抗マラリア剤の探索研究 (総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000536A
報告書区分
総括
研究課題名
抗マラリア剤の探索研究 (総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
大村 智(社団法人北里研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
13,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
薬剤耐性マラリア原虫に有効な治療薬の開発をするために、北里研究所は世界保健機関(WHO)の熱帯病研究特別計画(TDR)の指導の下に、広く日本国内の企業14社及び所内から化合物等の提供を受け、抗マラリア剤のスクリーニングセンターとして、薬剤耐性マラリア原虫を用いin vitroモデルで活性の評価を行う。さらに、in vitroで有望な化合物はin vivoのネズミマラリア原虫感染治療実験モデルで評価を行う。
研究方法
In vitroスクリーニング方法はWHOが承認した方法に準拠する。すなわち、1次スクリーニングとして、提供された化合物等を添加したマラリア原虫浮遊液を96穴プレートにてin vitro系で培養し、化合物の抗マラリア活性を調べる薬剤感受性試験を行う。2次スクリーニングとしてin vitroでの培養動物細胞に対する殺細胞作用を調べ、低濃度で有効な選択毒性の高い抗マラリア剤を選択する。さらに、in vivoスクリーニング方法はWHOが承認した方法に準拠する。すなわち、ネズミマラリア原虫感染治療実験モデルを用い、 in vitroで有望な化合物を投与し、感染治療効果を調べる。
結果と考察
JPMWプロジェクトに参加している製薬会社14社より提供された1,859化合物についてin vitroで評価を行い有望な24化合物を得た。また、所内より提供された2,316検体についてもin vitroで評価を行い、有望株(抽出物)については独自で単離、精製を進めている。この過程で一糸状菌FKI-0266株の生産する抗マラリア活性物質はペプチド系抗生物質 leucinostatinであると同定されたが、本物質が優れた抗マラリア活性と中程度の選択毒性を示すという新規な知見が得られた。また抗生物質ライブラリーよりペプチド系既知抗生物質のhormaomycin の抗マラリア活性も新規な知見として得られた。さらに、前年度から課題であったネズミマラリア原虫を用いたin vivo感染治療実験モデルの構築を行った後、前年度分を含めたin vitro で有望な32化合物についてin vivoスクリーニングを実施し、in vivoで有効な3化合物を得ている。これらについてはさらに詳細なin vivo感染治療実験モデルにて評価中である。この過程で前年度から課題であったポリエーテル系抗生物質X-206のin vivo感染治療実験を実施した結果、皮下投与にて50%有効投与量(ED50値)0.53 mg/kg, 90%有効投与量(ED90値)0.96 mg/kgで有効であることが判明した。しかし、本物質は3mg/kg以上の投与では毒性を示し、治療域は狭い化合物であった。また、ポリエーテル系抗生物質(以下ポリエーテルと略す) は生体内で各種陽イオンとの親和性を示すことによりイオノフォアとして作用している。そこで、各種ポリエーテルについてin vitroでの抗マラリア活性と細胞毒性を評価し、各ポリエーテルに親和性の高い陽イオンの原子価を比較したところ、1価>1価及び2価>2価の順に抗マラリア活性と選択毒性が高いことが解った。これは、マラリア原虫感染赤血球と非感染赤血球におけるK+, Na+を含む陽イオンの役割が異なることを示唆するものであると考えられ、現在これらのポリエーテル群の一連の知見についての論文を投稿中である。
結論
In vivoスクリーニングで有効であった化合物については、新規な抗マラリア剤及びリード化合物の候補化合物と成り得るか、さらに詳細なin vivo 感染治療実験モデルにて評価する必要がある。本研究では3年間の研究期間内に抗マラリア剤探索のin vitro, in vivoスクリーニングモデルの総合的基礎研究体制構築と実施を行うことは出来たが、実施したスクリーニングの中から候補となる化合物を見い出すまでには至っていない。今後、本研究は新興・再興感染症研究事業として構築された本スクリーニングの基礎研究体制を基盤に、引き続きスクリーニングを
継続すべく厚生省国際課とWHO/TDRの連携による国際貢献事業として発展的してゆく予定である。

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研究報告書(紙媒体)

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