エイズに関する普及啓発における非政府組織(NGO)の活用に関する研究

文献情報

文献番号
200000568A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズに関する普及啓発における非政府組織(NGO)の活用に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
大石 敏寛(特定非営利活動法人 動くゲイとレズビアンの会)
研究分担者(所属機関)
  • 風間 孝(特定非営利活動法人 動くゲイとレズビアンの会)
  • 柏崎正雄(特定非営利活動法人 動くゲイとレズビアンの会)
  • 河口和也(特定非営利活動法人 動くゲイとレズビアンの会)
  • 稲場雅紀(特定非営利活動法人 動くゲイとレズビアンの会)
  • 嶋田憲司(せかんどかみんぐあうと)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 エイズ対策研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
-
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究要旨
本研究班の目的は国内の同性愛者等への個別施策層対策導入における助言、支援の役割機能を担い、地方自治体、各地のNGOと連携しつつ個別施策層対策の実践研究を行うものである。
本年度は、①2つの領域「個人のリスク」「生活・コミュニティ環境」から各地域毎のリスク要因データが得られる研究体制を構築し、②介入手法として「個別型」「集団型」「情報普及」のパイロットモデルを開発・実施した。③国内で新規に5地域(北海道、東北、四国、九州、沖縄)のNGO連携モデルの共同プジェクトを発足させ、各地域で啓発介入を開始する準備を行った。
さらに④個別施策層対策に関する自治体施策の現状調査を実施し、各自治体における個別施策層対策導入における阻害要因と課題を明らかにした。NGOと行政施策という双方の役割を明らかにし、各地域での実際の施策において連携する上での調査の枠組みを構築したことにより、次年度以降の効果評価を伴う啓発介入の実践に繋げることができた。
A.研究目的 
男性の同性愛者/両性愛者/MSM(以下、同性愛者等)への普及啓発において、NGOを積極的に活用するモデルを全国的な規模で提示し、同性間の個別施策層対策のあり方を研究・提言する。
各地域が同性愛者等への普及啓発に取り組むに当たって、必要な方法論/データを導き、効果評価を含めた普及啓発の実践例をモデル化する。
研究の枠組み
啓発・介入の実践評価を計画的かつ効率的に実施するために、本研究班の分担(1~4)を以下のような関連性をもたせて位置付けを行った。
①「リスク・アセスメント(研究2)」を反映させた「啓発介入の方法論(研究3)」を開発し、その実践を担う「NGO連携(研究1)」を構築する
②研究のフォーカス領域を「A個人のリスク」「B生活・コミュニティ環境」「C行政施策」の3つとし、個別施策層対策の中で介入可能な領域を明確にした。
③「行政施策の年度毎のコホート調査(研究4)」を行うことで、NGO活用/行政施策双方向からの対策を評価する研究体制を敷いた。
研究方法
B.研究方法(項目ごとの小目的を含む)
①同性愛者等の知識・性行動に関する研究
同性愛者等のHIV/エイズについての知識およびHIV感染リスク行動についての現状を明らかにし、予防啓発に活かすため、(1)HIV感染リスクを把握するためのパイロット調査の実施、(2)研究手法の開発を行った。
2000年10月から2001年1月にかけてパイロット調査を、動くゲイとレズビアンの会が東京、神奈川、埼玉、千葉で主催したエイズ予防啓発事業の参加者、および東京と札幌のゲイ・サークル参加者に対し質問票調査を実施した。イベントでの回収数(率)は146/175(83.4%)、サークルでの回収数(率)は112/153(73.2%)であった。合計では258/360(71.7%)であり、有効回答数は237であった。
