文献情報
文献番号
200000341A
報告書区分
総括
研究課題名
小児慢性特定疾患の効果的養育支援のあり方と治療の評価に関する研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 齊(国立療養所三重病院)
研究分担者(所属機関)
- 湯沢布矢子(宮城大学)
- 古川正強(国立療養所香川小児病院)
- 富沢修一(国立療養所新潟病院)
- 竹内浩視(国立療養所天竜病院)
- 友岡裕治(福岡県遠賀保健所)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
12,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
我々は長期医療が必要な患者の医療の実態を調査し問題点を明確にし、小児慢性特定疾患に対する効果的保健婦活動のあり方について研究した。また、前回の研究で案を作成した小児慢性疾患に於ける保健婦活動の支援マニュアルの完成を目指した。小児慢性疾患児に現在配布されている手帳の活用程度と評価並びに今後のあり方について評価検討した。
研究方法
主任研究者の他5名の6人の研究者で分担し、それぞれ研究協力者をもって課題に取り組んだ。データーの収集は主にアンケート方式によった。平成10~11年度までにおこなった全国調査の結果に基づき、研究班員の地域にてモデル研修会をおこない、その評価をアンケート方式にて結果としてまとめた。
結果と考察
湯沢らは、地域保健法及び母子保健法等の全面改正により変わった保健婦活動が、小児慢性疾患に対してどのようにかかわり、ケアをしているか、主として小児医療を必要とする疾患児や障害児に対して、活動を展開する上での体制上、技術上の問題等について、検討した。その結果、保健所保健婦、市町村保健婦の実態が明らかとなり、あわせて本庁における研修体制等について要請されるものが何かも明らかにした。
12年度は、これらの実態に基づきモデル的な研修を国立療養所三重病院において実施した。また東京地区では聖路加看護大学に置いて、重心児(者)のケアーその評価について詳細なアンケートをとり、今後の効果的な研修プログラムや体制の検討を行った。保健婦には、人口の高齢化、少子化、社会の変化、医療の進歩など保健ニーズの複雑化、高度化、政策の変化、多様化などに伴い、ますます多岐にわたる活動が要請されつつあることが明白になった。
友岡らは平成10年4月の全国の患者・家族に対してのアンケート調査、平成11年10月全国640保健所に対してアンケート調査の結果に基づき、平成12年度福岡県遠賀保健所における難病モデル事業としてインターネットを利用して患者や県民に情報提供を行う福岡県神経難病患者ネットワーク情報システムの整備モデル事業をおこなった。その結果、患者・家族の病状に即した多様なニーズを多面的に把握し、適切かつタイムリーな行政サービスを提供していくためには、インターネットを有効活用し情報提供を行う必要性を提言した。
古川らは、2年間のアンケート調査の結果に基づき、全国調査を実施し、各疾患には医学的治療面以外に多くの精神的、社会的問題が存在することが改めて浮き彫りになった。その結果を踏まえて、平成12年10月に地域において小児喘息・心疾患・膠原病患者の長期予後と効果的支援についての研修会と意見交換会を行った。研修会に実際に参加した人は地域の小児科医(開業医18名、勤務医12名)30名、母子保健担当の保健婦6名、養護学校の教師6名であった。医療側、養護学校側、保健所側からの現状と問題点の発表があり、また相互に意見交換することで各疾患の長期予後と効果的支援に対する相互理解が深まったことを報告した。
竹内は、内分泌疾患・糖尿病において、合併症の発症や進行が大きく改善されつつある反面、学齢期から思春期、青年期にわたる療育支援は、患者側からみて必ずしも十分であるとは理解されていないので、今後より効果的な療育支援をおこないつつ治療効果をさらに高める必要性を指摘した。小児内分泌疾患・糖尿病専門医と一般小児科医との連携、成人化における内科への転科に際し適応障害を起こさぬよう、療育者の養育困難に対する精神・心理面への援助が必要であると結論している。
富沢らは、小児慢性特定疾患の療育のあり方について報告した。学校生活で運動制限が長すぎること、腎疾患急性期の食事制限は急性期のみで十分であることを報告した。慢性腎疾患の指導や療育については、我々の作成したマニュアルが、学校現場でも使用できるよう要望が多いことを報告した。また、学校検尿などで腎不全にならないように検尿を継続していることが、診断書などに記載されると日常業務には全く支障ない旨を書いても就職時に差別の対象になっていることもみられ、その子の将来の生活設計に多大のデメリットを及ぼす心配があることも配慮する必要がある。
神谷らは悪性新生物の治療終了後に晩期障害としてあらわれる心機能、肝障害、性腺機能などの臓器障害、視力・聴力障害、中枢神経障害や精神異常について調査すると共に、これら患者の最終学歴も中卒、高卒・中退が40 %に見られ、これら疾患児の退院後の学校への適応の難しさである。また、心の問題も重要で支援が必要である。ケースワーカーや心理専門職などによる支援、行政機関による社会的支援の強化の必要性を報告した。
