未知の感染症のリスク評価に関する研究

文献情報

文献番号
200000501A
報告書区分
総括
研究課題名
未知の感染症のリスク評価に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
小室 勝利(国立感染症研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 毅(東北大医、大学院)
  • 岡田義昭(国立感染症研究所)
  • 片野晴隆(国立感染症研究所)
  • 三代俊治(東芝病院)
  • 鈴木哲朗(国立感染症研究所)
  • 阿部賢治(国立感染症研究所)
  • 池田久實(北海道赤十字血液センタ-)
研究区分
厚生科学研究費補助金 先端的厚生科学研究分野 新興・再興感染症研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
病態、病原性の明確でないウイルス、新たな病気との関連が疑われるウイルス、変異株の出現により病原性の変化が疑われるウイルスにつき、その診断法の開発、病態、病原性の検討、分子疫学的研究を行い、これらウイルス感染のリスク評価を行い、必要な対応策に応用することを目的とする。
研究方法
目的とするウイルスとして、B19パルボウイルス、HHV-6,7,8, TTV, HBV, HCV変異株をとりあげ、そのウイルス学的分析、分子疫学的分析、病態解析に必要なモデル系の開発、診断法に関する検討、臨床的意義についての研究を行った。
結果と考察
本年度は以下の結果を得た。
1)ヒトパルボウイルスB19の慢性関節リウマチ(RA)発症への関与の関係、特に、B19の免疫系細胞内への侵入機構を知るためのin vitro, in vivoのモデル系を開発した。
免疫系細胞には、従来知られていないレセプターのあることを発見した。
2)ヒトパルボウイルスB19の感染性を検討し得るモデル系を開発した。ヒト培養細胞(KU812F)にB19を感染させ、RT-PCR法により検出する方法が高感度に感染性を評価できることが証明された。
3)HHV-8の高率に感染するin vitroモデル系を開発した。臍帯血管内皮細胞とHHV-8感染リンパ腫細胞を共培養する系が効率よくHHV-8の感染を示した。同法を用いて、HHV-8感染と造腫瘍性との関係を知る手がかりを得た。
4)TTVの母児感染症例、肝炎後再生不良性貧血の可能性としてのTTV感染症例につき検討し、TTVの病原性につき考察した。
5)TTVの亜型、TTV-like virus としてSANBAN, YONBAN,TLMVを同定し、これらが新種のウイルスであることを確認した。
6)TTVの遺伝子発現機構につき検討した。TTVゲノム上の非翻訳領域に110塩基からなるコアプロモータアーエレメントを同定し、更にその上流に、エンハンサーエレメントの存在を明らかにした。
7)TTVの霊長類における感染病態を分子疫学的に解析し、ヒトTTVとは異なる集団のs-TTVを発見した。チンパンジーのsTTVはヒトとの相同性は48~54%であっsた。動物モデル作製等に応用したい。
8)献血血液でのlow viremic HBV carrierの残存リスクを検討した。これらキャリアーの残存リスクを除くためには、核酸増幅法だけでなく、血清学的検査として、高感度抗原スクリーニングの導入と、HBc抗体スクリーニングの継続が必要と考えられた。
9)臓器移植に伴うウイルス感染、特にドナースクリーニングには、従来の輸血スクリーニングに用いている検査のみでなく考慮すべき点のあることについて考察した。
以上の様な結果が得られ、今後の研究の土台としての基礎的研究の第一歩は達成できたと考えられるが、研究はリスク評価に応用するには未だ満足すべくものではなく、さらなる検討が求められる。
結論
ウイルスの存在は確認されたが、病態、病原性が充分解明されていないウイルス(HHV-8,TTV等)、既知のウイルスではあるが、変異株の出現、細胞内局在性等により診断法に改良の必要性のあるウイルス(HBV等)、及び新たな病気への関与が疑はれるウイルス(B19パルボウイルス、HHV-8等)に関する基礎的研究を実施した。各ウイルスにつき疫学的、分子生物学的解析が行われ、又、動物モデル、in vitro細胞系モデルの開発も行われ病態解析の土台が作られつつあると考えられた。病原性、臨床的意義等の検討と併せた一層の努力が必要と思われる。

公開日・更新日

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