90年代において欧米で展開されたエイズ予防理論のなかでも、できるだけ啓発介入に焦点化した理論研究に関する文献を調査・検討した。またエイズ予防財団海外研究者招聘事業の一環として、コロンビア大学「臨床・行動科学のためのHIVセンター」で、思春期のレズビアンおよびゲイのエイズ問題について研究し、CBO(Community Based Organization)との協力により介入方法の開発を行っているジョイス・ハンター博士を招聘し、同性愛者の予防啓発介入方法について検討をおこなった。
②予防啓発手法に関する研究
同性愛者等を対象としたHIV/エイズの啓発手法を開発するにあたり、啓発のための方法論を構築した。具体的には、啓発対象を「個人」と「環境」にわけ、介入プログラムの開発を試みた。「個人」を対象とするものは、コミュニティにあるニーズに沿って企画を実施し参加者間の相互作用を重視した集団型プログラムと、主に1対1の啓発手法をとる個別型プログラムとした。「環境」を対象とするものはHIV/エイズやHIV検査についての知識やメッセージの普及を行う情報普及と、コンドームや潤滑剤などの普及を目指す資材普及とした。さらに、対象ごとに設定された啓発手法の妥当性の検証及び改善点を明らかにするために、質問票調査を用いながら効果評価を行うための枠組みを構築した。
③NGO連携モデルの構築
個別施策層対策としてNGOが行なう役割を明確にしつつ、行政とのパートナーシップも視野に入れたあり方を地域固有の状況を勘案しつつNGO連携モデルは構築されることが望ましいと考え、多様なデータや資料をもとに継続地域である関東圏に加えて、北海道(札幌)、東北(仙台)、四国(松山)、九州(福岡)、沖縄(那覇)という4つの新規対象地域を選定した。これら対象地域の選択基準としては、①ゲイ・コミュニティが繁華街として存在している、②同性間施策が未展開/本格化していない、③未展開地域における地域間バランス、が挙げられる。こうした基準に対して該当地域におけるNGOの有無、啓発施策の有無を照合した結果、新規対象地域は①拡大支援型、②新規開拓型、③NGO不在型という3つの類型に分類することができた。
以上のような類型にしたがって、モデル構築の経過を記録し、プロジェクトの経過を追跡するなかで浮かび上がる課題を整理し、検討・考察を行なった。本プロジェクトは現在展開中であるので、効果評価を含めた最終的な報告は次年度以降に行なうことにする。
④行政サービスとの連携に関する研究
1)個別施策層対策に関する調査
個別施策層対策に関する郵送・自記式質問票調査によるコホート調査を全国109ヵ所のエイズ対策業務主管課に実施(時期:2001年2月~3月/方法:郵送・自記式質問票調査)。その内訳は、地方自治体47、政令指定都市12、中核市27、特別区23の計109ヵ所となっている。質問票は、①個別施策層対策に関する認識、②個別施策層対策として挙げられている各項目の進捗状況、③個別施策層対策を実施するうえでの阻害要因、④現状で必要な情報および支援内容の4カテゴリー、計98問で構成されている。回収総数は108通になり、回収率は99.1%であった。
2)行政サービスとの連携モデルの研究
沖縄県との共同研究として、a)当事者参加NGOの不在地域における行政との連携、b)地域の保健所を活用した個別施策層対策のあり方を検討した。
⑤HIV感染者/エイズ患者の人権侵害事例の対応方法及び相談窓口普及に関する研究
HIV感染者/エイズ患者が解決を必要とする問題のうち、法律的対処が必要な問題について、①問題の性質の把握、②必要な相談窓口の確保・普及、③迅速な具体的な解決への移行、について研究し、必要な政策提言を行う。
本年度においては具体的相談窓口を設け、直接感染者・患者や関係者からの法律相談を受けるとともに、必要に応じて、問題解決機関や法律専門家の紹介、更には問題解決のための支援(共同行動)を行うことによって、具体的問題点の把握と問題解決手法検討のための情報収集を行った。
⑥学校現場におけるHIV感染者/エイズ患者の人権教育に関する研究
HIV感染者がみずから学校教育の場で講演を行なうことにより、エイズについての知識および感染者/患者に対する人権・共生意識の向上の効果について明らかにするために、質問票調査を実施した。2000年10月~12月にかけて東京都内および千葉県の中学校と埼玉県内の高等学校の授業においてHIV感染者による講演と生徒による質疑を中心とするエイズ教育を、授業内(45分)において実施した。HIV感染者によるエイズ教育の効果をみるために、HIV感染についての知識およびHIV感染者/エイズ患者に対する態度についての質問票を作成し、講演前・講演後・講演実施から3ヶ月後の3度にわたって質問票調査を実施した。
