エイズに関する非政府組織の活用に関するモデルプラン策定研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000566A
報告書区分
総括
研究課題名
エイズに関する非政府組織の活用に関するモデルプラン策定研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
我妻 堯(社団法人国際厚生事業団)
研究分担者(所属機関)
  • 長谷川敏彦(国立医療・病院管理研究所)
  • 桜井賢樹(財団法人エイズ予防財団)
  • 内田卿子(社団法人東京都看護協会)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 エイズ対策研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
40,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究においては、我が国においてエイズ対策活動を行うNGOの実態把握、諸外国のNGOと行政との協調のモデルケース研究、行政とNGOとの協調エイズ対策モデルプランを完成させることを目的とする。
研究方法
1)海外のNGOと行政とのきょうちょうモデルプラン策定、2)個別NGO調査国内外のエイズNGO組織比較とそのあり方、3)国内エイズNGOの分野別活動分析およびネットワーキング、4)「エイズ・ピア・エデュケーション」の全国展開のためのシステム構築に関する研究
結果と考察
1)モデルプラン策定~今年度はモデルプラン策定に向けて、海外の政府とNGOとの協調モデルを研究した。対象国は米国及びヨーロッパ諸国、タイ、フィリピン、カンボジア、ベトナム、ミャンマーとした。米国においては、NGO活動は社会的認知度も高く、様々な分野でのモデルが参考になったが、所謂行政がNGOに事業そのものを完全委託する形での活動が多く、日本のケースに当てはめた場合の社会的状況の違いが際だった。一方、カンボジア及びミャンマー等アジア諸国におけるコンドームプロモーション及び啓発事業におけるNGOとの協力においては、行政の得意とする分野とNGOの得意とするする分野でのデマケーションがうまくなされ、また、行政が上に立ち、NGOを指導監督するのではなく、パートナーとしての共存が見られたことは今後の我が国でのモデルプラン策定の参考に大いに役立つものと思量された。
2)個別NGO調査国内外のエイズNGO組織比較とそのあり方~エイズの問題は広範に社会的要因が関連しているために極めて複雑で、政府はもちろんのこと、それ以外にも様々な機関が社会の中で対策を担わなければならない。実際、アドボカシーやケアの直接的な影響などNGOが果たしている役割も多い。そこで、NGOと政府が効果的に連携することによって対策を推進することを目指して、「NGOの経営の改善法」「NGOの機能の評価法」「NGOとの契約の方法」等について全国のNPO経営学者約十数名にそれぞれ課題を分担し研究した。NPOのケース・スタディーや諸外国での調査、文献レビューとディスカッションなどを通じて分析・検討をおこなった。研究の結果、NGOと一言でいっても、経営主体、規模、あるいは得意とする分野など様々であり、経営の健全性についても大きなばらつきがあることが判明した。このような状況の中で、政府がNGOに参加を求めて対策の一部を発注するには、NGOの「財務状況」や「活動のベンチ・マーク」等の評価が必要である。「契約形態」も一括から対策の内容に対応して選択することが必要であることが判明した。更に、NGOの経営方法としては、健全なる政府機関との関係「パートナーシップ」は経営安定の条件であることが判明した。
3)国内エイズNGOの分野別活動分析およびネットワーキング~今年度は、日本のエイズNGOの歴史的背景の理解、エイズNGOの組織形態、活動状況の把握、エイズNGOに関する情報の発信を具体的な研究課題とした。歴史的背景の理解については、エイズNGOに関する歴史年表を作成した。NGOの組織形態・活動状況の把握については、関東地区のNGO15団体に社会科学的アプローチで半構造化面接による聞き取り調査を実施し、各団体の活動状況をとりまとめた。情報発信については、関心をもつ全ての人々がアクセスできるホームページをインターネット上に作成中である。
4)「エイズ・ピア・エデュケーション」の全国展開のためのシステム構築に関する研究~今年度は全国展開のためのシステム構築に向けて、エイズ・ピア・エデュケーションの教育効果を評価するためのアンケート調査を実施した。アンケートは昨年度エイズ・ピア・エデュケーションを実施した7施設にのうち、6施設の受講者443名に対して行い、有効回答は386件、87.1%の有効回答率であった。エイズ・ピア・エデュケーションは青年期の人々がエイズを自分たちの問題として身近に感じ、自己の意志決定で感染予防行動が取れるとともに感染者との共生の意識が持てることを目的としたプログラムであるが、受講前後のイメージ比較では、全ての項目について、後のイメージ得点が高くなっており、本プログラムによりエイズやセックス及び命のイメージをポジティブに変化させる効果が確認された。
結論
NGOの活動は、患者や感染者の生活に深く入り込み、大きな力となっているといえる。社会的に患者や感染者は支援を必要としており、その支援の中身も多種多様に亘っており、きめの細かい支援が求められているのが現状であり、そういった所謂「痒いところに手の届く」支援を実施していくことが今後の我が国のエイズ対策において必要不可欠であると思量された。こういった支援を行政のみで行うことは事実上、不可能であることから、NGOの活動は益々重要性を持っていくこととなり、行政との連携も重要となってくるが、今回の研究で明確になったことに、NGOそのものが有する特殊な傾向を無視して、行政との連携を図っていくことは難しいということがある。一方で行政がこういったNGOの特殊な傾向を十二分に理解しているかどうかにつき、疑問が提起された。今次研究においては、NGO活動の積極的な情報公開をする場の必要性と行政側の正しいNGOの理解が促進されることがNGOと行政との協調の基礎的条件となると結論された。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-