HIVの検査法と検査体制を確立するための研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000556A
報告書区分
総括
研究課題名
HIVの検査法と検査体制を確立するための研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
今井 光信(神奈川県衛生研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 杉浦 亙(感染症研究所)
  • 加藤真吾(慶応大学医学部)
  • 平林義弘(国際医療センター)
  • 白阪琢磨(国立大阪病院)
  • 岩本愛吉(東大医科学研究所)
  • 関根大正(都立衛生研究所)
  • 大石 功(大阪府立公衛研)
  • 金田次弘(国立名古屋病院)
  • 近藤真規子(神奈川県衛生研究所)
  • 吉原なみ子(感染症研究所)
  • 升森 隆(東京都衛生局)
  • 山中烈次(日赤血液事業部)
  • 桜井賢樹(エイズ予防財団)
  • 河原和夫(東京医科歯科大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 エイズ対策研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
70,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIVのスクリーニング検査とHIV感染者のフォローアップ検査(薬剤耐性検査等)に関して、各検査法の開発・改良を行い、検査精度の向上を計ると共に、より効率的で効果的な検査体制を確立するための基礎的研究とモデル実験を行うことが本研究班の目的である。
3年計画の1年目にあたる本年度は、スクリーニング検査に関しては、保健所等のHIV検査の機能強化のため、HIV核酸増幅検査の試験的導入のため検査法の開発と一部試験的実施を重点目標として研究を行った。また、ジェノタイプの薬剤耐性検査に関しては研究室レベルでの検査法の確立とその臨床応用研究を、またフェノタイプの薬剤耐性検査に関しては、それぞれの研究室で開発中の各種検査法の研究室レベルでの確立を本年度の重点目標として研究を行った。
研究方法
HIVのスクリーニング検査に関しては、保健所等のHIV検査への核酸増幅検査の導入のためプール遠心濃縮法の検討を行った。HIVの抗体検査に比べ、核酸増幅検査では感染初期のウインドウ期をおよそ2週間(11日間)短縮可能であるが、核酸増幅検査は抗体検査に比べ検査法が複雑でまた検査費用も1万円以上かかるなど保健所の無料検査への導入には困難も多い。このため、より実用的なスクリーニング検査用の核酸増幅検査法として"プール遠心濃縮法“を開発し保健所検査への試験的導入を行いその技術的また行政的問題点と効果等を検討した。また、この他にも迅速診断法・抗原抗体同時検査法等の検査法の検討と評価およびそのスクリーニング検査への効果的応用法について検討した。 ジェノタイプの薬剤耐性検査に関しては、国立感染研で開発した検査法、市販されている検査キット(ABI社)を用いた方法、委託による検査(VIRCO社)等各種方法について比較検討を行うと共に、各地の衛生研究所への検査法の技術移転を行った。また、フェノタイプによる薬剤耐性検査についてはMAGIC-5を用いた国際医療センターでの方法、PBMCを用いた方法、遺伝子組替えによる方法等が各分担研究者により開発され、臨床応用に向けての研究が現在行われている。
結果と考察
(本年度の研究成果と今後の課題):
I スクリーニング検査関連
1.スクリーニング検査法の開発・検討・評価
迅速診断試薬(ダイナースクリーン)の評価:試薬の検出感度・特異性等の検討を行い、目的・状況により保健所検査への導入も可能なことを明らかにした。
抗原/抗体同時検査試薬の検討:感染初期パネル血清を用いた検討により、感染初期の検査に特に優れていること、従って抗体検査での判定保留例の二次検査用に極めて優れていることを明らかにした。
核酸検査法の検討:核酸検査法をスクリーニング検査への効率的応用のため、検体のプール遠心濃縮法の開発を行い、多数検体の核酸検査が比較的安価で感度良く可能なこと、また保健所検査に応用可能なことを明らかにした。
検査指針の作成:検査現場からの要望が多かったため、HIV検査陽性検体の確認検査の進め方に関して検査指針(案)の作成を検討中。 
2.保健所等のHIV検査体制の機能強化
HIV検査の実態調査:全保健所へのアンケートにより保健所のHIV検査・相談業務の実態調査を行い,その改善策を検討した。
HIV検査の検査案内ホームページの作成:現在、神奈川・東京・大阪等の保健所の情報を順次ホームページに掲載中。
保健所HIV検査への核酸検査の試験的導入:神奈川、東京、埼玉の一部保健所で試験的に実施中。
特別検査・相談機関との連携:南新宿の検査相談機関への核酸検査の試験的導入
地域の医療機関との連携:大阪の一部医療機関でのHIV検査に試験的に導入
NGOとの連携、木原班・市川グループとの連携:(計画中)
検査相談マニュアルの整備のためのアンケートの実施:(現在解析中)
血液センター(日赤)との連携:(献血者へのHIV検査機関情報の提供を検討中)
海外でのHIV検査体制に関する情報の収集:(アンケート情報の解析中)
II 薬剤耐性検査関連
1.ジェノタイプ検査法の開発と各種検査法の比較検討および評価。
検査法の検討:in house 法、ABI法、VIRCO社法のいずれもおよそ2000コピー/ml以上ではシークエンス可能。また、プライマーの改良によりサブタイプEの解析も可能となり、現在変異のデータを蓄積中。
治療開始前の薬剤体制変異:治療前に薬剤耐性変異株が検出される例があった。
(頻度についてはデータの蓄積が必要→今後の課題)
臨床経過と薬剤耐性変異:各分担研究者が薬剤耐性検査を実施し、そのデータを蓄積し解析中。(結果の表示・解釈等→今後の課題)
2.フェノタイプによる薬剤耐性検査法の開発と検討: プラーク法、MAGIC-5法、リンパ球/MAGIC-5法等を開発し、その特性、実用性等を臨床検体について検討中。
(検査法の実用化、検査処理能力の拡大→今後の課題)
3.バーチャルフェノタイプへのアクセスとその評価:SRLとの共同研究により、SRL介してVIRCO社のバーチャルフェノタイプ検査へのアクセスが可能になり、またフェノタイプ検査との比較によりバーチャルフェノタイプの有用性を検討中)
4.薬剤耐性検査の研修 (本年度、11衛生研究所を対象に実施。今後も継続)
5.薬剤耐性検査のガイドラインの作成。(米国国際エイズ会議の専門家の耐性検査に関する意見書を翻訳した。日本の実情に合った指針の作成→今後の課題)
6.感染細胞の検出・定量法の検討 (in situ法による HIV-DNA定量法を確立した)
7.HIV定量検査(PCR)のコントロールサーベイの実施 
(問題施設については改善を指導した。今後も継続が必要)
結論
本年は3年計画の1年目であり、HIVの各種検査法の開発・比較検討および検査体制の現状把握等に重点をおいた研究が主であったが、今後、スクリーニング検査と薬剤耐性検査の両検査体制を構築する上で重要な成果が多く得られた。次年度は、これら成果に基づき、保健所等のHIV検査への核酸増幅検査の導入の拡大、保健所検査を補完するため民間医療機関やNGOとの連携によるHIV検査機能の強化、ホームページ(検査案内)の充実や、日赤との連携による情報提供機能の強化等についての研究を重点的に行う計画である。
また、薬剤耐性検査関連では、ジェノタイプ検査の臨床応用のための研究を重点に検査体制を整備すると共にフェノタイプ検査に関してはその検査法の確立のための研究を重点的に行う計画である。

公開日・更新日

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