文献情報
文献番号
200000344A
報告書区分
総括
研究課題名
被虐待児童の処遇及び対応に関する総合的研究(総括研究報告書)
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
庄司 順一(日本子ども家庭総合研究所)
研究分担者(所属機関)
- 奥山眞紀子(埼玉県立小児医療センター)
- 柏女霊峰(淑徳大学)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
児童虐待の急増を背景に、平成12年5月、「児童虐待の防止等に関する法律」(児童虐待防止法)が制定され、11月20日に施行された。しかし、児童虐待、とくにその処遇と対応に関しては、なお多くの課題がある。
本研究事業においては、一昨年度、昨年度に引き続き、以下の研究課題に対して専門家による分担研究班を組織し、被虐待児童の処遇および対応のあり方について、総合的な検討を行った。
分担研究1 被虐待児への総合的支援計画に関する研究
分担研究2 被虐待児の精神的問題に関する研究
分担研究3 児童相談所における被虐待児処遇のあり方に関する研究
具体的には、被虐待児童に対する児童相談所の効果的な援助のあり方について、臨床面、制度面からの総合的な考察と提言(分担研究3)、児童福祉施設(乳児院、児童自立支援施設)における虐待への対応の実態と課題の把握、被虐待児童の行動を理解する基本となる愛着障害についての文献研究(分担研究1)、被虐待児に対する治療のあり方を検討するとともに、性的虐待への対応方法のまとめとマニュアルの作成(分担研究2)に関する研究を行った。
本研究事業においては、一昨年度、昨年度に引き続き、以下の研究課題に対して専門家による分担研究班を組織し、被虐待児童の処遇および対応のあり方について、総合的な検討を行った。
分担研究1 被虐待児への総合的支援計画に関する研究
分担研究2 被虐待児の精神的問題に関する研究
分担研究3 児童相談所における被虐待児処遇のあり方に関する研究
具体的には、被虐待児童に対する児童相談所の効果的な援助のあり方について、臨床面、制度面からの総合的な考察と提言(分担研究3)、児童福祉施設(乳児院、児童自立支援施設)における虐待への対応の実態と課題の把握、被虐待児童の行動を理解する基本となる愛着障害についての文献研究(分担研究1)、被虐待児に対する治療のあり方を検討するとともに、性的虐待への対応方法のまとめとマニュアルの作成(分担研究2)に関する研究を行った。
研究方法
児童福祉、児童精神医学、福祉心理学などの領域の研究者、実務家などからなる研究班を組織し、質問紙調査、関係者へのヒアリング調査、事例研究、文献研究などにより検討を行った。
結果と考察
分担研究1「被虐待児への総合的支援計画の策定に関する研究」(分担研究者:庄司順一)
本年度は、(1)前年度に実施した全国の乳児院を対象とした調査結果のクロス集計分析、(2)児童自立支援施設に入所している被虐待児童についての調査結果の検討と関係者へのヒアリング調査、および(3)反応性愛着障害に関する文献的検討を行った。
(1)に関しては、虐待のタイプ別の検討を行い、それぞれのタイプの特徴を明らかにするとともに、乳児においても深刻な影響が生じること、愛着形成の問題によると思われる行動が主であること、乳児院においては担当保育制をとることにより保育者との関係は改善しやすいものであることなどを明らかにした。(2)に関しては、児童自立支援施設に入所している児童の約6割が被虐待体験を有しているのであり、虐待と非行との関連が改めて注目された。これらの児童に対しては、従来の非行処遇理論では十分とはいえず、心理治療的なアプローチの必要性が強調された。また、職員の意識改革が重要であると考えられた。(3)本分担研究班においても、また後述の奥山班においても被虐待児童の行動の問題は愛着障害によるところが大きいことが指摘された。しかし、愛着障害(反応性愛着障害)についてはわが国ではほとんど取り上げられてこなかった。そこで、愛着障害に関する文献的検討を行った。愛着障害については今後本格的に検討を行い、この問題をもつ子どもへの対応法を確立する必要があると考えられた。
分担研究2「被虐待児の精神的問題に関する研究」(分担研究者:奥山眞紀子)
これまでの2年間の研究を基礎に、(1)被虐待児の精神症状の特徴を総合的に明らかにし、ケアの方法論を見いだすこと、および(2)性的虐待の発見から初期対応までのガイドラインを作成することを目的に研究を行った。その結果、(1)に関しては愛着の問題が非常に多くみられる特徴であり、愛着障害によるとみられる対人関係の問題および自己感の問題が重要であると考えられた。それにもとづき、ケアの内容としては、まず愛着の問題を把握し、問題があるときには早期に愛着形成を目的としたケアがなされなければならないと考えられた。(2)に関しては、性的虐待に対応するためのガイドラインが必要と考えられ、それを作成した。その内容は次のとおりである。
1.子どもの性的虐待とは
2.発見と初期対応(性的虐待が疑われるサイン、性的虐待を疑ったときの対応、児童相談所などの専門家の初期対応、関係機関の連携)
3.性的虐待に対する法的対応
4.関係機関の連携
分担研究3「児童相談所における被虐待児童処遇のあり方に関する研究」( )(分担研究者:柏女霊峰)
