脳障害に伴う失認による生活機能障害の評価と生活支援に関する研究(総括研究報告書)

文献情報

文献番号
200000314A
報告書区分
総括
研究課題名
脳障害に伴う失認による生活機能障害の評価と生活支援に関する研究(総括研究報告書)
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
荒木 信夫(埼玉医科大学神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 三村 將(昭和大学医学部精神医学教室)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成14(2002)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)脳損傷後に生じる種々の高次脳機能障害について、日常生活機能や行動面での変化を評価すること、(2)さらにその知見に基づいて脳損傷患者の生活支援プランを立案すること。
研究方法
荒木の研究では、半側空間無視をとらえる検査法として、直線の二等分,探索抹消課題、模写課題、読み(漢字と横書き単語)などを用いるとともに、患者家族からの情報をもとに、食事の際の不都合、また左側の障害物への衝突の有無などを考慮し、機能障害の程度をあらわす尺度を作っていく。共同研究者の三村の遂行機能評価は前向き、縦断的な(発症3ヶ月と1年)臨床研究である。まず、従来の神経心理検査を用いた包括的なバッテリーの作成と、記憶・遂行機能に関する行動的評価法の作成を行うことにより、高次脳機能障害評価法の開発を行った。従来の神経心理検査を用いた包括的なバッテリーに関してはWisconsinカード分類テスト・Hanoiの塔など、いくつかの課題をパソコン提示できるかたちにソフトを作成した。また、記憶・遂行機能に関する行動的評価法については、Behavioural Assessment of Dysexecutive Syndrome (BADS)とTinkertoy test (TTT)の日本語版を完成し、評価法の統一を行い、複数施設で使用可能なように複数セットの作成・準備を行った。健常対象者30例に遂行機能検査を実施するとともに、脳損傷患者の初回評価(発症後3ヶ月)を開始した。患者対象は20歳-70歳の後天性脳損傷患者(局在性脳損傷ないし閉鎖性頭部外傷)とし、重篤な精神疾患・失語・重度の麻痺の既往がある症例は除外した。2000年9月より当該複数施設で脳損傷患者の初回評価データ収集を開始した。
結果と考察
荒木主任研究者の2001年度3月末現在までのエントリー症例数は18例であった。平均年齢は61.9±6.3歳で、病因の内訳は脳出血3例、脳梗塞15例であった。半側空間無視の患者ではすべての検査で有意に低得点であった。2001年度の研究計画としては、客観的に判定できるように、コンピューターデイスプレイ上に図形が異なるスリットを表示し、無意味図形の異同判断課題を行ったり、左1/4が異なる絵の異同判断が可能であるか,否かを検討したい。共同研究者の三村の2001年度3月末現在までのエントリー症例数は19例であった。平均年齢は52.3歳(24歳―68歳)で、病因の内訳は頭部外傷4例、脳出血6例、脳梗塞5例、脳炎2例、その他2例であった。行動学的な遂行機能に関しては、BADS, TTTともに明らかに高次脳機能障害患者群で不良であった。BADSの総評価点は健常群の18.8点に対して患者群では9.3点と低下しており、TTTでも健常群の14.5点に対して患者群では8.3点とやはり低下していた。しかしながら、患者群では基礎検査における注意、記憶、前頭葉機能も障害されており、行動学的な遂行機能の障害が就労を含めた社会的予後にとって鋭敏な指標かどうかは2年次以降の第2回評価の結果を検討する必要がある。
結論
高次脳機能障害患者群では行動学的な遂行機能が不良であり、これは患者の日常生活の障害を反映していると思われた。社会的予後の指標となり得るか否か、引き続き評価を行っていく予定である。

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-