結果と考察
C.研究結果及び考察
①同性愛者等の知識・性行動に関する研究
(1)過去4年間の知識や性行動の比較
過去4年間の知識や性行動の比較を行ったところ、一般知識および感染リスク行為の認識については正確な知識の普及が進んでいると考えられた。特定のパートナーとの性行動においては、過去4年間でコンドームなしの口内射精の割合が上昇したが、肛門内射精の割合は大きな変化が見られなかった。その場限りの相手との性行動では、口内射精の割合は減少したが、肛門内射精の割合が上昇した。
12年度の解析結果ではSTDについての知識が他と比べ正答率が低かった。HIV感染リスク行為についての認識では、いずれの項目も正答率が89%を上回った。特定のパートナーとの性行動では、フェラチオをした者のうち約1/3がコンドームなしの口内射精を経験し、アナル・インターコースをした者のうち約半数がコンドームを使用していなかった。その場限りの相手との性行動では、フェラチオをした者のうち約1/10がコンドームなしの口内射精を経験し、アナル・インターコースをした者のうち約1/3がコンドームを使用していなかった。
性的リスク行動とリスク規定要因について重回帰分析を行ったところ、コンドーム使用の意思が性的リスク行動に強い相関関係があるとともに、コンドーム使用に関する周囲の認識がやや強い因果関係を持っていることが明らかになった。
(2)HIV予防理論に関する研究
啓発介入により結びつくような予防理論モデルの開発のために、これまで欧米圏で行なわれたHIV予防理論の有効性と限界を検討した。認知行動モデルは、啓発介入に主眼をおいたモデルである一方で、HIVリスク、あるいはセイファーセックスを阻害する要因を構成する諸要素に関する概念が分節化されていないために、調査と介入を統合したモデルとしては不十分であることがわかった。認知環境モデルでは、リスクを構成する諸要素間の関連性を明らかにすることが可能である反面、啓発介入に活かすことが難しいことが明らかになった。リスク・アセスメントは、リスクを構成する諸要素を査定し、リスクがどのような要因から生じているかを把握することが可能であり、さらにそれらの諸要素を質問票を用いて調査することにより、定量的に測定することが可能であった。以上を踏まえ、本研究ではリスク・アセスメントの手法に依拠しながら査定を行なうことにした。さらに、日本各地の協力関係にあるNGOの協力を得て、啓発介入のための活用に向けた質問票を作成した。
②予防啓発手法に関する研究
集団型プログラムでは、行政との連携で実施を行った予防啓発ワークショップ・セミナーを実施しHIV/エイズについての行政サービスの認知の向上を促すプログラムを実施するとともに、コミュニティのニーズを掘り起こしながら啓発の機会の提供を継続した。プログラム参加経験者と初参加者を比較することで前年度以前のイベントの効果評価を行ったところ、イベント参加が一般知識や感染リスク行為認識の上昇に影響を与え、その場限りのパートナーとのセックスにおいてHIV感染リスク行動を減少させたことが明らかになった。次年度の集団型プログラムの実施にあたっては、リスク・アセスメント調査の結果を踏まえ、啓発介入プログラムに活かす予定である。
個別型プログラムでは、HIVリスク要因にさらされている個人へのリスク軽減を目的として、日本全国および比較的広い年齢層にアプローチするため全国規模で無料のSTD電話相談としてSTD情報ラインを実施した。集計により全国の都道府県から電話相談があり、幅広い年齢から相談があったことが明らかになった。電話での聞き取りに基づく質問票調査をおこなったところ、利用者のSTD罹患経験者の占める割合が高く、STD感染について切実かつ情報を必要とする層が情報ラインを利用していることが明らかになった。
