文献情報
文献番号
200000362A
報告書区分
総括
研究課題名
保育所における給食の在り方に関する研究(総括研究報告書)
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
水野 清子(日本子ども家庭総合研究所)
研究分担者(所属機関)
- 田中眞智子(川崎市末長保育園園長)
- 太田和枝(女子栄養大学教授)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成13(2001)年度
研究費
8,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
発育・発達の目覚しい乳幼児にとって栄養・食生活の重要性は言うまでもない。しかし、昨今においては就労する母親が増え、生活が多様化する中で栄養や食生活に対する価値観もかなり変化し、家庭の食生活に問題のある子どもも少なくない。そのような状況下で、保育所給食は子どもの健全育成に大きな役割を果たしている。これまで保育所給食は保育所の給食関係者によって調理されてきた(自園調理)が、平成10年度から保育所における給食業務の委託が認められた。また、平成11年地域児童福祉事業等調査(厚生省)によると、保育所の調理業務の委託を認めている市町村の18%は、施設外調理(学校給食や共同調理場の利用など)を希望している。そこで、21世紀の高齢化社会を担う子どもの生活の質(QOL)、健康の向上を目指すための保育所給食の在り方を検討した。
研究方法
以下の三領域から調査を行い、現状を把握し問題を提起した。①保育所における給食全般に関する調査(給食の種類、献立作成、保育と給食の連動、食事環境の配慮、食教育、調理業務の委託・施設外調理に対する意見収集など、②保育所給食における体調不良児への対応に関する調査(アトピー性皮膚炎・食物アレルギー児への対応、除去食実施の判断、除去食の献立作成・調理・変更・解除、病後児・障害児への食事の対応など)、③保育所の調理室内の衛生管理に関する調査(調理室内の衛生管理者・管理の方法、食材の利用・購入方法、調理用レシピ、調理作業、食事の盛り付け、調理室内の整備・環境、食器・器具の取り扱い、生野菜の取り扱い、厨芥処理など)。全国の認可保育所から1/5に相当する4,505か所に調査表を送付し、2,459か所から回答を得た(回収率:54.6%)。
結果と考察
今回の調査では自園調理の施設は95.6%(2,351か所)、調理業務の委託0.7%、施設外調理3.1%であった。今年度はこの中、自園調理の保育所を対象に調査を行った。
(1)保育所における給食全般に関する調査:殆どの施設では3歳未満児および以上児の給食を実施しており、離乳食の実施率62.2%、特別献立52.5%、延長保育時の対応38.5%であり、給食の低年齢化、個別化に向けてきめ細かい対応を行っていた。延長保育時の対応は約8割の施設ではおやつ程度の供与であった。今後、延長保育の進行が予測される中、望ましい食の対応を検討する必要があろう。自園で献立を作成している施設が半数以上、この割合は離乳食に高率であった。栄養士不在の施設では調理員、保育士が献立作成を行っており、約1/3は行政栄養士の指導を受けておらず、半数近くの施設では3歳未満児および以上児食は、厚生省の示す栄養基準になかなか適合しにくいと回答していた。保育所通所児の栄養素等摂取量は給食に委ねられている部分も多い。今後、行政栄養士、保育所、保育所栄養士の連携が望まれる。約6割の施設では年齢別に作成した食事計画を保育計画に取り入れ、保育と給食をよく連動させていた。多くの施設では食欲を重視した食事の供与、様々な食事環境への配慮、食教育を行っており、半数前後は菜園活動や調理保育を導入していた。家庭での調理体験が少なくなった今日、これらの教育は貴重なものであり、また、調理担当者と一緒に囲む食卓も生きた食教育となる。調理業務の委託、施設外調理は栄養管理、個への対応、行事食の導入、食教育の実施、衛生・適温給食、職員間の連携等を視野に入れ、7割以上の施設が子ども達のために望ましくないと回答していた。
