間脳下垂体機能障害に関する調査研究

文献情報

文献番号
200000619A
報告書区分
総括
研究課題名
間脳下垂体機能障害に関する調査研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
加藤 讓(島根医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 斉藤 寿一(自治医科大学)
  • 寺本  明(日本医科大学)
  • 大磯ユタカ(名古屋大学)
  • 青野 敏博(徳島大学)
  • 橋本 浩三(高知医科大学)
  • 木村 時久(古川市立病院)
  • 田中 敏章(国立小児病院)
  • 長村 義之(東海大学)
  • 島津 章(国立京都病院)
  • 巽  圭太(大阪大学)
  • 千原 和夫(神戸大学)
  • 宮崎 康二(神戸大学)
  • 村上 宜男(島根医科大学)
  • 横山 徹璽(島根医科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 特定疾患対策研究事業
研究開始年度
平成11(1999)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
21,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
間脳下垂体機能障害は多彩な病変に基づくホルモン分泌異常症であり、生命予後と生活の質(QOL)の両面において治療が不可欠な病態である。本研究においてはプロラクチン(PRL)、ゴナドトロピン、抗利尿ホルモン (ADH) の3種類の下垂体ホルモン分泌異常症、ならびに上記以外の下垂体ホルモン分泌異常を伴った複合性下垂体ホルモン分泌異常症を調査研究の対象とした。平成12年度においては、これまでの研究過程でとくに重要と考えられる病態を中心としてさらに研究を進め、病態解明に基づく新しい診断法や治療法の開発を目的とする。
研究方法
対象疾患の臨床的観察、病態解析、免疫機序や遺伝子異常の解析、ならびに疫学調査を分担して施行し、これらを総合解析することによって、疾患の新しい診断や治療を確立する。
結果と考察
対象とした各々の疾患において、以下のような新しい成果が得られた。1.プロラクチン(PRL)分泌異常症:1)PRL産生腫瘍細胞において、TRHはMAPキナーゼ活性化を介してPRL遺伝子発現を促進する。2)新しい転写因子mPOUは細胞質と核に局在し、Pit-1及びc-AMP存在下にPRL遺伝子発現を増強させる。3)ヒト下垂体腫瘍細胞には一酸化窒素合成酵素(NOS)が存在し、PRL産生腫瘍ではiNOSが発現がする。2.ゴナドトロピン分泌異常症:1)Kallmann症候群の家族例および孤発例を対象として、本邦におけるKAL遺伝子の変異の頻度を明らかにした。2)GnRHアゴニストによる性腺抑制療法を受けた思春期早発症の女児においては、治療中止後の早期に排卵性月経が回復する。3)無排卵症に対する排卵誘発法としては、FSH低用量持続療法よりも、FSH-GnRH律動療法がより有効でありかつ多胎などの副作用が明らかに少ない。3.抗利尿ホルモン (ADH)分泌異常症:1)家族性中枢性尿崩症の家系において新しく見出された変異遺伝子の発現実験から、家族性中枢性尿崩症の発症には変異ADH前駆体蛋白の小胞体内貯留に基づく細胞壊死が関与することが示唆される。3)副腎皮質機能低下状態における水利尿不全は、ADHの抗利尿作用部位である腎集合尿細管のAVP感受性水チャネル、アクアポリン(AQP2)産生系の賦活化亢進に由来する。4)SIADHの低ナトリウム血症の急速な矯正で生じる非可逆的中枢神経障害は一酸化窒素(NO)を介し、NO産生抑制によって防げることが示唆される。5)ADH分泌低下に伴う尿崩症においては、合成ADH薬DDAVP錠の経口投与が簡便でかつ有用である。4.下垂体ホルモン複合欠損症:1)自己免疫性視床下部下垂体炎における自己抗体の性質を部分的に解明した。2)家族性複合性下垂体ホルモン欠損症の原因となるヒトmutant Pit-1(P14L、P24L)の機能解析においてCBPとの結合性に異常が生じることを明らかにした。3)下垂体に特異的に存在する数個の未知遺伝子解析を行った。4)下垂体腫瘍の分化に関与するGATA-2遺伝子が機能発現に関与することを明らかにした。5.疫学実態調査:1)下垂体偶発腫瘍incidenntalomaに関する疫学調査(1次、2次)を開始した。2)疫学研究班と協同で成人下垂体機能低下症を対象とした疫学調査1次調査を開始した。
結論
抗利尿ホルモン(ADH)分泌異常症の病態における変異ADH前駆体蛋白の機序、一酸化窒素(NO)の関与、尿崩症における合成DDAVP錠経口投与の有用を明らかにした。プロラクチン(PRL)分泌異常症におけるMAPキナーゼ活性、新転写因子mPOU、一酸化窒素
合成酵素(NOS)の機序を解明した。ゴナドトロピン分泌異常症における、GnRHアゴニストによる性腺抑制療法、無排卵症に対するFSH-GnRH律動療法の有用性を明らかにした。下垂体ホルモン複合欠損症において、自己抗体の性質を部分的に解明した。Pit-1遺伝子異常、GATA-2遺伝子の機能を明らかにした。下垂体偶発腫瘍incidenntalomaと成人下垂体機能低下症を対象とした疫学調査を開始した。これらの成績から新しい診断や治療の確立にはさらに一層の検討が必要と考えられる。

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