情報普及では、啓発介入における最も基本的な取り組みとして、平成11年度に行政及び複数のNGOによって共同で作成されたパンフレット「僕らのとなりのHIV」の製作過程を分析・考察した。作成にあたっては、NGOによる日常の相談活動、普及啓発活動の経験から導きだされた観点を活かしながら、男性間の性的接触に明確に焦点を当てた予防情報が重視されていた。なお、本資材は年度末の時点において、複数のNGOによって約4万部が配付されている。また、本資材の普及による効果を知るために質問票調査を実施した。その結果、本資材によってエイズについての一般知識および感染リスク行為についての認識の上昇、およびHIV/STD検査意思の上昇ならびに受検行動を促すことになった。また、情報・資材普及の現状及び介入の効果を明らかにするために、質問票調査を実施した。屋内のハッテン施設でのコンドーム入手割合は今年度44.6%で、14年度の目標値を65%に、屋内のハッテン施設でのセイファーセックスの情報の認知割合は今年度61.6%で、14年度の目標値を80%に、『僕らのとなりのHIV』の所有割合は今年度51.5%で、14年度の目標値を70%に、ゲイ向けのエイズ/STDの電話相談認知割合は今年度73.4%で、14年度の目標値を90%に設定した。
③NGO連携モデルの構築
今年度の新規対象地域は、北海道(札幌)、東北(仙台)、四国(松山)、九州(福岡)、沖縄県(那覇、沖縄)の5地域である。継続展開地域は関東(東京、横浜、川崎、船橋、大宮)である。新規対象地域を、拡大支援型(札幌、仙台)、新規開拓型(松山、福岡)、NGO不在型(沖縄県)の3類型に分け、拡大支援型にはNGOへ方法論の提供・啓発における連携を、新規開拓型には当事者団体への新規呼びかけ・連携・情報普及を、NGO不在型には行政と研究班の連携による啓発の展開を行った。とりわけ平成12年度には、各地域NGOとの関係構築に焦点を絞り、共同プロジェクト発足に向けた意見交換やコミュニケーションに多くの時間を割いた。また、そうした関係作りの過程において、拡大支援型地域ではリスク・アセスメントの方法論の提示と共有、関東地域における啓発介入に関する情報提供、今後の啓発における連携について具体的な検討を行なった。新規開拓型地域では、今後核となるグループや個人にエイズ予防啓発に向けた共同プロジェクトについての働きかけを行い、資材提供やその配布方法の共有を行ない、実際の啓発資材の配布にまで至った。NGO不在型においては、研究班と行政担当者の共同研究の枠組みを検討し、研究班からは、行政からのアプローチ可能なものとして、専門家研修、情報普及、抗体検査の受検情報・相談環境の整備等の提案を行い、平成13年度に取り組みを開始する検討を行なった。
④行政サービスとの連携に関する研究
個別施策層対策に関するコホート調査の質問票を開発し、調査を実施した。アンケート項目は、主に同性間の個別施策対策の実施に関する内容とし、施策実施上の障壁や課題、国への要望、研究班への要望、専門家研修/対応手引書の有無、NGO支援策/予算化の有無、相談窓口/啓発冊子の有無、検査の情報普及状況、などを含めた。
個別施策層のなかでは、「青少年」にとりくむ自治体は多かったが、「同性愛者」を実際の施策対象として挙げている自治体はきわめて少ない。また同性間対策についての認識に関しては、感染者数の6割以上が同性間であるような自治体でも施策の必要性を感じていない自治体は4割あり、認識と現実との格差が見られた。さらに現在のところ、予防指針に即して施策が進捗している自治体はきわめて少ない。一般の地域住民への啓発に関しては施策実施率が高く、検査体制のとりくみや夜間・休日のHIV検査の実施、相談機関の紹介等に関しては5割前後の割合で比較的実施されていた。適切な医療提供のための手引書作成や同性愛者向けの啓発資材作成といった施策はほとんどの自治体では行われていないことがわかった。同性間対策の必要性を感じている自治体でも施策を実施できていない、すなわちなんらかの理由で施策が阻害されている自治体が存在することがわかった。阻害要因としては、具体的な方法を見つけにくい、情報を伝えるルートがない、協力するNGOやグループがない、といった項目が挙げられる。
⑤HIV感染者/エイズ患者の人権侵害事例の対応方法及び相談窓口普及に関する研究
本年度においては、実際に感染者/患者のための法律相談窓口を設け、相談を受けるとともに、必要な助言、問題解決のための専門家や問題解決機関の紹介を行った。相談の中から従来型の人権侵害への対処のほかに、QOL(生活の質)向上のための法律的援助を求める人たちの存在が明らかになった。また、事例検討を踏まえ、分野を類型化(医療/労働/プライバシー/私人間/債務/パートナーシップ/生命保険関係)し、事例対応マニュアルの作成を開始した。