(2)保育所給食における体調不良児への対応に関する調査:約9割の施設ではアトピー性皮膚炎・食物アレルギー児への食事の対応を行っていたが、主治医または嘱託医に受診し、医師の指示によって対応をしている施設は44.5%、保護者の申し出による対応がこれを凌駕していた。また、除去食の変更・解除を行う場合にも保護者の申し出による施設が多かった。除去食の献立作成者は保育所勤務の栄養士25.8%、市区町村栄養士11.1%、調理員47.5%であり、すべての除去食を保育所で対応している54.2%、保育所側で可能な限り対応し、困難な場合には家庭から持参させる31.4%であった。除去食の実施に当たり保護者・保育士・給食担当者との連携はよくとれおり、保育所側の強い協力体制が伺えた。しかし、献立変更に栄養士がかかわっている施設は約1/3、除去食は継続的に提供するものであるから代替食品の対応・栄養管理・健康状態の把握など、栄養士未配置施設においては、助言・指導が受けられるような協力体制作りが必要である。約60%の保育所では体調不良児、病後の回復期にある子ども、障害児への食事の対応を行っていた。特に体調不良児に対しては、登園時の子どもの状況と保護者からの申し出、保育中の子どもの状態等からその必要性を判断し、給食室との連携により個別に対応していた。障害児にも障害の内容・程度・発達段階に応じたきめ細かい食事の対応に努力している様子が明らかにされた。
(3)保育所の調理室内の衛生管理に関する調査:約半数の施設では衛生管理者は調理員が担当し、全体の約85%は主に市区町村児童主管課で作成したマニュアルや衛生チェック表を活用していた。食品の管理では加工食品、冷凍食品や調理済み食品の利用率は低く、カッティング野菜は大部分の施設で使っていなかった。多くの施設では食材の購入は食品、業者ごとに納入日時を決め、生鮮食品は当日の朝に納入していた。約7割の施設では、食材の納入は検収マニュアルに沿って行い、納入時の重視点は食品の鮮度、数量・重量、異物混入の順であった。調理用レシピは新しい料理、主要な料理などを含め72%の施設が利用していたが、温度や時間を記載したものは全部または加熱調理のみを合わせて半数程度であった。特にパート化が進み熟練者が減少しつつある現在、調理の標準化が必要である。調理の作業分担が決まっている施設は67%、作業改善の話し合いは88%の施設でもたれていた。約17%の施設では食事の盛り付けを保育室で保育士が行っていたが、盛り付けや食べる場所の衛生管理、児への衛生教育など、保育士との連携のもとに進める必要がある。設備に関してはほぼ充足されているように見受けられたが、床のドライ化や清・不潔区域の分離などが不備な施設もみられた。これらはHACCP(危害分析重要管理点)導入上の重要な管理事項であるので、施設改善とともに今後の指導が必要である。
(1)保育所における給食全般に関する調査:殆どの施設では3歳未満児および以上児の給食を実施しており、離乳食の実施率62.2%、特別献立52.5%、延長保育時の対応38.5%であり、給食の低年齢化、個別化に向けてきめ細かい対応を行っていた。延長保育時の対応は約8割の施設ではおやつ程度の供与であった。今後、延長保育の進行が予測される中、望ましい食の対応を検討する必要があろう。自園で献立を作成している施設が半数以上、この割合は離乳食に高率であった。栄養士不在の施設では調理員、保育士が献立作成を行っており、約1/3は行政栄養士の指導を受けておらず、半数近くの施設では3歳未満児および以上児食は、厚生省の示す栄養基準になかなか適合しにくいと回答していた。保育所通所児の栄養素等摂取量は給食に委ねられている部分も多い。今後、行政栄養士、保育所、保育所栄養士の連携が望まれる。約6割の施設では年齢別に作成した食事計画を保育計画に取り入れ、保育と給食をよく連動させていた。多くの施設では食欲を重視した食事の供与、様々な食事環境への配慮、食教育を行っており、半数前後は菜園活動や調理保育を導入していた。家庭での調理体験が少なくなった今日、これらの教育は貴重なものであり、また、調理担当者と一緒に囲む食卓も生きた食教育となる。調理業務の委託、施設外調理は栄養管理、個への対応、行事食の導入、食教育の実施、衛生・適温給食、職員間の連携等を視野に入れ、7割以上の施設が子ども達のために望ましくないと回答していた。
