病態像に応じた精神科リハビリテーション療法に関する研究

文献情報

文献番号
200000309A
報告書区分
総括
研究課題名
病態像に応じた精神科リハビリテーション療法に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成12(2000)年度
研究代表者(所属機関)
長瀬 輝諠(医療法人社団東京愛成会高月病院)
研究分担者(所属機関)
  • 浅井邦彦(医療法人社団清和会浅井病院)
研究区分
厚生科学研究費補助金 総合的プロジェクト研究分野 障害保健福祉総合研究事業
研究開始年度
平成12(2000)年度
研究終了予定年度
平成15(2003)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
A班「急性期入院患者に対する精神科リハビリテーション療法の研究」では、研究協力者12病院に新たに入院した分裂病及び感情病(ICD-10で診断)に、インフォームドコンセントに基づいて本人の了解を得てケースマネジメントを開始し、一定のプログラムの精神科リハビリテーション療法を実施することにより、病識の獲得、退院の促進、再発の防止等の効果が期待されるが、退院から1~2年間の追跡調査をマネジメント群(対象群)と非マネジメント群(コントロール群)について行い、両者を比較して、GAF尺度の改善等で評価する。これにより体系的な急性期リハビリテーション療法の有効性が確認されれば、新たな精神科専門療法として位置づけて、全国精神科病院に普及し、早期の退院と長期入院の防止策として役立てるとが期待される。更に、B班 「精神科デイケア、デイ・ナイトケアの治療的機能と機能分担に関する研究」では精神科デイケア、デイ・ナイトケアが急性期入院治療後の症状安定化持続機能、長期入院患者の退院促進と再発・再入院防止機能に加えて、地域生活支援(対人関係の改善、生活リズムの獲得)、就労訓練、休憩と憩いの場に果たす治療的機能の有効性を検証し、入院治療の代替策とした欧米先進諸国のようなデイホスピタル(昼間病院)又はパーシャルホスピタルゼイション(部分入院)的機能を果たすにはどうすべきかについての知見を得たい。更に精神病院におけるデイケアの治療的な意義を検討し、精神科診療所などのデイケアとの役割と課題の差異、機能分担のあり方を明確にする目的がある。また精神障害者社会復帰施設である通所授産施設や小規模作業所の有効性や役割の違いを検討することにより、精神科デイケア、デイ・ナイトケアの質的な向上を目指すことも目的としている。
研究方法
①研究対象病棟と患者の登録・研究に参加する病院で研究を行う病棟を特定する。その病棟に平成12年9月1日以降に入院する分裂病患者を全員登録する。登録期間は、平成12年9月1日~平成13年2月18日の6ヶ月間とする。各病院の目標症例数は20例とし(研究班として200例)、登録期間内に目標症例数に到達した場合には、その時点で登録は終了する。②研究の開始時期と対象群の選定・急性期症状の消褪を判定し、リハビリを開始するためのクライテリアを作成し、その基準を満たしたことを確認して心理教育リハビリテーションを開始する。・対象群には、ケースマネジメントと心理教育リハビリテーションは、一体のものとして提供するが、開始にあたっては研究の趣旨と内容についてせつめいを行った上で文書による同意を得る。同意を得られない患者は、コントロール群とする。・心理教育リハビリテーションはテキストを作成し共通の方法で行い、施設による差を生じないようにする。③ケースマネジメント会議ケースマネジメント会議は、症例毎のマネジメントを行うために2週間に1回程度開始する。会議は病棟会と兼ねても良いが、あくまでも個々の症例の検討会を行う会議と規定し、会議時間のカウントは厳密に行う。・会議で心理教育プログラム以外にもリハビリテーションを提供する事が必要であるとされた症例では、どのようなリハビリテーションが必要かを考察する(リハビリ診断、リハビリ計画)また、マネジメントに要した職種毎の人員数と時間を測定する。・また、症例の退院にあたっては会議において退院後のプランニングを作り、関係者に連絡することがケースマネジャーの重要な役割となる。④退院症例の確認時期入院後6ヶ月を経過した時点で退院している患者を退院群として分類する。しかし、6ヶ月以降において退院した場合もその後
のフォローアップは同様に行う。⑤疾患の重要度とリハビリの効果の判定・疾患の重要度はGAFで測定し、その変化を入院時、マネジメント開始時、退院時の3ポイントでチェックし、その変化をみる。・患者本人の満足度を、アンケートで退院時に測定する。⑥退院の定義・先に述べたように入院後6ヶ月を経過した時点で退院している患者を退院群として分類するが、6ヶ月以降において退院した場合もその後のフォローアップは同様に行いフォローアップ期間では同様に扱う。⑦精神科デイケアの利用・入院中精神科デイケアの利用をマネジメントの中でプランニングされてものをデイケア群とし、その他のものを非デイケア群として予後追跡を行う。精神科ナイトケア、デイ・ナイトケア利用者はデイケア群とする。・デイケア群利用期間は利用者との話し合いによって定める。⑧追跡期間・この研究の結果を前方視的に確認するために、入院から2年~2年半経過後までの期間で定期的に重症度と転帰をチェックする。・精神科病院デイケア、デイナイトケア、精神科診療所デイケア、デイナイトケア、社会復帰施設(通所授産、小規模作業所)を対象としたアンケート調査を実施する。本調査結果を分析・検討することにより、精神科病院のデイケア、デイナイトケアと診療所デイケア、デイナイトケアそれぞれの治療・リハビリテーション機能を明らかにする一方、コミュニティーケアに於ける両者の機能分担と連携のあり方を検討する。更に社会復帰施設の役割と比較検討を行った上で、精神科デイケア、デイ・ナイトケア のリハビリテーション療法における治療的意義を検討する調査研究も行う。平成13年1月26日を締め切りとしてアンケート調査を実施している。調査内容としては、施設に関する調査と個人に関する調査に分かれている。施設調査は、全国のデイケア施設全てを対象として調査用紙を発送した。また、同時に日本精神病院協会を所属病院で開設するデイケアのうち大規模デイケア、小規模デイケアをそれぞれ無作為抽出し個人調査を依頼している。個人調査は、デイケアに登録している利用者全員に関する調査である。本調査に関しては、回収後に直ちに集計にはいるが、詳細な結果が得られるのは来年度となる。
結果と考察
本研究は、次の2つの研究結果から成っており、来年度に継続して研究計画が作成されているため、本年度の報告は中間的な報告となる。「A班:急性期入院患者に対する精神科リハビリテーション療法の研究」この6ヶ月で総登録患者数は165例で、そのうち31例は中止となり、134例が研究対象として登録されている。そして3月31日現在では134例の登録のうち同意確認まで至った症例は105例であり、29例はまだ同意を得るまでに快復していない。同意確認が終了した105例のうち62例は既に退院しており、残りの42例がなお入院中である。また、105例のうち教育セミナーを受けた対象群は43例で、受けていないコントロール群は62例であった。重症度評価を行いフォローアップしていくことになっている。「B班:精神科デイケア、デイ・ナイトケアの治療的機能と機能分担に関する研究」調査は平成13年1月に実施し、施設調査と個人調査に分かれるが、施設調査では1,017通の有効発送数に対し790通の返送があり回収率は77.7%であった。また、個人調査を行ったデイケアは大規模デイケア、小規模デイケア、診療所デイケアそれぞれ75施設であったが回収率では大規模、小規模デイケアは6割を越える回収を行えたが診療所デイケアは45%に止まった。現在これらの調査票を入力し、解析を始めているところである。
結論
継続年度において報告する。

公開日・更新日

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