文献情報
文献番号
200000361A
報告書区分
総括
研究課題名
保育所における保健・衛生面の対応に関する調査研究(総括研究報告書)
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
高野 陽(日本子ども家庭総合研究所)
研究分担者(所属機関)
- 小山修(日本子ども家庭総合研究所)
- 千葉良(仙台赤十字病院)
- 遠藤幸子(東京都中野区仲町保育園)
- 西村重稀(福井県福祉環境部)
- 春日文子(国立感染症研究所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
-円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
保育所における乳幼児の健康の保持増進は最も重要な保育活動であり、児童福祉法の改正、保育所保育指針の改訂、新エンゼルプランの策定等により、保育所では、新しい保育の方向性が求められるようになっている。特に、今日では、そのなかで保健学的要素に基づく活動の重要性が強調されてきた。そのような背景のもと、保育所における保健活動の実態を把握し、今後の保育所における保健活動の在り方を検討することを目的に調査研究を行った。
研究方法
上記の目的を満たすために、保育所で実施されている保健活動について、①地域の保健サ?ビスとの連携、②かかりつけ医や嘱託医の感染症対策や投薬等を含む保健活動、③虐待に対する保育士の対応、④保育所の看護職の実態、⑤感染症対策に関連する環境保健対策、⑥子育て支援の立場で行う相談事業における保健面の対応、等の観点からの調査研究を、(1)全国規模における実態の把握、(2)各分担研究者の専門性に基づく研究、によって実施した。
結果と考察
(1)全国調査では、全国の認可保育所の1/5 に相当する4,505 ヵ所の保育所にアンケ?ト用紙を送付し、回収率54.9%の2,472 ヵ所の保育所から回答を得た。①地域の保健サ?ビスとの連携としては、発達や心身障害等の事例において多く行われ、保育所は保健部局の指導を受けて保育の効果を高め、保健部局は保育の要請等を行っている。各種の乳幼児期の健康診査結果を3割の保育所が問い合わせ、保育に活用している。公立保育所の方が保健部局との連携が多く、同じ行政のもとにあることも一つの理由であろう。母子健康手帳は4割の保育所で活用している。②約20%の保育所では、小児科を専門とした医師が嘱託医をしており、来所は健康診断のための年2回が最も多い。嘱託医の発達や行動上の問題、アレルギ?のある子ども、障害児の保育への関わりの程度は余り高くない。保育所における投薬は78%において実施されており、風邪等にかかった子ども、体調のよくない子もどに対しては医師の許可に基づいて保育される傾向は必ずしも多くない。③虐待児は1/8 の保育所に在籍し、それらに対しては児童相談所等との関係機関との連携もほぼ適切に行われている。④17.7%の保育所に看護職が配置され、保育士要員と独立配置との割合はほぼ同数の半々を占める。看護職の8割は、全園児の健康障害に対応しており、多くの場合に保育の継続の良否に関与している。さらに、職員に対する保健領域の指導や地域の子育て支援にも役割を果たしている。⑤食事の前やトイレ使用後の手洗い、トイレや保育室等の消毒や清掃はよく実践されているが、汚物や飼育動物を介する感染防止対策については、今後に課題を残すことも認められた。砂場は犬猫の侵入防止に努め、定期的に掘り返している。⑥相談事業の実施は3割程度であるが、食事、健康、発育発達に関する相談は育児不安に関する相談とともに多い項目である。回答については、経験によるものが多く、専門家を紹介したのは2割程で若い担当者に多い。(2)分担研究結果としては、①地域保健サ?ビスとの連携について(高野 陽主任研究者・小山 修分担研究者)沖縄県、福井県、宮城県及び奈良市において、保育所と各市町村の保健部局と、事例に関する連携、事業に関する連携について調査した。いずれの連携についても地域差が、県別とともに同県内においてもみられる。事例については、発達の遅れや心身障害児に関する連携が多く、発達上の問題や障害を有する乳幼児の保育の向上に努めている傾向をみる
ことができ、保健部局でも発達上の問題や障害をもつ事例の保育要請を保育所に行っている。事例については保健婦等の定期的な追跡によって、効果的な保育が実践されている。一般に保育士の保健部局との連携についての意識が高くなっていることは否定できず、これに伴って保健部局も積極的な連携に働いている傾向にある。事業の連携では、保育所は日常の保健活動における具体的な事項に関する指導を受けているものが多く、その内容では食中毒、感染症に関する事項が多い。②かかりつけ医や嘱託医の活動(千葉 良分担研究者)沖縄県、秋田県、宮城県、首都圏の嘱託医や小児科医の保育所における保健医療活動状況を調査し、現状における問題点とその対応について考察した。全般的にみると、医師の保育所における保健活動に関しては、地域差を認めることができる。保育所の医師の活用に関しては低調であり、と同時に、嘱託医自身の活動も低いので、チ?ム形成のもとに保健活動に実践に期待したい。毎週1回は来所して、乳児の健康診断を実施し、看護職の観察結果によって嘱託医が診察する体制を整えているているところ、障害児の巡回相談時に保育所の障害児の状況も把握できるようにしていたり、保護者が健康診断実施時に来園できるようにしているところもある。投薬については、医師の指示が必ずしも受け入れられず、指示が徹底されるような体制の確立が期待される。