感染症及び感染症対策の国際的動向に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000503A
報告書区分
総括
研究課題名
感染症及び感染症対策の国際的動向に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
宮城島 一明(京都大学)
研究分担者(所属機関)
  • 下内 昭(結核予防会結核研究所)
  • 岡部 信彦(国立感染症研究所)
  • 古畑雅一(横浜市衛生局保健部)
  • 吉田 哲彦(横浜検疫所)
  • 森田 公一(長崎大学熱帯医学研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
16,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国際化・グローバル化の進展に伴い、感染症対策はますます国際的な対応が求められるようになっている。特に、重篤な健康被害をもたらし極めて伝染性の高い新興感染症(感染症予防法一類相当の感染症)の対策、あるいは、旧来から知られた感染症でありながら世界的に流行再燃の兆しのある感染症等については、各国政府の相互調整のもと、総合的かつ国際的な対処が必要である。そこで、本研究では、各国における感染症対策に関連する諸制度の調査研究を行い、我が国における感染症対策の向上に資することを目的としている。特に、我が国では感染症対策に関する法制度の見直しを行って間もないが、感染症対策の分野においては、世界各国の動向を不断に把握し、柔軟かつ迅速に現行制度の評価と見直しを行っていく必要がある。本研究ではその調査結果を直接に行政にフィードバックしていくことをねらうものである。
研究方法
本研究は、(1)外国政府・研究機関等に対する文書による資料要求、(2)外国における現地視察・聞き取り調査、(3)インターネット等を用いた資料収集、などの方法を組み合わせて情報を収集し、これを国内の情報等と対照しながら分析するという方法を用いる。調査研究の対象とする分野は、予防接種の国際的動向、麻疹対策の国際的動向、結核対策の国際的動向、感染症情報システム、諸外国の地方自治体における感染症対策、検疫活動における国際感染症対策、ウイルス対策の国際的動向、その他である。
結果と考察
研究初年度である平成12年度は以下の研究成果を挙げた。予防接種の国際的動向の分野では、先進工業国を中心に、インフルエンザ予防接種の制度を比較分析した。結核対策の国際的動向については、オランダおよび台湾において調査を行った。感染症情報システムの分野では、フィリピンと韓国についてサーベイランスシステムの現状を把握し、特に、麻疹対策の国際的動向として、米国における予防接種制度の経緯とその国家戦略を調査した。諸外国の地方自治体における感染症対策としては、北米と大洋州を対象に主としてインターネットを介して情報を収集した。検疫活動における国際感染症対策としては、結核患者が乗船していた船舶に対する対応、検疫所における腸管感染症対策、検疫実績のデーターベース化とその活用について研究を行った。ウイルス対策の国際的動向としては、世界各国の取り組み状況を知る指標としてBSL4実験をもつ研究機関の状況を調査し総括し、1999年に発生した西ナイルウイルス脳炎流行時の米国保健衛生当局の対応を分析した。その他としては諸外国におけるC型肝炎対策の現状を調査した。
結論
平成12年度の調査からは、(1)諸外国における感染症対策の状況が以外とわが国に紹介されていないことが改めて確認され、(2)アジアを中心とする近隣諸国の情報と米州あるいは欧州の工業国における情報の双方を積極的に収集分析することの重要性が示された。さらに、(3)一類感染症などを含むウイルス感染症対策などの面で日本における体制構築に関して改善の余地があることが指摘された。平成13年度には調査対象国を更に拡大し、また、現地聞き取り調査も引き続き積極的に実施することにより、行政に還元可能な情報の集積を図っていく必要がある。その上で、研究第三年度目までに、中央集権・地方分権などの行政組織論的視点も追加して、わが国において望まれる近未来の感染症防御態勢を提言していく予定である。

公開日・更新日

公開日
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更新日
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