Stem cellを用いた人工皮膚の再構築に関する研究(総合研究報告書)

文献情報

文献番号
200000424A
報告書区分
総括
研究課題名
Stem cellを用いた人工皮膚の再構築に関する研究(総合研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
大河内 仁志(国立国際医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 橋本 公二(愛媛大学)
  • 玉木 毅(国立国際医療センター皮膚科)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 ヒトゲノム・再生医療等研究(再生医療研究分野)
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
60,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
皮膚の再生は発生学的観点から、外胚葉由来の表皮、毛嚢、汗腺グループと中胚葉 由来の真皮に分けて検討する。皮膚の再生医学の中心となるものはStem cellの同定ならびにその性質を明らかにすることである。本研究では表皮、毛嚢、汗腺と真皮それぞれのstem cellの単離法と培養法、保存法を検討して,皮膚を人工的にさいこうちくすることを目的とする。ケラチノサイトのstem cellの単離方法は確立されていないため、各種表面マーカーを用いてstem cellを最も効率よく認識できるマーカーを検討する。線維芽細胞のstem cellについては末梢血あるいは骨髄からの 単離を検討する。また、強固で正常なコラーゲンをもつ真皮を作成するために線維芽細胞によるコラーゲン産生を促進させる技術を開発する。毛嚢のstem sell、汗腺のstem sellの単離法については表皮stem cellの単離法に準じ、適宜改良を加え最適の条件を検討する。これらの結果より得られた、よりすぐれたstem cellの単離法を用いて、stem cell rich fractionを回収し、新しい人工皮膚の構築を行う。マウスES細胞などを用いて、毛嚢や汗腺のin vitroでの誘導が可能か否かを検討する。
研究方法
正常皮膚、三次元培養皮膚、培養シート、ならびに単層培養角化細胞におけるstem cellマーカーの発現についてFACSおよび共焦点レーザー顕微鏡を用いて解析した。stem cellマーカーとされる β1 integrin,α6 integrin, transferrin receptor (CD71)を用いてFACSによる解析を行った。手術時に得られた正常皮膚をdispaseで24時間処理し、表皮と真皮を剥離した。表皮をbiffered formalinで固定し β1integrin,α6integrin,CD71の発現をwhole mount labeling法を用いて検討した。抗体はあらかじめcye2,cye3.5などで標識したものを用い、共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。
結果と考察
単層培養角化細胞ではβ1 integrin強陽性細胞は全体の細胞の98%であり、α6integrin陽性細胞は59%であった。培養表皮シートではβ1 intebrin陽性細胞は90%であり、α6 integrin陽性細胞は91%であった。三次元培養皮膚ではβ1 integrin,6 integrinともに2峰性の分布を示し、β1 integrin強陽性細胞は、全体の細胞の11%で、α6 integrin強陽性細胞は22%であった。正常皮膚においてもβ1 integrin, α6 integrinは2峰性の分布を示し、β1 integrin強陽性細胞は全体の細胞の14%であったが、α6integrin強陽性細胞は40%であった。1 integrinは、全体の角化細胞に陽性ではなく、クラスターを形成していた。三次元構築画像で解析した結果、クラスターは真皮乳頭層に相当する部位に一致していた.CD71の発現は正常皮膚、三次元培養皮膚,培養表皮シート、単層培養角化細胞すべてにおいた陽性細胞は認められず、抗体の調整、ほかのクローンでの検討が必要と考えられた。以上の結果を総合し考察してみると、形態的に正常皮膚に近い三次元培養皮膚においてはβ1 integrin,α6 integrinは2峰性の分布をとっており、またそれぞれの発現量は20%程度でstem cellのマーカーとして考えてよいと思われる。従って、生体からstem cellを回収する場合はβ1integrin,α6 integrinは有用なマーカーとなりうるが、単層培養系、培養表皮シートにおいてはβ1 integrin,α6 integrinは高頻度に発現しており、stem cellのマーカーとしては有用ではないことが示唆された。In vitroの系での特異性の高いマーカーの検索が今後必要となる。そのためにマウスES細胞から表皮角化細胞への分化過程を経時的に検討して表面マーカーの検索を現在行っている。また、毛包角化細胞のstem
cellマーカーとされているliglに対する抗体を現在作成中でありliglのstem cellマーカーとしての有用性を検討する予定である。
結論
生体から表皮のstem cellを回収する場合はβ1integrin,α6 integrinは有用なマーカーとなりうるが、単層培養系、培養表皮シートにおいてはβ1 integrin,α6 integrinは高頻度に発現しており、stem cellのマーカーとしては有用ではない可能性が示唆された。

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