また、平成8年より使用されている小児慢性特定疾患手帳について、その利用頻度と問題点を、全国85の県、中核市に対しおこなったアンケート調査の結果を報告した。85.7%の県、市で手帳の交付を実施していたが、実際に申請者に対して交付した率は10-20%と低く、手帳配布事業を廃止した県、最初から手帳配布事業は行っていないとする県も存在した。医療関係者も手帳の存在、活用法などを意識していない、親が持参してこない、学校保健と医療機関との連携に用いづらい、医療機関での活用の位置づけがはっきりしていないなどの問題点があげられた。いずれにしてもこの小児慢性特定疾患手帳は医療機関、医師会などの医療現場の意見が反映されたものではなく、手帳交付は廃止するのが最善策と思われた。手帳については平成12年11月、第47回日本小児保健学会(高知)にて報告した。
福井県における小児慢性特定疾患効果的療育支援のあり方と治療の評価に関する調査とまとめを福井大学小児科真弓先生と県の協力で実施した。1)就職・結婚など成人後の生活の質(Quality of Life; QOL)に関しては、調査時の患者年齢が男女とも平均で20歳と成人に達した直後であり、生活の質について明確な結論は得にくかった。最終学歴が中卒の者が全体で8%と高く、特に膠原病や気管支喘息患者で高いのが目立つた。職業に関する項目については、対象正常群との比較検討が必要と思われる。
共同研究者の荒井らは、全国の保健所の所長と小慢療育支援事業の担当者に対し、小慢に対する取り組みについてアンケート調査の結果をもとに小慢療育支援の現状と課題について再検討を行い、さらに平成13年1月初旬に、三重県鈴鹿保健所において小慢医療費受給制度を利用している患者家族に対して、郵送によるアンケート調査を実施し、患者家族のニーズや実態について検討した。全国の保健所長の意見として、小慢事業を最重要事業あるいは重点的に取り組みたいとおもってはいるが、人手と予算不足により80%が充分に取り組めていないと報告した。保健所担当者の意見としても、人手の確保と予算の確保が最も必要であると考えていた。取り組みのなかで重要性が高いと考えているのは、医療機関や関係機関との連携であるが、医療機関との連携が充分にとれているのは僅かであった。また、教育機関との連携もほとんどがとれておらず、小慢事業の推進のためには、これらの関係機関との連携を深めていくことが、重要課題であると考えられた。現在実施している支援事業としては、申請時面接と訪問、療育相談が中心であるが、実施している事業内容と必要と思っている事業内容とでは異なっており、スタッフの研修や医療機関との連携、事例検討、交流会支援等の実施を今後は図っていく必要がある。開かれた保健所を目指し、家族のニーズに応えられるだけの体制の整備が必要と考えられた。
12年度は、これらの実態に基づきモデル的な研修を国立療養所三重病院において実施した。また東京地区では聖路加看護大学に置いて、重心児(者)のケアーその評価について詳細なアンケートをとり、今後の効果的な研修プログラムや体制の検討を行った。保健婦には、人口の高齢化、少子化、社会の変化、医療の進歩など保健ニーズの複雑化、高度化、政策の変化、多様化などに伴い、ますます多岐にわたる活動が要請されつつあることが明白になった。
友岡らは平成10年4月の全国の患者・家族に対してのアンケート調査、平成11年10月全国640保健所に対してアンケート調査の結果に基づき、平成12年度福岡県遠賀保健所における難病モデル事業としてインターネットを利用して患者や県民に情報提供を行う福岡県神経難病患者ネットワーク情報システムの整備モデル事業をおこなった。その結果、患者・家族の病状に即した多様なニーズを多面的に把握し、適切かつタイムリーな行政サービスを提供していくためには、インターネットを有効活用し情報提供を行う必要性を提言した。
古川らは、2年間のアンケート調査の結果に基づき、全国調査を実施し、各疾患には医学的治療面以外に多くの精神的、社会的問題が存在することが改めて浮き彫りになった。その結果を踏まえて、平成12年10月に地域において小児喘息・心疾患・膠原病患者の長期予後と効果的支援についての研修会と意見交換会を行った。研修会に実際に参加した人は地域の小児科医(開業医18名、勤務医12名)30名、母子保健担当の保健婦6名、養護学校の教師6名であった。医療側、養護学校側、保健所側からの現状と問題点の発表があり、また相互に意見交換することで各疾患の長期予後と効果的支援に対する相互理解が深まったことを報告した。
竹内は、内分泌疾患・糖尿病において、合併症の発症や進行が大きく改善されつつある反面、学齢期から思春期、青年期にわたる療育支援は、患者側からみて必ずしも十分であるとは理解されていないので、今後より効果的な療育支援をおこないつつ治療効果をさらに高める必要性を指摘した。小児内分泌疾患・糖尿病専門医と一般小児科医との連携、成人化における内科への転科に際し適応障害を起こさぬよう、療育者の養育困難に対する精神・心理面への援助が必要であると結論している。
