慢性関節リウマチの骨・関節破壊機序の解明による新治療法開発に関する研究

文献情報

文献番号
200000610A
報告書区分
総括
研究課題名
慢性関節リウマチの骨・関節破壊機序の解明による新治療法開発に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
中村 耕三(東京大学大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 伊藤恒敏(東北大学大学院医学系研究科)
  • 井上一(岡山大学医学部)
  • 岩本幸英(九州大学医学部)
  • 岡田保典(慶應義塾大学医学部)
  • 木村友厚(富山医科薬科大学)
  • 冨田哲也(大阪大学医学部)
  • 藤井克之(慈恵会医科大学)
  • 宮坂信之(東京医科歯科大学医学部)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 感覚器障害及び免疫・アレルギー等研究事業(免疫・アレルギー等研究分野)
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
慢性関節リウマチ(RA)の骨・関節破壊の病態とそれを制御する因子を解明し、骨・関節破壊を抑制する新しい治療法を開発することを目的として、以下の点について研究を行った。A)RAにおける滑膜増殖機構の制御について、A-1)アデノウイルスベクターを用いたサイクリン依存性キナーゼインヒビター(CDKI)遺伝子導入による制御、A-2)HVJ-リポゾーム法を用いたCDKI遺伝子導入による効果。B)骨・関節破壊に機能する破骨細胞の活性化機序の解明とその抑制について、B-1)T細胞による破骨細胞分化制御機構の解明と破骨細胞分化抑制による関節破壊抑制、B-2)ビスフォスフォネートによる破骨細胞の制御。C)滑膜血管新生の抑制による骨・関節破壊の防止について、C-1)強力な血管新生抑制物質であるエンドスタチンが関節破壊抑制に及ぼす効果、C-2)血管新生を促進するVEGFが破骨細胞前駆細胞に及ぼす効果。D)軟骨と骨の破壊について、D-1)AP-1オリゴヌクレオチドによるコラーゲン関節炎の骨・軟骨破壊抑制、D-2)軟骨細胞にアポトーシスを誘導する一酸化窒素の合成酵素阻害剤の効果、D-3)MMPインヒビターによる軟骨細胞外基質分解の抑制。E)細胞外基質分解酵素阻害剤による好中球による関節炎性骨破壊の抑制。
研究方法
A-1)CDKI遺伝子であるp21Cip1遺伝子をアデノウイルスに組み込んだ。これをアジュバント関節炎ラットの膝関節内に感作後1週目から、1週毎に計3回関節内注入し、4週後の関節破壊の程度を組織学的に検討した。 A-2)RA患者から採取した滑膜組織から培養した滑膜細胞に、HVJ-リポゾーム法を用いてp21遺伝子を導入し、滑膜増殖に与える影響を検討した。ヒトRA滑膜組織に同様の方法でp21遺伝子を導入し、ヒト関節軟骨片とともにSCIDマウスに移植し、4週後の軟骨破壊の程度について、組織学的に検討した。 B-1)炎症性骨破壊におけるIFN-γの意義を明らかにするため、IFN-γ受容体欠損マウスにおいてLPS誘導性骨破壊モデルにおける破壊の程度を検討した。活性化した脾臓T細胞を破骨細胞誘導因子(RANKL)で刺激した骨髄マクロファージと共存培養し、破骨細胞形成への影響を検討した。同様の実験をIFN-γ受容体欠損マウス由来の骨髄マクロファージについても行った。マウス骨髄マクロファージを用いた破骨細胞形成家に対するIFN-γの効果を検討した。RANKLによる細胞内シグナル伝達系に及ぼすIFN-γの効果を検討した。 B-2)ビスフォスフォネート(YM-175)がRA滑膜細胞の炎症性サイトカイン産生に及ぼす影響を検討した。 C-1)RA患者滑膜組織をSCIDマウスに移植して作製したRA疾患モデルに、強力な血管新生抑制作用を有する・・型コラーゲンC末端フラグメントであるエンドスタチンを投与し、その効果を検討した。 C-2)破骨細胞前駆細胞であるRaw細胞を用いて、血管新生促進因子VEGFの及ぼす効果を検討した。 D-1)c-fos遺伝子の作用部位で競合阻害する作用を持つAP-1オリゴヌクレオチドをラットのコラーゲン関節炎に投与し、組織学的検討を行った。D-2)マウスコラーゲン関節炎モデルを用いて、NO合成酵素 (iNOS)の選択的阻害剤であるL-NIL の効果を検討した。iNOSノックアウトマウスについても同様の検討を行った。 D-3)5種類の合成MMPインヒビターを用いて、培養軟骨細胞および培養軟骨組織におけるコラーゲン、プロテオグリカンの分解阻害効果を検討した
。軟骨組織における、MMP近縁分子であるADAM(a disintegrin and metalloproteinase)遺伝子ファミリーのうち、スロンボスポンジンモチーフを持つADAMTS分子の発現について検討した。 E)コラーゲン関節炎マウスにMMPインヒビター、エラスターゼインヒビターを投与し、好中球による骨破壊に対する効果を検討した。
結果と考察
慢性関節リウマチの骨・関節破壊の機序とその制御を考えるにあたっては、複数のアスペクトがある。組織破壊の面からは、すでに指摘されている滑膜増殖の活性化のほか、骨破壊の主役と想定されている破骨細胞の活性化、局所での分解酵素の活性化促進、軟骨細胞自身の変化による組織破壊の誘導、骨髄における顆粒球機能亢進と骨破壊などがある。これらを制御する方法としては、既知の化学物質のほか、新規の化学物質や生体内の活性因子、遺伝子による細胞周期や細胞内伝達機構の調節などがある。 本年度の研究により、 細胞周期をつかさどるCDKI遺伝子をアデノウイルスあるいはHVJ-リポゾーム法を用いて導入することで関節破壊が抑制できること、滑膜細胞細胞から破骨細胞が形成される過程はRANKLを介して促進され、活性化T細胞に由来するIFNーγによって抑制されており、INF-γ活性を促進することで関節破壊を抑制できること、ビスフォスホネートYM-175は破骨細胞活性のみならず、炎症性サイトカインの産生も抑制すること、エンドスタチンは強力に血管新生を阻害することにより滑膜増殖を抑制すること、血管新生促進因子は破骨細胞前駆細胞の活性も促進していること、AP-1オリゴヌクレオチドはコラーゲン関節炎の発症と進展を抑制すること、軟骨のアポトーシスには一酸化窒素以外の因子も関与すること、軟骨の基質分解にはMMP以外の酵素も関与していること、好中球による骨破壊にはMMPやエラスターゼ以外の酵素が関与している可能性があることが明らかになった。これらの、in vivo あるいはin vivoに近いモデルでの結果は、将来の臨床応用に近づく成果であると考えられる。
結論
RAの骨・関節破壊機序と新治療法開発に関する知見として以下の点が明らかとなった。p21遺伝子の導入により、アジュバント関節炎の滑膜増殖、軟骨・骨破壊が抑制できる。IFN-γは、滑膜細胞からの破骨細胞分化を抑制し、その効果はRANKLのシグナル伝達系を抑制することによる。YM-175は、炎症性サイトカインの産生を抑制する。エンドスタチンは滑膜増殖を抑制する。AP-1オリゴヌクレオチドはコラーゲン関節炎の発症、進展を抑制する。NOの制御のみでは、軟骨細胞のアポトーシスや軟骨破壊は抑制できない。軟骨の基質分解は、MMPの阻害のみでは抑制できず、ADAMTS分子の阻害も必要である。好中球性骨破壊は、MMPやエラスターゼの阻害では抑制できない。

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