熱媒体の人体影響とその治療法に関する研究

文献情報

文献番号
200000682A
報告書区分
総括
研究課題名
熱媒体の人体影響とその治療法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
金子 原二郎(長崎県知事)
研究分担者(所属機関)
  • 池邉昇(長崎県環境衛生課長)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
-
研究終了予定年度
-
研究費
13,146,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
昭和43年に発生したPCB中毒患者(油症)が、今なお完全に治癒していない状況に鑑み、油症被害者の検診並びに追跡調査を行い、油症の有効的な治療法の解明を図ることを目的とする。
研究方法
これまでと同様に、長崎大学を中心とした油症検診班を組織し、五島(玉之浦1日、奈留1日)、長崎(1日)の両地区において油症被害者約700名を対象に一斉検診、並びにその検診結果に基づき油症被害者個々に健康管理指導を行った。なお、未認定者に対しては、認定診査も行った。また、今年度は油症の原因食品であるカネミ油の本県流通経路の整理を行った。
結果と考察
研究結果=長崎、佐賀、熊本3県の油症被害者を対象として五島(玉之浦1日、奈留1日)、長崎(1日)の両地区において油症患者81名、未確認者22名、合計103名について一斉検診を行った。その検診結果に基づき、総合的な健康診査を行い、103名の受診者中87名に対し医療面の指導を行った。その後、長崎県出身の未確認者1名の随時検診を行い、最終的には油症患者81名、未確認者23名、合計104名の検診を行った。また、未確認者については、血液中PCB、PCQ濃度を含めて油症診断を行ったが、今回新たに認定したものはいなかった。なお、今回は油症の原因食品であるカネミ油の本県流通経路の整理を行ったので以下に述べる。
①患者発生届出状況
昭和43年10月11日の新聞報道を契機に同12日より県内各保健所へ届出者が続出した。届出者は、下五島地区、長崎市を中心に対馬を除いた県下全域に及んだが、事件発生から昭和44年9月20日までの約1年間の届出者は、739世帯、1,525名に、その後昭和57年12月末現在で817世帯、3,478名にのぼった。
②カネミ油の入荷状況
本県におけるカネミ油の入荷状況は、カネミ本社工場調査によると昭和43年1月~4月までの期間に約63,200Kgである。国立衛生研究所による残油の分析結果は、汚染物質(PCB)の含まれた油は、昭和43年2月上旬から中旬にかけて製造出荷製品に限られていた。従って本県に入荷した製品のうち昭和43年1月以前のカネミ油は、PCBの混入は考えられず、2月上旬から3月にかけて入荷したカネミ油が最も汚染されたカネミ油が小売店で入荷し販売されるまで流通の時間にばらつきがあると考えられるため、汚染されたカネミ油が小売店で販売されていた時期というのは不明である。
③各地域における流通経路
(イ)下五島地域(玉之浦町、奈留町他)
下五島地域における流通経路は、『カネミ本社工場』→『カネミ大村工場』→『A社』→『A社下五島営業所及び奈留出張所』→『各小売店』→『消費者』といった経路であり、昭和43年2月~7月の間に63本(1本あたり1.65Kg入り)、301缶(1缶あたり16.5Kg入り)が販売された。
(ロ)長崎市及びその他の地域
長崎市における流通経路は、『カネミ本社工場』→『カネミ大村工場』→『A社・D社・G商店』→『各営業所』→『小売店・スーパー』→『消費者』といった経路であり、長崎市における入荷状況は、昭和43年1月~4月の間に合計19,549.5Kg入荷し販売された。その内訳は、A社1,750本(1本あたり1.65Kg入り)、D社1,770本(1本あたり1.65Kg入り)、G商店190缶(1缶あたり16.5Kg)、51ドラム缶(1ドラム缶あたり181.5Kg入り)であり、その製品は長崎市の他、諫早市及び西彼杵郡の一部でも販売された。また、長崎市のG商店では181.5Kgドラム缶と他社製品を混入し、1.8リットル瓶に小分けしてG店製天ぷら油として販売していた。
結論
発生から32年を経過し、発生当時の状況を知るスタッフも少なくなり、今回、カネミ油症という事件を知るための一助として本県の流通経路を整理した。また、認定患者の中にも発生当時のような急性症状を示す患者はほとんどいなくなった。しかし、検診を受診した104名中87名に医療面の指導を行ったように、原因が高齢からくるものか、体内に蓄積されたPCB、PCQからくるものか不明だが、患者の健康状態は良くない。体内に蓄積したPCB、PCQが身体にどのような影響を与えどのような病気をもたらすか、また、子孫に対しての影響等がない等の安全が確認されるまでの間は、検診を継続していく必要があると思われる。

公開日・更新日

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