富沢らは、小児慢性特定疾患の療育のあり方について報告した。学校生活で運動制限が長すぎること、腎疾患急性期の食事制限は急性期のみで十分であることを報告した。慢性腎疾患の指導や療育については、我々の作成したマニュアルが、学校現場でも使用できるよう要望が多いことを報告した。また、学校検尿などで腎不全にならないように検尿を継続していることが、診断書などに記載されると日常業務には全く支障ない旨を書いても就職時に差別の対象になっていることもみられ、その子の将来の生活設計に多大のデメリットを及ぼす心配があることも配慮する必要がある。
神谷らは悪性新生物の治療終了後に晩期障害としてあらわれる心機能、肝障害、性腺機能などの臓器障害、視力・聴力障害、中枢神経障害や精神異常について調査すると共に、これら患者の最終学歴も中卒、高卒・中退が40 %に見られ、これら疾患児の退院後の学校への適応の難しさである。また、心の問題も重要で支援が必要である。ケースワーカーや心理専門職などによる支援、行政機関による社会的支援の強化の必要性を報告した。
また、平成8年より使用されている小児慢性特定疾患手帳について、その利用頻度と問題点を、全国85の県、中核市に対しおこなったアンケート調査の結果を報告した。85.7%の県、市で手帳の交付を実施していたが、実際に申請者に対して交付した率は10-20%と低く、手帳配布事業を廃止した県、最初から手帳配布事業は行っていないとする県も存在した。医療関係者も手帳の存在、活用法などを意識していない、親が持参してこない、学校保健と医療機関との連携に用いづらい、医療機関での活用の位置づけがはっきりしていないなどの問題点があげられた。いずれにしてもこの小児慢性特定疾患手帳は医療機関、医師会などの医療現場の意見が反映されたものではなく、手帳交付は廃止するのが最善策と思われた。手帳については平成12年11月、第47回日本小児保健学会(高知)にて報告した。
福井県における小児慢性特定疾患効果的療育支援のあり方と治療の評価に関する調査とまとめを福井大学小児科真弓先生と県の協力で実施した。1)就職・結婚など成人後の生活の質(Quality of Life; QOL)に関しては、調査時の患者年齢が男女とも平均で20歳と成人に達した直後であり、生活の質について明確な結論は得にくかった。最終学歴が中卒の者が全体で8%と高く、特に膠原病や気管支喘息患者で高いのが目立つた。職業に関する項目については、対象正常群との比較検討が必要と思われる。
共同研究者の荒井らは、全国の保健所の所長と小慢療育支援事業の担当者に対し、小慢に対する取り組みについてアンケート調査の結果をもとに小慢療育支援の現状と課題について再検討を行い、さらに平成13年1月初旬に、三重県鈴鹿保健所において小慢医療費受給制度を利用している患者家族に対して、郵送によるアンケート調査を実施し、患者家族のニーズや実態について検討した。全国の保健所長の意見として、小慢事業を最重要事業あるいは重点的に取り組みたいとおもってはいるが、人手と予算不足により80%が充分に取り組めていないと報告した。保健所担当者の意見としても、人手の確保と予算の確保が最も必要であると考えていた。取り組みのなかで重要性が高いと考えているのは、医療機関や関係機関との連携であるが、医療機関との連携が充分にとれているのは僅かであった。また、教育機関との連携もほとんどがとれておらず、小慢事業の推進のためには、これらの関係機関との連携を深めていくことが、重要課題であると考えられた。現在実施している支援事業としては、申請時面接と訪問、療育相談が中心であるが、実施している事業内容と必要と思っている事業内容とでは異なっており、スタッフの研修や医療機関との連携、事例検討、交流会支援等の実施を今後は図っていく必要がある。開かれた保健所を目指し、家族のニーズに応えられるだけの体制の整備が必要と考えられた。
結論
平成9年度におこなった小児慢性特定疾患患者に対しての全国調査に基づき、平成10~11年度にかけて、医療、患者、行政(保健所、保健婦など)の立場より全国調査をおこなったところ、各疾患はそれぞれ特有の医療、心理・社会的問題点を抱えており個別対策の必要性を報告した。平成12年度は、問題点を明確にするとともに、成育医療の概念に基づき、より高い生活の質(QOL)を目指したケアを行うために療育を支援する保健婦を対象としてモデル研修をおこない研修のあり方について提言をおこなった。医療、患者、行政の3者をつなぐ現在の小児慢性特定疾患手帳は、現場の意見が反映されたものではなく、交付率も10~20%と低く、手帳交付は廃止するのが最善策と思われた。
小児慢性特定疾患の療育支援をより効果的におこなうには、患者の抱える問題点、ニーズの把握が大切であり、治療にかかわる医療機関さらに教育機関との連携が重要性が強調された。
また保健所より患者・家族への情報提供、社会資源の活用は充分でなく、インターネットなどの情報源を利用した情報提示、関連手続きなどの制度の整備が今後必要である。
小児慢性特定疾患の療育支援をより効果的におこなうには、患者の抱える問題点、ニーズの把握が大切であり、治療にかかわる医療機関さらに教育機関との連携が重要性が強調された。
また保健所より患者・家族への情報提供、社会資源の活用は充分でなく、インターネットなどの情報源を利用した情報提示、関連手続きなどの制度の整備が今後必要である。
公開日・更新日
公開日
-
更新日
-