにくく活性酸素種発生を作用機序とする遺伝毒性物質の評価にも応用可能と考えられる。
また、光遺伝毒性物質の遺伝子レベルでの作用機序を明らかにする研究(本年度・林 真分担研究)において、in vitro試験系で実際の光遺伝毒性作用を調べる役割を担った。
さらに、簡便なin vivo光遺伝毒性試験系として期待されるげっ歯類皮膚小核試験について、in vivoで処理後にin vitro系に細胞を移す方法を検討し、本法の問題点であった、検出感度を向上できることを明らかにした。
澁谷は、これまでに確立した、げっ歯類皮膚細胞を用いたin vivo小核試験の系を用いて、新たに8-MOPおよびCPZの光遺伝毒性試験を行った。また、Punマウスをin vivo光遺伝毒性試験に導入するための準備を行った。この実験系は、皮膚以外に光遺伝毒性物質の標的となると考えられる網膜細胞に対する評価系として期待される。
大原は、モルモットおよびラットを用いたin vivo光刺激性試験の試験方法の検討を行った。本年度は、モルモットを用いた試験において、これまでの皮膚塗布に加えて、経口投与による試験条件の検討を行った。通常、in vivo光毒性試験は皮膚塗布によって行われてきたが、経口で化学物質を摂取した場合、暴露が全身に及ぶことから、皮膚塗布による局所的暴露とは異なる作用が生ずるものと考えられるので、化学物質の性質によっては、今回確立した経口投与による試験を実施することが望ましいと考えられる。また、新たにラットを用いた光毒性試験系について検討し、陽性対照物質の経口投与によって背部皮膚および耳介に反応を得ることができた。耳介を利用することにより刈毛せず光毒性反応が検出できることから、今後、通常の反復投与毒性試験の中での光毒性試験の利用や、間欠照射による光毒性試験の実施などの応用が考えられる。
原は、代表的な光遺伝毒性物質であるクロルプロマジンについて試験を行ったが、本法では陰性の結果を得た。このことから、これまでに陽性の結果を得ている8-MOPとは、光遺伝毒性発現メカニズムの相違によることが推察された。今後は、どのような発現メカニズムの化合物が、この試験系で検出可能なのかを検討していく必要がある。
長野は、これまでに開発してきた一重項酸素検出プローブに、さらなる改良を加えたDMAXを新たに合成した。これを好中球に適応した結果、PMA刺激による一重項酸素生成を検出することができた。これは好中球からの一重項酸素生成を初めて明らかにしたものである。このプローブの開発にあたっては、始めに合理的な分子設計を行うべく分子軌道計算に基づき蛍光の発光原理を精査した。その結果photo-induced electron transfer (PET)機構に基づく発光原理を明らかにした。上記のDMAXはこの原理により開発されたものである。このPET機構に基づくプローブ開発法は一重項酸素以外のプローブを開発する上においても適用できる一般法となる。
林は、分子生物学的手法を用いて、p53遺伝子の紫外線特異的なDNA傷害を検出する系の開発を行い、変異アレル特異的PCR法を用いて、変異p53を含む混合サンプルから高感度で変異を検出できることを明らかにした。この結果は、本法により、微量のバイオプシーサンプルから、紫外線による変異を検出できる可能性を開く物である。また、新たにDNAアレイ法を用いて、リボフラビンによって光遺伝毒性を誘発された培養細胞株について、種々の遺伝子の発現変化を検索し、大きく発現量の変化する遺伝子は見つからなかったが、いくつかの遺伝子について2倍を越える変化が得られた。これらの遺伝子がどのように光毒性の発現と関連しているかは,再現性を含め今後さらに解析例を増やして検討を進める必要がある。
また、光遺伝毒性物質の遺伝子レベルでの作用機序を明らかにする研究(本年度・林 真分担研究)において、in vitro試験系で実際の光遺伝毒性作用を調べる役割を担った。
さらに、簡便なin vivo光遺伝毒性試験系として期待されるげっ歯類皮膚小核試験について、in vivoで処理後にin vitro系に細胞を移す方法を検討し、本法の問題点であった、検出感度を向上できることを明らかにした。
澁谷は、これまでに確立した、げっ歯類皮膚細胞を用いたin vivo小核試験の系を用いて、新たに8-MOPおよびCPZの光遺伝毒性試験を行った。また、Punマウスをin vivo光遺伝毒性試験に導入するための準備を行った。この実験系は、皮膚以外に光遺伝毒性物質の標的となると考えられる網膜細胞に対する評価系として期待される。
大原は、モルモットおよびラットを用いたin vivo光刺激性試験の試験方法の検討を行った。本年度は、モルモットを用いた試験において、これまでの皮膚塗布に加えて、経口投与による試験条件の検討を行った。通常、in vivo光毒性試験は皮膚塗布によって行われてきたが、経口で化学物質を摂取した場合、暴露が全身に及ぶことから、皮膚塗布による局所的暴露とは異なる作用が生ずるものと考えられるので、化学物質の性質によっては、今回確立した経口投与による試験を実施することが望ましいと考えられる。また、新たにラットを用いた光毒性試験系について検討し、陽性対照物質の経口投与によって背部皮膚および耳介に反応を得ることができた。耳介を利用することにより刈毛せず光毒性反応が検出できることから、今後、通常の反復投与毒性試験の中での光毒性試験の利用や、間欠照射による光毒性試験の実施などの応用が考えられる。
原は、代表的な光遺伝毒性物質であるクロルプロマジンについて試験を行ったが、本法では陰性の結果を得た。このことから、これまでに陽性の結果を得ている8-MOPとは、光遺伝毒性発現メカニズムの相違によることが推察された。今後は、どのような発現メカニズムの化合物が、この試験系で検出可能なのかを検討していく必要がある。
長野は、これまでに開発してきた一重項酸素検出プローブに、さらなる改良を加えたDMAXを新たに合成した。これを好中球に適応した結果、PMA刺激による一重項酸素生成を検出することができた。これは好中球からの一重項酸素生成を初めて明らかにしたものである。このプローブの開発にあたっては、始めに合理的な分子設計を行うべく分子軌道計算に基づき蛍光の発光原理を精査した。その結果photo-induced electron transfer (PET)機構に基づく発光原理を明らかにした。上記のDMAXはこの原理により開発されたものである。このPET機構に基づくプローブ開発法は一重項酸素以外のプローブを開発する上においても適用できる一般法となる。
林は、分子生物学的手法を用いて、p53遺伝子の紫外線特異的なDNA傷害を検出する系の開発を行い、変異アレル特異的PCR法を用いて、変異p53を含む混合サンプルから高感度で変異を検出できることを明らかにした。この結果は、本法により、微量のバイオプシーサンプルから、紫外線による変異を検出できる可能性を開く物である。また、新たにDNAアレイ法を用いて、リボフラビンによって光遺伝毒性を誘発された培養細胞株について、種々の遺伝子の発現変化を検索し、大きく発現量の変化する遺伝子は見つからなかったが、いくつかの遺伝子について2倍を越える変化が得られた。これらの遺伝子がどのように光毒性の発現と関連しているかは,再現性を含め今後さらに解析例を増やして検討を進める必要がある。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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