本年度は、平成11年度に実施した被虐待児童処遇困難事例20事例に対する児童相談所の関わりに関する質問紙およびヒアリング調査の詳細な分析を行うとともに、総合的考察を行った。その結果、いずれの調査からも、児童相談所および個々の職員が、多くの困難と時間的・心理的負担を背負いつつ、児童虐待事例に対して援助を行っている実情を多面的に浮かび上がらせることができた。とくに、虐待を認めず援助を拒否する保護者への対応をめぐる負担、チーム・アプローチや機関連携を図るための負担が大きく、また、これらの困難や負担を軽減するための制度面、運用面の両方にわたる改善事項を把握することができた。これらの結果をふまえ、最終報告においては、研究全体を総括し、(1)対応の実態と課題、(2)機関連携の実態と課題、(3)体制上の課題と克服に向けて、(4)相談援助の課題とその克服に向けて、(5)研修とスーパービジョン体制の充実に向けて、(6)ネットワーク形成上の課題とその克服に向けて、(7)新たな児童家庭相談体制の再構築に向けて、の7点について考察を行った。その結果、児童虐待への効果的な対応を進めるためには、児童相談所機能の見直し、児童家庭福祉サービス供給体制および児童家庭相談体制といった体制上の再構築、ならびに方法論の確立が不可欠であり、児童虐待防止法の3年後の見直しを視野にいれつつ、児童家庭福祉サービスシステム全体にわたる検討が必要であると指摘した。
本年度は、(1)前年度に実施した全国の乳児院を対象とした調査結果のクロス集計分析、(2)児童自立支援施設に入所している被虐待児童についての調査結果の検討と関係者へのヒアリング調査、および(3)反応性愛着障害に関する文献的検討を行った。
(1)に関しては、虐待のタイプ別の検討を行い、それぞれのタイプの特徴を明らかにするとともに、乳児においても深刻な影響が生じること、愛着形成の問題によると思われる行動が主であること、乳児院においては担当保育制をとることにより保育者との関係は改善しやすいものであることなどを明らかにした。(2)に関しては、児童自立支援施設に入所している児童の約6割が被虐待体験を有しているのであり、虐待と非行との関連が改めて注目された。これらの児童に対しては、従来の非行処遇理論では十分とはいえず、心理治療的なアプローチの必要性が強調された。また、職員の意識改革が重要であると考えられた。(3)本分担研究班においても、また後述の奥山班においても被虐待児童の行動の問題は愛着障害によるところが大きいことが指摘された。しかし、愛着障害(反応性愛着障害)についてはわが国ではほとんど取り上げられてこなかった。そこで、愛着障害に関する文献的検討を行った。愛着障害については今後本格的に検討を行い、この問題をもつ子どもへの対応法を確立する必要があると考えられた。
分担研究2「被虐待児の精神的問題に関する研究」(分担研究者:奥山眞紀子)
これまでの2年間の研究を基礎に、(1)被虐待児の精神症状の特徴を総合的に明らかにし、ケアの方法論を見いだすこと、および(2)性的虐待の発見から初期対応までのガイドラインを作成することを目的に研究を行った。その結果、(1)に関しては愛着の問題が非常に多くみられる特徴であり、愛着障害によるとみられる対人関係の問題および自己感の問題が重要であると考えられた。それにもとづき、ケアの内容としては、まず愛着の問題を把握し、問題があるときには早期に愛着形成を目的としたケアがなされなければならないと考えられた。(2)に関しては、性的虐待に対応するためのガイドラインが必要と考えられ、それを作成した。その内容は次のとおりである。
1.子どもの性的虐待とは
2.発見と初期対応(性的虐待が疑われるサイン、性的虐待を疑ったときの対応、児童相談所などの専門家の初期対応、関係機関の連携)
3.性的虐待に対する法的対応
4.関係機関の連携
分担研究3「児童相談所における被虐待児童処遇のあり方に関する研究」( )(分担研究者:柏女霊峰)
本年度は、平成11年度に実施した被虐待児童処遇困難事例20事例に対する児童相談所の関わりに関する質問紙およびヒアリング調査の詳細な分析を行うとともに、総合的考察を行った。その結果、いずれの調査からも、児童相談所および個々の職員が、多くの困難と時間的・心理的負担を背負いつつ、児童虐待事例に対して援助を行っている実情を多面的に浮かび上がらせることができた。とくに、虐待を認めず援助を拒否する保護者への対応をめぐる負担、チーム・アプローチや機関連携を図るための負担が大きく、また、これらの困難や負担を軽減するための制度面、運用面の両方にわたる改善事項を把握することができた。これらの結果をふまえ、最終報告においては、研究全体を総括し、(1)対応の実態と課題、(2)機関連携の実態と課題、(3)体制上の課題と克服に向けて、(4)相談援助の課題とその克服に向けて、(5)研修とスーパービジョン体制の充実に向けて、(6)ネットワーク形成上の課題とその克服に向けて、(7)新たな児童家庭相談体制の再構築に向けて、の7点について考察を行った。その結果、児童虐待への効果的な対応を進めるためには、児童相談所機能の見直し、児童家庭福祉サービス供給体制および児童家庭相談体制といった体制上の再構築、ならびに方法論の確立が不可欠であり、児童虐待防止法の3年後の見直しを視野にいれつつ、児童家庭福祉サービスシステム全体にわたる検討が必要であると指摘した。
結論
本研究は、被虐待児童の精神的問題、行動上の問題を明確にするとともに、児童相談所、施設入所後の処遇のあり方、被虐待児童への処遇および対応に関する総合的な研究を意図したものであった。本研究により、被虐待児の行動、心理の理解が深まるとともに、児童相談所、乳児院、児童自立支援施設における被虐待児の実態および対応の課題を明らかにした。また、性的虐待に対応するためのガイドラインを作成した。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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