文献情報
文献番号
200000553A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染予防に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
竹森 利忠(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
- 狩野宗英(国立感染研)
- 俣野哲朗(国立感染研)
- 速水正憲(京大ウイルス研)
- 森 一泰(国立感染研)
- 奥田研爾(横浜市大医)
- 森川裕子((財)北里研)
- 保富康宏(三重大医)
- 杉村和久(鹿児島大工)
- 滝口雅文(熊本大医)
- 宮澤正顯(近畿大医)
- 小笠原一誠(滋賀大医)
- 水落利明(国立感染研)
- 水落次男(東海大工)
- 吉木 敬(北大医院)
- 佐多徹太郎(国立感染研)
- 神奈木真理(東京医科歯科大院)
- 牧野正彦(国立感染研)
- 阪井弘治(国立感染研)
- 向井鐐三郎(国立感染研)
- 高橋秀実(日本医大)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 エイズ対策研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
105,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究はHIV感染予防に関する手段を確立すること、またHIV感染に伴う主要病因を明らかにし、その予防に有用となる手段を確立することを目的とする。またこれらの技術の改良、開発に必要となる情報、材料、技術の整備に有用となる基礎的研究をこなう。
研究方法
(1)SIV DNAワクチン接種後12週後にSIVgag組み込みセンダイウィルスを接種した。接種後強毒SHIVを感染させワクチン効果を血中ウィルス量、CD4陽性T細胞数等で測定した(俣野)。また、各ワクチンのワクチン効果、免疫反応を測定した(狩野)。 (2)SIVmac 239外被蛋白質結合型糖鎖を欠く変異ウィルスを作製し、アカゲザルに感染後親株SIVmac239ウィルスを接種し、ワクチン効果を判定した(森)。 (3)nef欠損SHIVをアカゲザルの鼻腔粘膜に感染後、強毒株であるSHIV89.6Pに対する感染させ感染防御能を解析した(速水)。 (4)酵母細胞をGag蛋白cDNAで形質転換した。培養後培養上清中のVLPを精製し、ウイルス学的、生化学的性状を解析した(森川)。 (5)E型肝炎ウィルスORF2のC末にHIVenv中和エピトープを挿入し、VLPを作製し、BALB/cマウスシステムを用い免疫活性及び感染防御能を調べた(保富)。 (6)アデノ随伴ウィルス(AAV)にインフルエンザウイルスHA遺伝子を組み込み感染させ、インフルエンザウイルス株PR8/34に対する感染防御効果を検討した(奥田)。 (7)抗ヒトCCR5抗体を用いM13ファージデイスプレイライブラリーから単離された抗体結合ファージクローンによるR5 HIV-1の感染阻害能を検討した(杉村)。 (8)HLA-A11拘束性のHIV cladeBと共通するcladeE特異的CTLエピトープペプチドを合成した。HLA-A11ハプロタイプを示すHIV感染者末梢血をペプチドで刺激しそれぞれのCTL活性を測定した(滝口)。 (9)フレンド白血病ウィルス(FLV)外被蛋白上のCD4陽性T細胞エピトープ合成ペプチドを(BALB/c×C57BL/6)F1マウスに免疫後、防御活性を観察した(宮澤)。 (10)Gag蛋白とコレラトキシンをマウス鼻腔に投与し、粘膜局所及び末梢リンパ組織に維持されるp24特異的T細胞のCTL活性を測定した。また各組織よりCTLクローンを確立し、CTL活性及び表現型を解析した(竹森)。 (11)インフルエンザHAをリポゾーム内に入れ抗CD40抗体とともに鼻腔に投与し、感染防御効果を測定した(小笠原)。 (12)人工糖脂質で被覆したリポソームにマウスレトロウイルスLP-BM5のGagペプチドを封入した。このリポソームをマウス皮下に投与後、感染防御効果を検討した(水落・次)。 (13)細胞内小胞内MHCクラスII複合体のプロセシングを解析した(水落・利)。 (14)ヒトCD4及び CXCR4またはCCR5遺伝子を発現するラット繊維芽細胞を確立しHIV-1感染させた。感染後さらに, cyclinT1およびCIITA遺伝子を導入しウイルスの産生を検討した(吉木)。 (15)3'末端にATの繰り返し配列を付加したSIVおよびHIVに対するオリゴヌクレオチドプローブを病理切片と反応させた後3末端AT配列に多くのハプテンを取り込ませ、このハプテンをHRP等の酵素で検出した(佐多)。 (16)SIVmac239ウイルス株感染後脳炎を発症したサル脳組織よりウイルス産生細胞株由来ウイルスの塩基配列を決定した(向井)。 (17)健常人末梢血よりアロ
抗原特異的T細胞株を樹立した。一方末梢血をPHAで刺激しHIVで感染後AZTとIL-2を添加し培養したT細胞を持続感染細胞として用いた(神奈木)。 (18)健常人末梢血より樹状細胞を樹立し、らい菌Thai53株あるいはBCG菌を感染させた。感染後T細胞への免疫応答を測定した(牧野)。 (19)SHIV-C2/1感染サル細胞よりSHIV-C2/1のクローンプラスミドを作製しCOS7に感染後培養上清中のウイルスを得た。ウイルス感染性はアカゲザル、カイクイザルを用いて解析した(阪井)。 (20)HIV-1env蛋白gp160特異的CTLクローンを標的細胞の存在下、非存在下で培養した後、最小認識エピトープペプチドで再刺激し細胞死の有無を調べた(高橋)。
抗原特異的T細胞株を樹立した。一方末梢血をPHAで刺激しHIVで感染後AZTとIL-2を添加し培養したT細胞を持続感染細胞として用いた(神奈木)。 (18)健常人末梢血より樹状細胞を樹立し、らい菌Thai53株あるいはBCG菌を感染させた。感染後T細胞への免疫応答を測定した(牧野)。 (19)SHIV-C2/1感染サル細胞よりSHIV-C2/1のクローンプラスミドを作製しCOS7に感染後培養上清中のウイルスを得た。ウイルス感染性はアカゲザル、カイクイザルを用いて解析した(阪井)。 (20)HIV-1env蛋白gp160特異的CTLクローンを標的細胞の存在下、非存在下で培養した後、最小認識エピトープペプチドで再刺激し細胞死の有無を調べた(高橋)。
結果と考察
(1) 新規ワクチン開発研究 (イ) SIVgag組み込みセンダイウィルスベクターと限局性SIVDNAワクチンとの併用接種により病原性SHIV感染に伴うウイルス血漿とAIDS発症が強く抑制された(狩野・俣野)。 (ロ)Nef欠損SHIVの経鼻投与が粘膜SHIV感染に対して防御効果を有することが示唆された(速水)。ウィルス外被蛋白上の糖鎖を欠失したSIVmacが弱毒生ワクチンとして有効な防御効果を有することが示唆された(森)。 (ハ)酵母細胞でHIVgag発現VLPを調整する技術が確立された(森川)。HIVenvエピトープ組み込みE型肝炎ウィルス由来VLPが抗env特異的免疫反応を惹起ることが示唆された(保富)。 (ニ)インフルエンザHA遺伝子組み込みAAVがインフルエンザ感染防御に有効であることが示唆された(奥田)。 (ホ)抗ヒトCCR5抗体を用いM13ファージデイスプレイライブラリーより濃度依存的にR5 HIV-1感染を阻害するファージクローンを単離した(杉村)。
(2)抗HIVまたはレトロウイルス免疫反応に関する研究 (イ)組織適合成抗原HLA-A-11拘束性のHIV clade B及びclade E共通の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のエピトープが同定された(滝口)。 (ロ)マウスフレンド白血病ウィルス(FLV)env上のCD4陽性T細胞活性エピトープに対応する合成ペプチドの免疫により、NK細胞を介した感染防御が誘導された(宮澤)。 (ハ)粘膜由来抗p24特異的記憶CTLが粘膜局所及び全身のリンパ組織に異なったCTL活性を有し、長期に維持されることが明らかとなった(竹森)。 (ニ)粘膜樹状細胞を活性化するとMHC class I 非拘束性にCTLを介した感染防御が誘導されることが示唆された(小笠原一誠)。 (ホ) LP-BM5のGagペプチドを封入したリポソームの投与で、ウイルス感染死に対する延命効果が得られた(水落・次)。 (ヘ)抗原提示の活性分子探索のための細胞株が確立された(水落)。 (ト)ヒトCD4/CXCR4/cyclinT1/CIITA遺伝子発現ラット繊維芽細胞にHIV-1を感染させると微量ながらp24蛋白の発現が認められた(吉木)。 (3)HIV感染における脳炎、免疫不全等の発症の解明と予防法の確立 (イ)HIV感染脳炎発症解析のために鋭敏な新規病理学的遺伝子発現解析システムが確立された(佐多)。 (ロ)HIV持続感染阻止のためのモデル系が確立された(神奈木)。 (ハ)樹状細胞を介したライ菌免疫反応活性が他の抗酸菌と比較し低いことが示唆された (牧野)。 (ニ) SHIV病原性検討のためSHIV-C2/1クローンウイルスが樹立された(阪井)。 (ホ) SIV感染脳炎発症ウイルスにはR5 SIVに特徴的な点変異が蓄積することが示唆された(向井)。 (ヘ)試験管内でGag特異的に活性されたCTLに抗原エピトープペプチドを添加すると細胞死が誘導された(高橋)。
(2)抗HIVまたはレトロウイルス免疫反応に関する研究 (イ)組織適合成抗原HLA-A-11拘束性のHIV clade B及びclade E共通の細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のエピトープが同定された(滝口)。 (ロ)マウスフレンド白血病ウィルス(FLV)env上のCD4陽性T細胞活性エピトープに対応する合成ペプチドの免疫により、NK細胞を介した感染防御が誘導された(宮澤)。 (ハ)粘膜由来抗p24特異的記憶CTLが粘膜局所及び全身のリンパ組織に異なったCTL活性を有し、長期に維持されることが明らかとなった(竹森)。 (ニ)粘膜樹状細胞を活性化するとMHC class I 非拘束性にCTLを介した感染防御が誘導されることが示唆された(小笠原一誠)。 (ホ) LP-BM5のGagペプチドを封入したリポソームの投与で、ウイルス感染死に対する延命効果が得られた(水落・次)。 (ヘ)抗原提示の活性分子探索のための細胞株が確立された(水落)。 (ト)ヒトCD4/CXCR4/cyclinT1/CIITA遺伝子発現ラット繊維芽細胞にHIV-1を感染させると微量ながらp24蛋白の発現が認められた(吉木)。 (3)HIV感染における脳炎、免疫不全等の発症の解明と予防法の確立 (イ)HIV感染脳炎発症解析のために鋭敏な新規病理学的遺伝子発現解析システムが確立された(佐多)。 (ロ)HIV持続感染阻止のためのモデル系が確立された(神奈木)。 (ハ)樹状細胞を介したライ菌免疫反応活性が他の抗酸菌と比較し低いことが示唆された (牧野)。 (ニ) SHIV病原性検討のためSHIV-C2/1クローンウイルスが樹立された(阪井)。 (ホ) SIV感染脳炎発症ウイルスにはR5 SIVに特徴的な点変異が蓄積することが示唆された(向井)。 (ヘ)試験管内でGag特異的に活性されたCTLに抗原エピトープペプチドを添加すると細胞死が誘導された(高橋)。
結論
局限性SIV DNAワクチン/SIVgag組み込みセンダイウィルス併用接種が強毒SHIV感染に対し、強い防御効果を示すこと、またnef欠損SHIV及び糖鎖欠損SIVmacが弱毒生ワクチンとして有効であることが明らかにされた。更にウィルス中空粒子(VLP)やアデノ随伴ウィルス(AAV)が粘膜免疫へのデリバリーとしての有効性が確認され、今後のワクチンデザインに有用となるHIV clade E,clade B共通の細胞傷害性T細胞(CTL)エピトープが同定された。一方、モデル動物実験系を用いて、レトロウィルス感染防御におけるNK細胞の役割、粘膜産生CTL記憶細胞の局在と性状などが明らかにされた。またHIV感染に伴う脳炎発症同定の新しい病理学的検査技術や潜伏感染を試験管内で再現するシステムが確立され、その他サルモデルでの脳炎発症ウィルスのトロピズムの確認、新たなSHIVクローンの確立等が行われた。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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