大規模感染症発生時の緊急対応の在り方に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000502A
報告書区分
総括
研究課題名
大規模感染症発生時の緊急対応の在り方に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
山本 保博(日本医科大学)
研究分担者(所属機関)
  • 今西康二(自衛隊中央病院)
  • 原口義座(国立病院東京災害医療センター)
  • 岩本愛吉(東京大学医科学研究所)
  • 大久保一郎(筑波大学社会医学系)
  • 小坂健(国立感染症研究所)
  • 小竹久平(国立感染症研究所)
  • 中村修(慶應義塾大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
32,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
既知および予想される大規模感染症やbioterrorism発生時に迅速かつ適切な対応ができる為の事前準備のアジェンダと、国内外の機関・人材・対応機材等のリソースリストを作成し、新しい時代に対応できるような体制の再構築と法体系の見直しを促進すること。
研究方法
1)国内における大規模事案のケーススタディを行う。①;同一施設内で発生した事案、②;①を含む広い地域に渡って発生した事案、③:バイオテロリズムの事案に分けて、インターネットで公開されている情報や、図書館での文献収集や官庁関係の公開情報収集を手掛ける。機密度や情報量に応じて発生現場に調査団を派遣する。2)諸外国の状況調査をする。1)と同様な計画で必要であれば現地に調査団を送り、情報収集をする。平成12年度は1)2)の情報収集を行う。
結果と考察
1)国内における大規模事案のケーススタディとして九州・沖縄サミットに対応し、事前準備として「九州・沖縄サミットにおけるBio-terrorismに対する行動計画」という行動計画マニュアルと国内外の機関・人材・対応機材等のリソースリスト、実際に見たことがない事態に備えて絵や写真で解説された感染症疾患別マニュアル「目で見るバイオテロリズム」を作成した。期間内の対応として、協力医療機関と連携強化されたサーベイランス体制を構築・試行し、評価した。その結果、情報交換の段階で混乱が生じることや迅速な病原体検索、検査機関との協力体制を強化する必要性があることなど、今後のサーベイランス体制の在り方に関する問題点が明らかになった。ケーススタディとしての九州・沖縄サミットでの対応をたたき台にして7つの分担研究のプラニングがなされた。①大規模感染症の発生時に早期に診断を確定し、より効果的な対策を立てるための「感染症の特定」、サーベイランスに関する研究として②「感染症の疫学と大規模感染症発生の対応」③「感染症関連機関との連携」④災害訓練を施行して医療対応体制の整備・充実、医療スタッフの知識・医療対応技術の向上へ向けての教育カリキュラムを策定する「救急医療機関と感染症大規模発生」⑤自衛隊との協力体制は不可欠なので大規模感染症発生時において自衛隊がいかに地方自治体の対処に効果的に支援し得るか研究する「自衛隊の立場から見た感染症危機管理 」⑥大規模感染症発生時における発生状況の把握および情報公開を効率的かつ適格に行う方法に関する調査研究である「情報の管理、感染症危機管理理論の確立」⑦大規模感染症発生によって経済学的な損失を定量的に評価する「大規模感染症発生による医療経済学的影響」とし、初年度の平成12年度は情報収集を中心に活動した。さらに、10月になってウガンダ・グル地方でエボラ出血熱のoutbreakが発生し、WHOから支援要請を受けて本研究員が派遣隊の一員として現地に赴いて対応に当たることになった。この派遣は感染症新法施行後の一類感染症における重要なケーススタディとなり、集団発生したエボラ出血熱の現地視察と、政府当局が確認した具体的事例・事案と施行された感染経路・被害対策・予防対策等に関しての情報を収集するよい機会と考えられた。
2)諸外国の状況調査として、11月に米国からbioterrorism対応外国人研究者を招へいして米国におけるNBC terrorismに対する医療機関と国家の基本的な考え方と具体的な対応、ワクチンを含めた未公開の重要な機密情報の収集することができた。炭疸菌や天然痘など近年危惧されるBioterrorism有事の際、対応として備蓄すべきワクチンの必要量や日本にない場合、海外から(主に米国)供給を依頼するワクチンの現状についての情報が日本では入手できないことから、重要な情報収集と考えられた。2月にWHOから今回のエボラ出血熱のoutbreakでウガンダ・グル地方にて実際に活動した外国人研究者を2名招へいし、高い死亡率を持つ伝染病発生時のsurveillanceとmanagementを中心とした見知と研究結果と現地で得られた微生物学・疫学的及び臨床的データの詳細な収集を行うことができた。これは上述の本研究員派遣から得られた情報をより確かなものにする重要な情報収集と考えられた。
結論
初年度の研究班活動は「情報収集」と考えていた。その研究手法として国内における大規模事案のケーススタディと諸外国の状況調査を計画していたところ、九州・沖縄サミットは前者として最適なケーススタディであり、ウガンダ・グル地方でのエボラ出血熱outbreakは後者として最適なケーススタディであった。双方への取り組みで必要性が明らかになった情報収集に基づいて計3名の外国人研究者を招へいし、日本ではこれまで得ることができなかった重要な情報を収集することができた。各研究員はこれらのケーススタディから得られた情報などを時に組み込みながら、それぞれの専門分野でのプラニングを練った。平成13年度以降は収集された情報を基に大規模感染症発生時の緊急対応の関わる事前準備のアジェンダとリソースリストを作成し、緊急対応の関わる体制と法体系下のマニュアルを作成する。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-