③保育所における看護職の役割(遠藤幸子分担研究者)としては、東京都6区、多摩地区の市、宮城県、福井県、広島県、沖縄県及び奈良市の保育所に勤務する看護職に対して聴き取り調査を実施した。看護職の専門領域と考えられる園児の健康管理、疾病や傷害への対応、感染症予防対策、保健に関する記録、発育発達の記録、職員自身の健康管理に関するアドバイスが高率に実施されている。登園時の健康観察や健康教育等は保育士の業務と重なる傾向にある。看護職のなかで保育士要員として勤務する場合には保育以外の業務を積極的に実施しようと心がけている傾向がみられる。④保育所の環境保健学的研究(春日文子分担研究者)として、都内公私立の保育所において、フ?ドスタンプを用いた生菌とカビ類等の検体採取によって汚染の実態を調査した。保育所屋内におけるサルモネラ菌、大腸菌は検出されず、砂場からも虫卵の検出もなかった。屋内で比較的微生物汚染状況が高かったのはヒ?タ?のル?バ?、昆虫等の飼育箱外面、水道コック、汚物入れバケツ等であった。⑤保育所の相談事業における保健学的内容(西村重稀分担研究者)は、福井県内の公私立保育所29ヵ所に対して乳幼児の保健相談に関するアンケ?ト調査とその保育所への相談者に対して調査によって研究を実施した。相談業務は園長が担当する場合が多いが、研修を受けた比較的若い保育者や保健婦、栄養士も担当している。回答は過去の経験によることが多く、不安も残ると述べている。相談者の年齢分布は20代から30代の母親が多く、保育所が相談事業を実施していることを知って相談しており、食事、排泄、感染症に関する相談が多い。結果について満足したものは約半数で、医師や保健婦に相談すべきであったと感じているものもあり、今後相談体制づくりの検討も必要であろう。
ことができ、保健部局でも発達上の問題や障害をもつ事例の保育要請を保育所に行っている。事例については保健婦等の定期的な追跡によって、効果的な保育が実践されている。一般に保育士の保健部局との連携についての意識が高くなっていることは否定できず、これに伴って保健部局も積極的な連携に働いている傾向にある。事業の連携では、保育所は日常の保健活動における具体的な事項に関する指導を受けているものが多く、その内容では食中毒、感染症に関する事項が多い。②かかりつけ医や嘱託医の活動(千葉 良分担研究者)沖縄県、秋田県、宮城県、首都圏の嘱託医や小児科医の保育所における保健医療活動状況を調査し、現状における問題点とその対応について考察した。全般的にみると、医師の保育所における保健活動に関しては、地域差を認めることができる。保育所の医師の活用に関しては低調であり、と同時に、嘱託医自身の活動も低いので、チ?ム形成のもとに保健活動に実践に期待したい。毎週1回は来所して、乳児の健康診断を実施し、看護職の観察結果によって嘱託医が診察する体制を整えているているところ、障害児の巡回相談時に保育所の障害児の状況も把握できるようにしていたり、保護者が健康診断実施時に来園できるようにしているところもある。投薬については、医師の指示が必ずしも受け入れられず、指示が徹底されるような体制の確立が期待される。③保育所における看護職の役割(遠藤幸子分担研究者)としては、東京都6区、多摩地区の市、宮城県、福井県、広島県、沖縄県及び奈良市の保育所に勤務する看護職に対して聴き取り調査を実施した。看護職の専門領域と考えられる園児の健康管理、疾病や傷害への対応、感染症予防対策、保健に関する記録、発育発達の記録、職員自身の健康管理に関するアドバイスが高率に実施されている。登園時の健康観察や健康教育等は保育士の業務と重なる傾向にある。看護職のなかで保育士要員として勤務する場合には保育以外の業務を積極的に実施しようと心がけている傾向がみられる。④保育所の環境保健学的研究(春日文子分担研究者)として、都内公私立の保育所において、フ?ドスタンプを用いた生菌とカビ類等の検体採取によって汚染の実態を調査した。保育所屋内におけるサルモネラ菌、大腸菌は検出されず、砂場からも虫卵の検出もなかった。屋内で比較的微生物汚染状況が高かったのはヒ?タ?のル?バ?、昆虫等の飼育箱外面、水道コック、汚物入れバケツ等であった。⑤保育所の相談事業における保健学的内容(西村重稀分担研究者)は、福井県内の公私立保育所29ヵ所に対して乳幼児の保健相談に関するアンケ?ト調査とその保育所への相談者に対して調査によって研究を実施した。相談業務は園長が担当する場合が多いが、研修を受けた比較的若い保育者や保健婦、栄養士も担当している。回答は過去の経験によることが多く、不安も残ると述べている。相談者の年齢分布は20代から30代の母親が多く、保育所が相談事業を実施していることを知って相談しており、食事、排泄、感染症に関する相談が多い。結果について満足したものは約半数で、医師や保健婦に相談すべきであったと感じているものもあり、今後相談体制づくりの検討も必要であろう。
結論
今年度は、保育所における保健・衛生面の対応の実態について、全国規模の調査と各分担研究者の個別研究によって把握した。公立と私立保育所の差異も認められた事項もあるが、保育所の保健活動の実態を把握できた。さらに、この調査結果を、地域特性による実態、保育所の規模別の実態、嘱託医の専門生別や看護職等の配置状況別に検討する。また、保護者に対して意見も聴取したいと考えており、これらの結果を踏まえて保育所の保健活動に関する総合的な方策を策定し、マニュアルを提示したい。
公開日・更新日
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