マススクリーニングの見逃し等を予防するシステムの確立に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000345A
報告書区分
総括
研究課題名
マススクリーニングの見逃し等を予防するシステムの確立に関する研究(総括研究報告書)
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
黒田 泰弘(徳島大学)
研究分担者(所属機関)
  • 黒田泰弘(徳島大学)
  • 青木継稔(東邦大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新生児マススクリーニングシステムの精度を維持・管理して見逃し等を予防するためには採血から治療までの個々のプロセスにおけるきめ細かな方針を決めなければならない。マススクリーニングの全検査プロセスにおいて可能なかぎりコンピュータ処理を行うことは有用であり、このための全国統一ソフトの制作が望まれる。また、効果的なマススクリーニングを実施するためには、現行マススクリーニング法の技術的改良と新しいマススクリーニング法の導入、個人のプライバシー等倫理面へ配慮したフォローアップシステムの構築・運用、より効果的な新しい対象疾患のマススクリーニング事業への導入が絶えず検討されなければならない。本研究班は、これらの諸課題について検討し、その結果が行政施策に反映されることを目的とする。
研究方法
研究方法と結果=(1) 検査前精度管理:未熟児2回採血により診断の見逃しが防止できた症例の調査を実施し、未熟児2回採血により、診断の見逃しが防止できたと考えられる症例が少なくとも54名存在することを明らかにした。検体が検査機関で受付される迄の各過程毎に“見逃し防止勧告案"をまとめ、要点をフローチャートとして示した。(2) 検査の精度管理:マイクロプレート法の精度管理のために、測定の異常に警告を発する精度管理ツールの開発した。本研究で開発している「新生児スクリーニング検査データ解析・内部精度管理のコンピュータプログラム」を使用した検査機関における具体的な精度管理マニュアルを作成した。精度管理法の対象を神経芽細胞腫マス・スクリ-ニングに拡大し、誤りの発生を予防するシステムを設計した。マス・スクリーニング精度管理における正確度テストで、見逃しが7件あった。神経芽細胞腫スクリーニングに関する精度管理で施設の分析に問題があることが推測された。(3) 検査後の精度管理:クレチン症および先天性副腎過形成要精査児の診断、治療、管理にいたるフローチャートを作成した。高ガラクト-ス血症でマススクリ-ニング要精査となる症例は非常に多く、その原因疾患を系統的に鑑別していくことの重要性を明らかにした。クレチン症要精者の骨成熟の解析は、重症クレチン症、治療を要した一過性甲状腺機能低下症、一過性低T4血症との鑑別に有用であった。高遺伝性高フェニルアラニン血症児での血BH4反応性フェニルアラニン水酸化酵素欠損症の鑑別の必要性を見出した。マススクリーニングで発見されたフェニルケトン尿症児の追跡調査により、治療基準改訂後血中フェニルアラニン値が明らかに低下していたことが確認された。新生児マススクリーニングで発見され、6歳以上となったクレチン症の知能予後は、標準小児や患児の同胞と有意な差はなく、良好な結果であった。患児の個人情報保護の立場から追跡調査の情報提供拒否する自治体が年々増加傾向にあり、このような状況下での追跡調査のシステムのあり方を提言した。(4) マススクリーニングの新しい対象患者に関する研究:3歳児を中心としてウィルソン病パイロット・スタディを継続実施し、これまでに10名のウィルソン病患者を発見した。ウィルソン病マススクリーニングの一次スクリーニングから診断確定までの方略、マススクリーニングにて発見されたウィルソン病患者の治療指針(案)等についての提言を行った。タンデム質量分析計を用いたスクリーニングで、6例の患児を発見した。GC/MSによる有機酸代謝異常のスクリーニングでは、予想をはるかに上回る患児の発見が可能であった。GC/MS/SIM法にて血中遊離脂肪酸分析を行い、β酸化異常症診断への応用も可能とした。6カ月児尿を中心としたムコ多糖
症のスクリーニングでは、1名のハンター症候群患児が発見された。 便色調カラーカードを用いる胆道閉鎖症のマススクリーニングを継続実施し、全国的に実施できる方法と結論した。
結果と考察
考察=新生児マススクリーニングシステムの精度を維持・管理して見逃しを予防するために各過程の問題点を洗い出し、その予防方策を立てた。未熟児2回採血システムは患児の見逃し防止に有用であり、本システムの普及、啓発が重要である。本年度に開発・作成した新生児スクリ-ニング検査デ-タ解析・内部精度管理のコンピュ-タプログラムを使用した具体的な精度管理マニュアル、マイクロプレ-ト測定内変動を検出する内部精度管理ツ-ル、コンピュ-タネットワ-クを用いた神経芽細胞腫マススクリ-ニング検査精度管理システムは有用であり、その普及が望まれる。また、外部精度管理結果からバ-コ-ドシステムの導入も必要である。クレチン症および副腎過形成マススクリーニング検査陽性児の取り扱いフローチャートを作成した。その普及を図らねばならない。また、今後高ガラクト-ス血症患児の診断・治療プロトコ-ルを作成していくことも必要である。フェニルケトン尿症の治療指針改訂が普及し、効果を上げていることおよび新生児マススクリ-ニング検査で発見され、6歳以上になったクレチン症児の知能指数が標準小児と変わらないことが確認された。マススクリーニングで発見された高フェニルアラニン血症患児の鑑別診断におけるBH4分析の意義が明らかとなった。ウイルソン病のマススクリーニングは、3歳児健診時に尿を用いておこなうことが望ましい。しかし、実際の導入に際して行政的に困難な場合には任意スクリーニングを行うべきである。胆道閉鎖症カラーカードマススクリーニングはコストベネフィットも高く、いつでも導入できる。さらに、ムコ多糖症のスクリーニングおよびタンデム質量分析計を用いた新生児マススクリーニングの有用性が明らかにされた。今後導入に向けて検討していく必要がある。
結論
新生児マススクリ-ニング検査の見逃しを予防するためには、IT等を駆使した見逃し予防システムの構築とともに追跡調査結果に基づいたマススクリ-ニングシステムの見直しが重要である。新しいマススクリーニングの開発導入によって早期治療および早期療育の機会ができる限り多くの子どもに提供されるべきである。

公開日・更新日

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