⑥学校現場におけるHIV感染者/エイズ患者の人権教育に関する研究
(1) HIV感染者の講演による教育効果
感染体液についての知識では、中学生・高校生ともに、講演前と比べて講演後では正答率が有意に上昇し、また3ヶ月後でも講演前と比べて正答率が有意に高かった。以上の結果から、HIV感染者による講演というエイズ教育の実施によって、一定の教育的効果を得ることができた。
感染者/患者に対する態度については、中学生・高校生ともに、講演前と比べて講演後には5項目すべてにわたって有意に偏見的態度が減少したが、3ヶ月後には講演前と比べ有意に減少した項目は見られなかった。以上の結果から、HIV感染者による講演というエイズ教育の実施によって、講演直後においては大きな効果を得ることができたが、3ヶ月後という一定期間の経過後にはその効果は持続しなかった。感染者/患者との共生につながる態度の変容には、長期的な取り組みが必要であることが示唆された。
(2)本調査の体制づくり
平成13年度における本調査の実施に向けて調査協力機関との折衝、研究デザインの構築、および質問票の改訂を行なった。本調査の実施にあたっては、国立大学等保健管理施設協議会エイズ・感染症特別委員会に協力を依頼し、平成13年4月より計8大学で調査を実施することが決定した。
(倫理面への配慮)
同性愛者及びHIV感染者/エイズ患者を含めたNGOが主体となる研究チームを構成し、幅広い関係者の参加を得て研究事業を進めた。また、研究に協力する当事者個人や当事者団体を、研究対象としてではなく研究の対等なパートナーとして位置付けた。調査対象者には調査の主旨について十分な説明と同意を得て行った。
結論
E.結論
今年度本研究は、エイズ予防指針にもとづく各地域の施策の実施と連動する形で、適切な情報提供や手法研究結果を提供していく枠組みを構築した。
1)本年度の達成点
①2つの領域「個人のリスク」「生活・コミュニティ環境」から各地域毎のリスク要因データが得られる研究体制を構築し、②介入手法として「個別型」「集団型」「情報普及」のパイロットモデルを開発・実施した。③国内で新規に5地域(北海道、東北、四国、九州、沖縄)のNGO連携モデルの共同プジェクトを発足させ、各地域で啓発介入を開始する準備を行った。
さらに④個別施策層対策に関する自治体施策の現状調査を実施し、各自治体における個別施策層対策導入における阻害要因と課題を明らかにした。NGOと行政施策という双方の役割を明らかにし、各地域での実際の施策において連携する上での調査の枠組みを構築したことにより、次年度以降の効果評価を伴う啓発介入の実践に繋げることができた。
2)研究成果の学術的・国際的・社会的意義について
エイズ予防指針に定められた個別施策層である同性愛者に対するとりくみは、地域の自治体の自主性ではなかなか展開が困難であり、本研究の取り組みとして国内新規5地域で同性愛者に対するとりくみが開始された意義は大きい。
また、国内のエイズ研究において、行動科学における心理社会的モデルの試みが少ない中で、リスク・アセスメントにもとづいた改良モデルを導入した。このことは、国際的なMSMを対象とする行動科学研究のレベルに近づく重要な通過点と考えられる。
3)今後の展望について
今年度培ったNGOとの連携を基礎に、行政との連携を進め、新規5地域でリスク・アセスメントおよび啓発介入を本格化させる。リスク・アセスメント調査は、プレ調査に用いた質問票にもとづき、全国6地域で本調査を実施するため現在準備中である。査定データは、同性間感染のリスク要因に関する体系化されたものにし、各地域での普及啓発の立案ヘ反映させる。NGO連携モデルとして次年度はそれぞれ、拡大支援型および新規開拓型には、「行政への呼びかけ、リスク・アセスメントの実施、集団型プログラムの実施、情報・資材の普及」を、NGO不在型には、「情報普及、専門家研修、抗体検査の受検情報・相談環境の整備」を実施する。
また、今年度の環境面へのプレ調査結果を踏まえ、啓発介入の目標として14年度の2年後に、コンドームの配置を50%、情報の掲示を60%、パンフ所有を70%、電話相談認知を90%にすることを目処に対象地域で展開を試みる。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-