(2)保育所給食における体調不良児への対応に関する調査:約9割の施設ではアトピー性皮膚炎・食物アレルギー児への食事の対応を行っていたが、主治医または嘱託医に受診し、医師の指示によって対応をしている施設は44.5%、保護者の申し出による対応がこれを凌駕していた。また、除去食の変更・解除を行う場合にも保護者の申し出による施設が多かった。除去食の献立作成者は保育所勤務の栄養士25.8%、市区町村栄養士11.1%、調理員47.5%であり、すべての除去食を保育所で対応している54.2%、保育所側で可能な限り対応し、困難な場合には家庭から持参させる31.4%であった。除去食の実施に当たり保護者・保育士・給食担当者との連携はよくとれおり、保育所側の強い協力体制が伺えた。しかし、献立変更に栄養士がかかわっている施設は約1/3、除去食は継続的に提供するものであるから代替食品の対応・栄養管理・健康状態の把握など、栄養士未配置施設においては、助言・指導が受けられるような協力体制作りが必要である。約60%の保育所では体調不良児、病後の回復期にある子ども、障害児への食事の対応を行っていた。特に体調不良児に対しては、登園時の子どもの状況と保護者からの申し出、保育中の子どもの状態等からその必要性を判断し、給食室との連携により個別に対応していた。障害児にも障害の内容・程度・発達段階に応じたきめ細かい食事の対応に努力している様子が明らかにされた。
(3)保育所の調理室内の衛生管理に関する調査:約半数の施設では衛生管理者は調理員が担当し、全体の約85%は主に市区町村児童主管課で作成したマニュアルや衛生チェック表を活用していた。食品の管理では加工食品、冷凍食品や調理済み食品の利用率は低く、カッティング野菜は大部分の施設で使っていなかった。多くの施設では食材の購入は食品、業者ごとに納入日時を決め、生鮮食品は当日の朝に納入していた。約7割の施設では、食材の納入は検収マニュアルに沿って行い、納入時の重視点は食品の鮮度、数量・重量、異物混入の順であった。調理用レシピは新しい料理、主要な料理などを含め72%の施設が利用していたが、温度や時間を記載したものは全部または加熱調理のみを合わせて半数程度であった。特にパート化が進み熟練者が減少しつつある現在、調理の標準化が必要である。調理の作業分担が決まっている施設は67%、作業改善の話し合いは88%の施設でもたれていた。約17%の施設では食事の盛り付けを保育室で保育士が行っていたが、盛り付けや食べる場所の衛生管理、児への衛生教育など、保育士との連携のもとに進める必要がある。設備に関してはほぼ充足されているように見受けられたが、床のドライ化や清・不潔区域の分離などが不備な施設もみられた。これらはHACCP(危害分析重要管理点)導入上の重要な管理事項であるので、施設改善とともに今後の指導が必要である。
結論
自園調理を行っている2,351か所の認可保育所を対象に給食の実態、献立、食事環境、食教育、体調不良児・障害児への対応、調理室の衛生管理などについて実態把握を行った。自園で給食を調理しているがゆえに子どもにとって様々なメリットが見出され、また体調不良児への食事の対応も、それぞれの子どもの状態、障害の程度などを考慮してきめ細かく対応されていた。これらの実態は、施設内調理の柔軟な給食体制であるからこそ実現が可能であると思われる。また、調理室内の衛生管理に関する調査では、全体に衛生管理状態は良い傾向にあり、マニュアルや指導が守られていることが明らかにされた。しかし、個々には問題のある施設も見受けられた。保育所給食は特に細菌に対する抵抗力の弱い乳幼児を対象としている。食中毒発生の予防、衛生管理の一層の充実を図るためには、保育所の実態に即したマニュアルの策定が必要であると思われる。来年度は、今回の資料をさらに詳細に分析すると同時に、調理業務の外部委託、施設外調理を行っている保育所の給食の実態を把握し、子どもにとって望ましい保育所給食の在り方を提言する。
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