母子保健情報の登録・評価に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000320A
報告書区分
総括
研究課題名
母子保健情報の登録・評価に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
柳澤 正義(国立大蔵病院)
研究分担者(所属機関)
  • 山縣然太朗(山梨医科大学)
  • 加藤忠明(日本こども家庭総合研究所)
  • 青木菊麿(女子栄養大学)
  • 中村 敬(日本こども家庭総合研究所)
  • 田中敏章(国立小児病院小児医療研究センター)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 子ども家庭総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
39,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
各種母子保健情報が、国、地方自治体あるいは研究者によって有効に活用されるためには、適切な登録、管理、評価のシステムの構築が必要である。そのような観点から、以下の分担研究課題が設定された。
1.各種母子保健・医療情報の集積・活用に関する研究(分担研究者 山縣然太朗)。本研究の全体像は1)既存情報の整理、2)既存情報の質的評価、3)既存情報の必要性の検討、4)既存情報の有効活用、高度利用に関する検討、5)情報の収集と活用のシステム構築、の5項目に集約される。
2.小児慢性特定疾患の登録・管理・評価に関する研究(分担研究者 加藤忠明)。小慢疾患の治療・療育支援および研究を促進するために、疾患の登録・管理をコンピュータを用いて効率的に行い、国、地方自治体および研究者にその情報を適切に提供するシステムの構築について検討することを目的とする。
3.マス・スクリーニングで発見された症例の追跡調査に関する研究(分担研究者 青木菊麿)。新生児マス・スクリーニングで発見された症例の追跡調査は、スクリーニングを様々な立場から評価する上で極めて重要であり、小慢疾患の登録・集計とリンクさせることによって、より効果的な追跡調査のシステムの構築を検討する。
4.「心身障害研究・子ども家庭総合研究報告書」のデータベース化に関する研究(分担研究者 中村 敬)。過去の厚生省心身障害研究および平成10年度以降の厚生科学研究子ども家庭総合研究の成果が永久保存され、広く社会で活用されるように、報告書のデータベース化の技術的方法論の確立を目的とする。
5.成長ホルモン治療の現状と評価に関する研究(分担研究者 田中敏章)。平成10年2月から小慢事業における成長ホルモン治療の適応基準が変更されたことから、実際に成長ホルモン治療がどのように変化したかを把握することは行政上の評価として必要であり、今後の公費負担基準の検討のための基礎的資料を得ることを目的とする。以上のうち、1.は平成11年度から開始され、2.~ 5.は平成10年度からの継続研究である。
研究方法
分担研究1.昨年度は既存情報の整理を行い、本年度は、情報源を、小児臨床、母性・周産、小児保健、学校保健、障害・福祉に5分類し、キーワードを用いて情報を分類し、収集、整理した。
分担研究2.平成10、11年度小慢事業に関して、全国84か所の実施主体(都道府県・指定都市・中核市)から厚生省にコンピューターソフトによる事務報告が行われた。そのうち、平成11年12月までに報告された医療意見書、204,893人(10年度106,790人、11年度96,103人)分を集計・解析した。この集計には、プライバシー保護のため、患者氏名、生年月日、医療機関名、医療意見書記載年月日は自動的に削除されている。また、患児(保護者)から小慢事業として研究の資料にすることの同意書を得た。
分担研究3.小慢事業に関する平成9、10、11年度の事業報告データを解析し、新生児マス・スクリーニングで発見されうる先天性代謝異常症(フェニルケトン尿症、メ-プルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ガラクト-ス血症)および内分泌疾患(クレチン症、先天性副腎過形成症)の全国追跡調査への手がかりの可能性を検討した。また母子愛育会で実施している追跡調査との比較検討も行った。
分担研究4.すでに印刷された報告書が対象になる過去の心身障害研究報告書と、各研究者から報告書を電子データとして収集可能な平成10年度以降の子ども家庭総合研究の報告書の2分野に分けて電子化の技術的方法論を検討した。
分担研究5.小慢事業における成長ホルモン適応基準変更前後における成長ホルモン治療状況の変化を成長科学協会成長ホルモン治療専門委員会のデータと比較しながら検討した。
結果と考察
分担研究1.約2,000の情報・データを収集、記録し、データシートの項目および選択肢を洗練、情報の内容・項目などについて検討し、調査概要の詳細まで確保するために、原本を入手し、実際にWeb上で利用できる「母子保健・医療情報データベース」の構築に至った。さらに今後の運用に向けて、情報更新のためのマニュアルの作成を行った。
分担研究2.今年度はじめて得られた全国の事業報告から、小慢各疾患の頻度、主な疾患の地域別頻度、男女別頻度、診断時年齢、発病年齢、主な症状や検査結果、合併症の有無、経過など、小慢疾患に関する多くの貴重なデータを解析した。小慢疾患の効果的療育支援や治療、また患児のQOL向上や経過判定等への資料となることが期待される。
分担研究3.小慢登録された症例数は、平成9年度は極めて少なかったが、平成10,11年度にかけて著しく増加し、先天性代謝異常症に関しては従来の追跡調査では把握されていない症例が多く含まれていた。記載方法は先天性代謝異常症に関しては改善されており、記入する医師の意識は増していると思われた。プライバシー保護に十分配慮しながら効果的な追跡を可能にする方法を今後検討することが望まれる。
分担研究4.本年度の研究成果として昭和50年度(1975年)から平成11年度(1999年)までの過去24年分の心身障害研究報告書および子ども家庭総合研究報告書全ページの電子化を完成し、11枚セットのCD版を作成した。各報告書のタイトル、著者、見出し語、要約(または序論あるいはまとめ)の各項目はテキスト文字として切り出し、インターネット上で公開できるデータベースを構築した(インターネット上の公開は未定)。
分担研究5.小慢事業による成長ホルモン分泌不全性低身長症の登録数は、総数で平成9年19,730人であったのが、平成10年9,586人、平成11年10,195人と半減しており、助成基準の施行は効果があったと考えられる。しかし、まだ治療により伸びる可能性があるのに経済的理由により成長ホルモン治療を断念せざるをえない患者がいるということは、当面の課題として残っている。また、基準が現在一般に用いられている1999年改訂の「成長ホルモン分泌不全性低身長症診断の手引き」ではなく、1995年改訂のものを用いている点、および平成11年の成長ホルモン頂値の補正式を用いている点に問題がある。
結論
5つの分担研究それぞれについて、ほぼ所期の成果をあげることができた。

公開日・更新日

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